試験・調査報告


>> P.159

3.バレストレイン試験の手順弊社におけるバレストレイン試験(主にトランスバレストレイン試験)の手順をご紹介します[1]。<STEP.1>バレストレイン試験機(写真1(a))に試験板を固定し、試験板の上からTIG溶接でメルトランを行います。そして溶接の途中で試験板を曲げ治具に沿うように瞬時に変形させます(写真1(b))。これを変形量を変えて複数回繰返します。<STEP.2>曲げ変形によって発生した割れ(写真2(a),2(b))の長さを計測します。<STEP.3>光ファイバ温度計等を使用して、溶接金属の冷却速度を測定します。<STEP.4>各変形量における溶接金属の最大割れ長さ・溶接速度・溶接金属の冷却速度から、BTRを求めます。<STEP.5>バレストレイン試験で発生した割れは、破面を出したのち走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して高倍率で観察することで、割れの種類を判別することができます。SEMで撮影した破面写真のうち、写真3(a)は樹枝状の突起から凝固割れであることが、写真3(b)は一部溶融した粒界から液化割れであることがそれぞれ分かります。4.材料の化学成分からのBTR予測材料の観点から凝固割れを防止するためには、材料自体のBTRを縮小させることが求められます。そこで凝固モデルを使用して、材料の化学成分からBTRを予測する方法が提案されています[2]。この方法では熱力学計算ソフトを使用し、液相中に濃化する溶質の濃度と、その時の温度を逐次計算し、凝固の開始温度と完了温度の差をBTRの大きさ(BTR)として求めます。それを数千種類の異なる化学組成の融液で実施し、BTRを化学成分で回帰分析します。このとき、BTRは元素Mの濃度[M]と定数Ci(i=0,1,2,…N、Nは回帰分析を行う元素数)を用いて、BTR=C0+C1[C]+C2[Si]+C3[Mn]+C4[P]+C5[S]+…などのように表されます。C1,C2などの係数を比較することで、各元素がBTRに与える影響の方向性をある程度知ることができます。一例に、Ni基合金において表1に示すような化学成分の範囲で計算を行った結果として、BTR(℃)=38.7+358.7[C]+29.3[Si]-0.3[Mn]+212.7[P]+330.8[S]+2.6[Cr]+1.0[Mo]+14.5[Nb]+2.9[Fe](mass%)という式が報告されています[3]。係数の大きいC,Si,P,SがBTRに与える影響が大きいことなど、従来からの知見と一致します。5.力学シミュレーションに基づく高温割れ評価溶接施工条件の観点から凝固割れを防止するためには、図2に示すとおり、溶接金属の凝固時に溶接部にかかるひずみを低減することが求められます。近年では、BTRにおけるひずみを有限要素法(FiniteElementMethod,FEM)で力学的に予測し、これに基づいて溶接部における割れ発生のハザードマップを作成する研究がなされています[4]。6.まとめバレストレイン試験は、溶接高温割れを評価するための有用な手段の一つであり、これまでに様々な知見が蓄積されています。一方、近年ではシミュレーションによる溶接高温割れの研究も盛んに行われています。両者を上手く組み合わせることで(例えば、BTRを計算で予測して試験条件を絞り込む、溶接実構造物にかかるひずみを計算して試験条件を設定する、など)、より確かな高温割れ感受性評価が可能になると期待されます。<参考文献>[1]嶋田,溶接学会誌第78巻,第4号(2009),298-300.[2]篠崎ら,第157回溶接冶金研究委員会資料(1999).[3]鈴木ら,神戸製鋼技報第54巻,第2号(2004),43-46.[4]柴原ら,溶接学会誌第86巻,第1号(2017),48-51.神鋼溶接サービス㈱技術調査部技術室竹森章表1Ni基の化学成分の計算範囲[3]2018Spring200.10.0〜10〜5.00〜20.015.05.0〜20.001〜0.0100.001〜0.0100.11.5〜10.2.9〜0単位:%(質量分率)、計算数:約8000条件SiMnFePSCrMoNbC0.01.48〜0NiBal.(a)溶接金属の凝固割れ(b)HAZの液化割れ(写真2(a),2(b)で拡大して示した割れと同等の割れの破面)写真3高温割れ破面


<< | < | > | >>