技術がいど2012-201501


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溶接用ワイヤのめっき処理溶接用ワイヤは大別して銅めっきワイヤとめっきな代表的なめっき前処理には、次のようなプロセスがしワイヤの2種類があります。旧来より溶接用ソリッドワあります。イヤのほとんどに銅めっき処理が施されていますが、①脱脂洗浄処理その理由は次の通りです。伸線潤滑剤等の有機物層を除去する目的で行わ①銅製のコンタクトチップからの給電部の電気抵抗れ、溶剤脱脂、浸漬脱脂、電解脱脂等があります。上昇を抑制し、安定な給電を維持するため。(図1)有機物の除去が不十分であると、素地とめっき被膜②ワイヤ素地である鉄の露出を防ぎ、発錆を抑制すの金属間結合の妨げとなり、優れためっき密着性がるため。得られません。なお、②に関しては、めっきなしワイヤでも適正な表②酸洗処理面処理をすることで発錆を抑制することが可能であり、金属表面に形成する酸化膜層を除去して金属表①に記述したとおり溶接時の給電維持が最重要な役面を活性化することを目的とします。長時間酸処理液割であると言えます。また、ワイヤ表面に銅めっきがに浸漬するピックリング処理、不動態膜を除去する施されることで、ダイス伸線による伸線加工性が向上ディッピング処理、金属材料表面の加工変質層を除することは広く知られています。去するエッチング処理等があります。酸化膜層が残溶接用ワイヤに適用されている代表的な銅めっき留するとめっきの密着性が阻害され、容易にめっきが方法は、以下の①~③です。はく離する原因となります。①シアン化銅めっき高い電流密度でめっきができ、めっき被膜が緻密めっき剥がれが少なく給電が安定する溶接用ワイで均一電着性に優れます。しかし、シアン化銅めっきヤを生産するためには、前処理およびめっき処理をは使用する薬品の取扱や廃却のコストが高く、また、適切に行う必要があります。めっき後の洗浄に使用した排水処理にもコストが掛かること等の課題があるため、その使用は減少しています。②ピロリン酸銅めっき均一電着性が良く、素材への侵食が少ないことを特徴とします。めっき被膜が硬いため、めっき後の加工性が劣ります。硫酸銅めっきの良好な光沢剤の開発にともない、使用が減少しています。③硫酸銅めっき最も古い銅めっき方法であり、安価で浴管理が比較的容易です。また、めっきの内部応力が小さく軟らかいため、延性に富んでいる等物理的性質に優れます。優れた添加剤の開発により均一電着性が改善され、今日では非常に多方面で利用されています。コンタクトチップコンタクトチップCuFeCuCuFeCuCu-Cuで給電CuCu-Feで給電(a)銅めっきワイヤ(b)めっきなしワイヤ図1コンタクトチップ-ワイヤの給電模式図((株)神戸製鋼所溶接事業部門技術センター溶接開発部中西浩二郎)2012年11月また、良好な銅めっき被膜を得るためには、前処理が重要であることも知られており、めっき前の表面を清浄化しなければなりません。493


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