技術がいど2012-201501


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つり込み用のペンチや、金槌。靴業界では、味わい深いステッチが何ともいえない、手縫いの風合い。金槌のことを「ポンポン」と呼ぶのだとか。これも手づくり靴の醍醐味だ。日本の履き物文化×靴=「革下駄」そうだ。吉靴房の初期から続く看板商品としては、今も人野島さんの「革下駄」に歯はないが、代わりに中底気の高い「革下駄」が挙げられる。その誕生から商と片側の鼻緒は一枚の革から成り立った一体型。日品化過程での逸話を、ここで紹介しよう。本の伝統的な履き物・下駄に対する、ちょっと洒落の利いたオマージュだ。「靴は、ヨーロッパで生まれ発展して、日本に輸入されてきたものですよね。でも、実は日本にだって、革下駄の新作発表は、東京・代官山の展示会だっ元々、下駄や草履、わらじという履き物文化が存在した。ところが、展示会では、比較的ベーシックな形状ていた。僕は、もともと歴史が好きなんです。それでの靴が次々売れていく中、革下駄だけが全く動かな靴に関しても、いろんな文献を読んだり調べたりしてい。売れるどころか、試着してくれたお客さんすら、わいるうちに、日本の履き物の歴史の流れを汲んだずか3人ほど。散々な結果だった。“靴”を作りたいと考えるようになりました。そのうちの「僕としては、会心の出来だったんです。これは必ひとつが、革下駄です」ず売れると思っていたし。だから、あまりの現実に、落胆するよりもまずビックリしましたねえ」と、野島さ下駄には、足を乗せる板の部分と、地面に接するんは苦笑する。歯の部分とがある。下駄の最高級品になると、板と歯を別々に切り出して貼り合わせるのではなく、一体ところが不思議なことに、野島さんが革下駄を京型の部品として一枚の板から削りだして製作される都の工房に持ち帰ると、あんなにも売れなかった革写真左から完成品の革下駄、鼻緒、中底と鼻緒の一枚の革で、中底と片側の鼻緒を表現。一体パーツ、ヒール部分を貼り付けられた底面。これを反対側の鼻緒と一緒に挿げれば、下駄ができあがる。


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