>> P.162
試験・調査報告●解説コーナー溶接部のじん性評価方法撃し、振り上がったハンマーの位置エネルギーとの差から、試験片が破壊に際して吸収したエネルギー(吸収エネルギー)を算出します。一般的な鋼材は室温環境下で延性破壊することが知られています。切欠きを入れて高温〜低温域でシャルピー衝撃試験を行うと、高温側では延性破面が100%であるのに対し、温度が低下するにつれぜい性破面の割合が増加します。吸収エネルギー、ぜい性破面率もしくは延性破面率を試験温度に対してプロットすると、エネルギー遷移温度(延性破面率が100%となる温度における吸収エネルギーの1/2の値に相当する温度)、ぜい性破面率が50%となる破面遷移温度(延性破壊からぜい性破壊に移る目安の温度)が求められます。遷移温度は、ぜい性破壊の発生を未然に防止するためのじん性評価指標として用いられており、構造物の最低使用温度設計や経年劣化調査などに役立てられています。3.落重試験落重試験の概略を図2に示します。図2a)に示すように、試験片中央にき裂発生用の極めてもろい溶接ビードを置き、ビード直角方向に切欠きを入れます。溶接ビードは、クラックスタータビードと呼び、自然き裂を想定したものです。次に、図2b)のように溶接ビードを下側にして試験片を受け台に載せ、落錘を落下して試験片に衝撃を加えます。なお、衝撃を加えるための落重エネルギー(重りの質量落下距離)は、材料の耐力に応じて求めます。落錘を落下させると、ビードの切欠き底部にぜい性き裂が生じ、試験片の横方向に伝播します(図2c))。試験温度が高い場合、き裂は試験片の途中で停止しますが、試験温度が低くなるにつれき裂の一方あるいは両方が試験片の端部まで達します。き裂が試験片のいずれかの端部まで達した状態を破断、まったく達していない状態を非破断と判断します。試験は、2個の試験片を1組として5℃間隔で行います。2個の試験片が非破断であった温度より5℃低い温度をNDT温度と定義しています。すなわち、NDT(NilDuctilityTransition)温度とは、溶接ビードから発生したぜい性き裂が試験片の端部に達する最高温度を示します。シャルピー衝撃試験と落重試験それぞれから求まるじん性は異なりますので、例えば原子力発電で使用される容器のぜい性評価では、落重試験でNDT温度を求めた後、その温度よりも33℃高い温度で衝撃試験を行い、じん性に問題があるか否かを判断しています。4.CTOD試験今までご紹介したシャルピー衝撃試験や落重試験は、簡便にじん性を評価できる方法ですが、構造物そのものを直接評価できているとは言えません。一方、CTOD試験は、破壊力学での破壊指標の限界値を求める試験です。この試験では、き裂先端開口変位と呼ばれるCTOD(CrackTipOpeningDisplacement)値を求めます。CTOD値は、ぜい性破壊の起こりにくさを表す特性値の一つであり、十分鋭い切欠き(疲労破壊)を有する試験片に外力を加えていったときに、ぜい性破壊を起こすまでに切欠き先端がどれだけ開口したかを測定する試験です。このCTOD値がぜい性破壊の起こりにくさを表す指標となります。構造物にき裂が生じた場合の許容量を把握して、設計しておくことは極めて重要で特に船舶、溶接ビード切欠き母材試験片外力き裂溶接方向溶接ビード母材a)試験片形状b)落重試験c)試験後のき裂の伝播図2落重試験の概略図232018Autumn