技術がいど2012-201501


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技術がいどVol.532013年5月号試験・調査報告-1-成分分析を行う場合、測定対象成分とその濃度域を考慮し、最適な分析手法の選択が大変重要です。ppb~ppmオーダの極微量成分分析を行う場合は、高周波誘導結合プラズマ質量分析(InductivelyCoupledPlasma/MassSpectrometry:ICP/MS)が最適な分析の一つです。適用分野としては、排水、河川水、廃棄物等を対象としている環境分野での微量成分分析や鉄鋼、セラミックス、岩石等の材料中の微量成分分析等があり、その適用範囲は多岐に渡っています。ICP/MSによる微量成分分析1.はじめに><<2.ICP/MSの原理と装置概要>・装置概要ICP/MS装置の概略図を、図1に示します。ICP/MSは、試料を溶液化し、その溶液中にどの元素がどのくらい含まれているかを測定することができます。ICP/MSは、ネブライザー~スプレーチャンバーまでの試料導入部、トーチ~プラズマまでの励起部、サンプリングコーン~検出器までの検出部からなる装置で、励起部にアルゴンプラズマを、検出部に四重極を使用することにより、高感度分析を実現しています。成分分析で従来から使用されている原子吸光分析や高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(InductivelyCoupledPlasma/AtomicEmissionSpectrometry:ICP/AES)と比較すると、103~106倍程度の高感度分析が可能です。(A)試料導入部(B)励起部(C)検出部②ペリスタリックポンプ⑨イオンレンズ⑩四重極③ネブライザー⑤トーチ⑥プラズマ④スプレーチャンバー⑧スキマーコーン⑦サンプリングコーン図1装置概略図⑫コリジョンリ・アクションセル⑫コリジョン・リアクションセル⑪検出器①試料・原理最初に、ICP/MSが普及する前に成分分析で一般的に使用されていたICP/AESについて説明いたします。試料溶液をアルゴンプラズマに導入すると、試料中の原子はアルゴンプラズマによって励起され、脱溶媒を経て、原子化、イオン化します。励起状態の原子やイオンは不安定で、この原子は、再度、基底状態に戻ります。アルゴンプラズマ内では、この現象が繰り返されます。励起状態の原子が基底状態に戻る際に、励起状態と基底状態でのエネルギーの差分だけ、光としてエネルギーを放出します。この光の波長は、元素ごとに固有で、試料中の濃度に比例します。この原理を利用したのが、ICP/AESです。それに対し、ICP/MSは、アルゴンプラズマ内でイオン化された原子を質量数と電荷比(m/z)に応じて分離し、検出器に導入します。その結果、ICP/AESに比べてバックグラウンドが下がり、高感度分析が可能となります。ICP/MSで分析する場合、適切な前処理によって試料を溶液化し、バイアルに移し、①オートサンプラーにセ


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