技術がいど2012-201501


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技術がいどVol.522012年1月号<3.クリープ破断寿命予測>-2-鋼材の分野では、クリープ寿命予測手法として、時間-温度パラメータ(TimeTemperatureParameter)と応力で整理し破断寿命を予測するTTP法が一般的です。このTTP法の一つであるLarson-Miller法1)は、式(1)のように温度と時間を一つのパラメータで表します。LMP=(T+273.15)×(20+logtr)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)ここで、LMPはLarson-Millerパラメータ、Tは試験温度(℃)、trは破断時間(h)です。図3のように2.25Cr-1Mo-V鋼の一例2-3)では、Larson-Millerパラメータと応力の関係で整理することで、温度と応力の条件から破断時間を予測することができます。しかしながら、誤差が大きいことや長時間の外挿ができない等、その使用に制限が多く、新たな寿命予測の手法が求められています。近年は、丸山らによる領域区分法4)や、木村らによる領域分割法5)等が提案され、より高精度な予測が行われています。TTP法以外の寿命予測方法として、クリープ曲線の変形挙動をパラメータ化することで、クリープ破断寿命を予測することができます。代表的な方法として、Monkman-Grant則6)、修整θ法7)およびΩ法8)があります。まず、Monkman-Grant則とは、図4のように最小クリープ速度から破断寿命を予測する経験則で、多くの材料でこの関係性が成り立つことが確認されています。式(2)に関係式を示します。logtr=f0–f1logここで、trは破断時間(h)、ε・mε・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)mは最小クリープ速度(h-1)、f0およびf1は定数です。最小クリープ速度は、破断時間の約15~30%経過で確認されるため、Monkman-Grant則を用いることで早期の予測が可能です。ただし、クリープ曲線が図2のような逆S字曲線の形状を示さない場合や、加速クリープ域における変形速度の増大(後述するΩ法におけるΩ)が大きい場合は、予測から大きく外れることもあり、現在は改良法がいくつか提案されています。次に、修整θ法は東北大の丸山らが提案する手法7)で、図5のようにひずみ-時間線図を減速項および加速項に分け、式(3)の指数関数で数式化するθ法を簡略化した手法です。ε=ε0+A(1-exp(-αt))+B(exp(αt)-1)ここで、εはひずみ、ε0は初期ひずみ、AおよびBは定数、αは速度定数(h-1)です。修整θ法はこのようにク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)リープ曲線のほぼ全体をパラメータ化することが可能であり、4つのパラメータから式(4)および式(5)を用いて、寿命予測を行うことができます。P=(1/α)ln((εr-ε0-A)/B)tr=CPq・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ここで、P(h)は破断パラメータ、Cは定数で1よりやや小さい値、qも定数でほぼ1を示します。また、εrは破断ひずみであり、推定値を代入する必要があります。修整θ法は、定数が多く解析がやや複雑ですが、遷移クリープから加速クリープをパラメータ化しているため、予測精度が高いことが特徴です。最後に、Ω法とは、図6のようにひずみ速度-ひずみ線図の加速クリープにおいて、ひずみに対するひずみ(4)(5)(6)(7)tr=1/(Ωε・ここで、ε・0)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はひずみ速度(h-1)、Ωは加速クリープにおけるひずみ速度の増大、ε・0は初期ひずみ速度(h-1)、trは破断時間(h)です。Ω法は、式(6)(7)のように単純な式であるため解析が容易です。図7に、Monkman-Grant則、修整θ法およびΩ法による破断時間の予測値と実測値の比較を示します。修整θ法は、ほぼ全時間において高精度で予測することができていますが、Monkman-Grant則は短時間側で、Ω法は長時間側で、やや実測値と予測値に差があることが分かります。これは、Monkman-Grant則では加速クリープを、Ω法では遷移クリープを、それぞれパラメータ化していないためです。速度の増大量が一定となることを利用した予測法です。lnε・=lnε・0+Ωε・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


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