溶接110番・溶接レスキュー隊119番


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●解説コーナー『耐塩酸・硫酸露点腐食鋼と適用溶接材料』につ1.はじめに近年、気候変動という地球的な問題につながる地球温暖化対策などに向けた取り組みは、企業や家庭など私たちの身近な所だけでなく、国連を中心とした国際会議の場でも取り上げられ、世界の国々が協力した取り組みを行えるよう議論がなされています。中でも発電所やごみ焼却炉など各種プラントから立ち昇る煙の中の成分により、地球温暖化やダイオキシン類の発生、酸性雨などの問題を引き起こす原因の一つとなっています。しかし、最近目にする煙突からは、煙が出ているかわからないくらいの煙となっています。このように、以前と比較して排煙量が少なくなるような設備改善が図られ、環境対策が施された設備を有する火力発電所やごみ焼却炉など各種プラントが増えてきているようです。今回は、このような設備の煙突や煙道・ダクトなどに使用されている耐塩酸・硫酸露点腐食鋼についてと、2019年8月より発売を開始した半自動用フラックス入りワイヤ『DW-50AC』をご紹介します。2.耐食性鋼について耐食性鋼は、SS材(一般構造用圧延鋼材)やSM材(溶接構造用圧延鋼材)などの炭素鋼に銅(Cu)・クロム(Cr)・ニッケル(Ni)などの合金元素を少量添加させた鋼材です。代表的な鋼種は、JISG3114:2016に分類されている、溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材」種類の記号の一例として、SMA490BW)が橋梁業界で使用されています。SS材やSM材は、大気中に暴露すると時間経過とともに鋼材表面に赤さびが生成し、腐食が進行していきます。一方、耐候性鋼は鋼材表面に「保護性さび」と呼ばれている緻密なさび層が形成されます。この「保護性さび」は水や酸素などが透過し難いため、ある程度腐食が進行した後はそれ以上腐食が進行しないという特徴があります。この鋼種以外にも、より環境に厳しい所に適した、ニッケル系高耐候性鋼や海水に適した耐海水性鋼などがあります。耐塩酸・硫酸露点腐食鋼は、耐塩酸・硫酸腐食に適応した鋼種です。耐塩酸・硫酸腐食は、一般的な腐食と異なり、普通鋼だけではなく腐食に強いとされているステンレス鋼も激しく腐食されます。この鋼種は、炭素鋼にCu・Ni・Cr・Sb(アンチモン)など少量の合金元素を添加して耐食性を向上させています。これらの鋼種は、専用のJISがありませんので、各種鋼材メーカの鋼材名で呼ばれています。3.硫酸露点腐食について火力発電や各種プラントなどを稼働するために使用するボイラは、重油や石炭、液化天然ガス(LNG)などを燃焼させて稼働します。その燃料に含まれる成分が燃えて、SOx(硫黄酸化物質)やNOx(窒化酸化物質)、ばいじん(燃えカス)などを発生させます。SOxは、重油や石炭に含まれる硫黄成分が燃焼して発生します。そのガスは亜硫酸ガスと呼ばれ、火山や温泉で発生するガスと同様で、刺激臭が強いのが特徴として挙げられます。この亜硫酸ガスは水蒸気と親和性が高く、反応すると硫酸蒸気を生成します。硫酸蒸気は煙道を通過中に壁面に接触して冷却され、結露することで硫酸に変化します。この硫酸は、壁面温度が高いほど濃度が高く、高温高濃度の硫酸水溶液により起こる腐食を硫酸露点腐食といいます。図1の火力発電所の概要にてご説明します。火力発電は、水を蒸発させてその蒸気を利用してタービンを回転させて発電を行います。水蒸気は冷やされてまた水に戻る仕組みです。この蒸発に必要な火力に石炭や重油・LNGなどが使用されています。燃焼後の煙は、脱硝装置にてNOxを除去⇒集じん装置にてすずや灰を除去⇒脱硫装置にてSOxを除去して、煙はきれいに処理されて煙突へと向かいます。このような処理工程を通過させても硫酸腐食は防止することができません。この硫酸腐食は、硫酸蒸気が冷却され硫酸が生成されやすい煙突周辺で発生する事象で、耐硫酸露点腐食鋼が適用されています。脱硫装置集じん器脱硝装置燃料蒸気タービン発電機水海水蒸気の流れ水の流れ煙の流れ海水の流れ図1火力発電所の概要192020Winter


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