知恵袋コーナー

先端流量計

炭酸ガスアーク溶接を中心としたガスシールドアーク溶接法ではシールドガスの流量管理が重要なポイントです。すなわち、マグ・ミグ溶接の実施工において発生する溶接欠陥のうち、ブローホールの発生は3割以上でその原因のうち半分近くがシールド不良であるとの統計が知られています。これに加え、シールド不良はブローホールの発生までに至らなくても溶接金属の窒素量が増加すると図1に示すようにじん性などの機械的性質を劣化させる原因にもなりますので、極めて重要な要因です。この原因には流量自身の過不足や乱流や外風などがありますが、最も基本的に抑えるべきはガス流量の確認・管理です。

図1.溶接金属中の窒素量とシャルピー衝撃値の一例(YGW18ソリッドワイヤ)
図1.溶接金属中の窒素量とシャルピー衝撃値の一例(YGW18ソリッドワイヤ)

しかしながら、ボンベまたは工場内配管の出口の2次圧調整器付き流量計で夫々を適正量に設定しても、配管経路でガス漏れがある場合にはトーチ先端部でのガス流量は減少するため、実際にガスを流すノズル先端でのガス流量を確認することが必要です。すなわち、元流量計では所定のガス流量が流れていても2次圧の変動・ガス供給経路での漏れの影響により、ノズル先端では必ずしも適正な値が維持されているかは分らないからです。ノズル先端での値が適正でないとこれがブローホールの原因となることがあります。

従って、ノズル先端での流量を測定できる先端流量計は現場で有用な武器となりえます。一般に流量計には高精度な高級機と簡便で安価な普及機があります。前者で多いのはガスの流れを温度変化として捉え質量流量をデジタルで表示します。後者は汎用のフロート式流量計でテーパ管内の浮子の位置を目盛で読み取ります。先端流量計はいずれもノズル先端にアダプターをはめて直接測定できるような構造になっています。

このようにノズル先端のガス流量を確認し、流量が適正でなければ配管系をチェック・修理したり元の2次圧の調整などを行うことで先端での適正なガス流量を確保することができます。これによりブローホールを未然に防いだり、優れたじん性を有する溶接金属を得ることに大きく寄与します。写真1に最近急速に普及しつつある簡易先端流量計の一例を示します。

写真1.簡易先端流量計の一例(使用状況と本体外観)
写真1.簡易先端流量計の一例(使用状況と本体外観)
コベルコ ロボットサービス(株) 岡田 雅志

参考文献:
(社)日本溶接協会編 マグ・ミグ溶接の欠陥と防止対策P20,21 産報出版(株)
溶接技術 第57巻第5号 P137 産報出版(株)

iPhone/iPad、Android用デジタルカタログ

<専用ビューアが必要です>
スマートフォン、タブレットの方は、専用ビューアをダウンロードしてから閲覧ください。

PAGE TOP