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●解説コーナーティグ溶接における施工上の注意事項【前編】1.はじめに近年、世界的なカーボンニュートラルに向けた脱炭素化の流れに伴い、天然ガスの需要が急激に高まっています。造船や火力発電などにも液化天然ガス(LNG)やアンモニアなどが燃料として採用され、LNGなどを貯蔵するタンクや配管など付随設備の溶接が増加傾向にあります。採用される素材はステンレス鋼や9%Ni鋼が大半を占め、施工時には配管をメインとしてティグ溶接が採用されており、ティグ溶接が再注目されています。そこで今回は秋号(基礎編)〜冬号(実践編)の2回に亘り、ティグ溶接における施工上の注意事項についてご説明したいと思います。2.ティグ溶接の特徴と用途ティグ溶接はタングステン電極と母材との間にアークを発生させ、溶けた溶融池に溶加棒を挿入して溶接する、非溶極式の溶接方法に分類されています。【表1】ティグ溶接の特徴と用途(炭酸ガスアーク溶接との比較)で、溶極式である半自動溶接と比較しておりますが、その特徴は大きく異なります。その他ティグ溶接の長所として、①極低電流・全姿勢での施工も可能。②得られる溶接金属は、機械的性質が極めて高品質などが挙げられ、短所としては、①溶接速度が遅く作業能率が低い。②風の影響を受けやすい。③両手を使用するなどにより、他の溶接法より技量習得が難しい、などが挙げられます。このような長所・短所をよく理解し、適材適所で採用を検討する必要があります。現在ティグ溶接が多く適用されている業種は、エネルギー関連(化工機・プラント・配管)で、適用鋼種は高合金鋼(SUSなど)および非鉄金属(アルミ、チタン)などになります。このように、ティグ溶接は用途に見合った施工管理を実施しないと溶接欠陥が発生しやすく、当部署でも多くの技術相談をいただいております。幾つかの事例を紹介しながら施工上の注意事項について、正誤比較の動画なども交え解説します。3.施工上の注意事項3-1.タングステン電極の形状についてティグ溶接はTungstenInertGas溶接を意味しており、電極にタングステンを、シールドガスに不活性ガス(主にアルゴンやヘリウム)を用いた非溶極式のアーク溶接です(【図1】トーチ・電源回りの模式図)。通常、タングステン電極は直流正極性で使用され、先端を鋭利に加工してアークの集中性を高めることで、アーク安定性・溶込み深さ・ビード形状などが向上します。【動画1】は「タングステン電極の形状の違いによるアークの変化の比較」をしており、先端が平らな形状や丸まった形状の場合はアークがふらつき不安定で、溶接したビードも幅が不揃いになっているのが確認できます。また、溶加棒をアークに当てて溶融させると、電極に溶着金属が付着して先端が丸まりやすくなります。施工中に先端が丸くなった場合は無理に溶接を続行せず、一旦アークを切り電極を鋭利に再研磨することをお勧めします。表1ティグ溶接の特徴と用途(炭酸ガスアーク溶接との比較)項目溶着量ガスコストスパッタ・スラグ発生量溶着金属の機械的性質高合金鋼・非鉄金属への適用厚板への適用(19㎜以上)薄板への適用(3㎜以下)ビード外観(止端部の滑らかさ)自動化(ロボットなどへの適用)ティグ溶接炭酸ガスアーク溶接△△◎◎◎△◎◎△◎◎△△△◎〇〇◎【優れる】◎>〇>△>×【劣る】2023Autumn18