溶接110番・溶接レスキュー隊119番


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鋳鉄の補修溶接1.鋳鉄とは鋳鉄とは鉄(Fe)に約2%以上の炭素(C)のほかに、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、イオウ(S)などの成分を含むFe-C系合金です。鋳鉄は鋼に比べ融点が低く、湯流れ性が良いため鋳型によくなじむので鋳物に利用されています。また切削性が優れているため、古くから機械部品をはじめ各種の用途に使用されています。鋳鉄には多くの種類があり大別すると表1に分類されます。2.鋳鉄の溶接性について鋳鉄の溶接は補修溶接が多く、溶接は非常に難しいと言われています。その理由を説明します。1)鋳鉄を溶融状態から急冷すると白銑化し硬くて脆くなり割れが発生しやすくなる。2)鋳鉄は高温に加熱されるとCOやCO2ガスが多量に発生するため母材へのなじみが悪くなり、また溶接金属中にブローホールやピットが発生しやすい。3)鋳鉄は延性が少なく硬く脆いため溶接による残留応力が肉厚不同部や角に集中して、溶接部以外にも割れが発生しやすい。4)長時間加熱され黒鉛が粗大化した場合や、油の染込み、鋳物欠陥の巣や砂かみが存在する場合は溶接欠陥の発生や母材とのなじみが悪くなる。以上のように鋳鉄は鋼に比べ溶接性が劣りますが、適切な溶接施工法、溶接材料選定により、これらの欠点を使用上さしつかえない程度に補うことができます。3.溶接方法について鋳鉄の溶接方法には被覆アーク溶接やガス溶接などがありますが、一般的には被覆アーク溶接が多く行われています。被覆アーク溶接で行う場合、母材全体を500〜600℃の高温に加熱して溶接する熱間溶接法と予熱をまったくしないか、あるいは局部的に低温の予熱をして溶接する冷間溶接法があります。熱間溶接法は母材を高温に加熱して溶接するため溶接金属、融合部の白銑化が防止できますが、予熱作業に時間を要し溶接歪みが大きいという短所があります。一方、冷間溶接ねずみ鋳鉄種類普通鋳鉄高級鋳鉄JIS規格G5501JIS記号FC100FC250FC150FC300FC200FC350球状黒鉛鋳鉄G5502FCD400FCD600FCD450FCD700球状黒鉛鋳鉄オーステンパ球状黒鉛鋳鉄低温鋼中肉フェライト球状黒鉛鋳鉄黒心可鍛鋳鉄可鍛鋳鉄白心可鍛鋳鉄G5705FCD350FCD500FCD800FCAD900FCAD1200G5503FCAD1000FCAD1400G5504FCD300LTFCMB27-5FCMB35-0FCMW35-4FCMW40-5FCMP45-6FCMP62-2FCMB30-6FCMB-0SFCMW38-2FCMW45-7FCMP55-4FCMP70-2法は予熱温度が低く作業が容易であり、溶接歪みが少ないという長所がある反面、熱影響部の白銑化にともなう割れおよび機械加工性が劣化するという短所があります。熱間溶接法ではウイービングで連続溶接。一方、冷間溶接法では小電流でウイービングをせずにショートビードを置くことをお奨めします。特に後者は飛石法、対称法などを採用して熱応力の緩和を図ったり、ビードを置く毎にピーニングを行って、歪み、残留応力の軽減を図る事が重要となります。4.溶接棒の選び方熱間溶接法の場合、弊社に製品としてはありませんが、溶接棒は鋳鉄用被覆棒(JISZ3252DFCCI)を選びます。尚、軟鋼用溶接棒(低水素系)を用いることもあります。一方、冷間溶接法では白銑化傾向の少ない純ニッケル系(Ni)、またはニッケル系合金溶接材料を用います。冷間溶接用溶材である神鋼主力製品(表2)のCIA-1と2を紹介します。1)CIA-1(DFCNi系)溶接金属組成はニッケル(Ni)が主体です。母材から溶接金属への炭素(C)の拡散を最小限に抑え、融合部の白銑化傾向を最小にします。融合部や溶接金属の硬化が少ないため耐割れ性や機械加工性に優れています。2)CIA-2(DFCNiFe系)溶接金属組成は55%ニッケル(Ni)-45%鉄(Fe)合金です。純ニッケル系に比べ線膨張係数が小さい(収縮量が少ない)。このため溶接熱収縮応力の発生が少なく、溶接金属の耐割れ性が良好です。さらに純ニッケル系に比べ強度が高いので球状黒鉛鋳鉄の溶接に適しています。5.溶接施工上の注意点鋳鉄の溶接は前述したように溶接性が悪いので、これを補うために特別な溶接施工法が必要です。以下に溶接施工上のポイントを説明します。1)開先形状溶接補修に際して、母材の開先加工は一般鋼材の場合より広く(60〜90°)し底部はなじみを良くするため丸み(R加工)を付けます。加工の際は熱を伴うアークエアーガウジングは避け機械加工やグラインダーなどで加工します。2)ストップホール割れた部分の補修では、開先加工前に割れの両端にストップホールという、割れ止めの穴をあけておくと効果的(割れの伝播を防止)です。3)油除去機械部品などの補修の場合は欠陥部に油などが染込んでいる場合があるのでバーナーなどにより400℃程度で加熱除去します。3)ビードの長さおよび運棒法過熱防止、歪みの軽減、割れ防止のために1回のビード長は50mm以内に止め、できるだけストレートビードで溶接を行います。4)ピーニングピーニング(図1参照)とは、溶接直後にビード表面をハンマリングすることで、溶接時に発生する収縮応力を緩和もしくは除去できるので、割れ防止に極めて有効な方法です。この動作を繰返すことが重要です。以上、鋳鉄の溶接について説明しましたが実際の溶接においては被溶接物の形状、大きさ、使用状況等を十分考慮し溶接材料の選定を行い施工することが大切です。(㈱神戸製鋼所溶接カンパニーカスタマーサポートセンター)政博及川6先が丸くなったハンマー溶接直後でピーニングする直前のビードピーニングされたビードm下05m以m下05m以熱影響部の機械加工性溶着金属の機械加工性◎◎△○◎○△△X線性能○○○○表1鋳鉄の種類継手効率◎◎○◎母材との色調母材とのなじみ○◎◎◎△△◎◎パーライト可鍛鋳鉄予熱温度℃100〜300150〜350350〜400100〜250銘柄CIA-CIA-CIA-CIA-(注)◎:良好○:やや良好△:劣る表2溶接棒の種類と主な特性図1ピーニングの要領


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