技術がいど2012-201501


>> P.211

宮田実(株)神戸製鋼所溶接事業部門技術センター溶接開発部1.まえがき全姿勢溶接性に優れる被覆アーク溶接棒近年、首都高速道路をはじめとする多くの鋼橋で経年LB-3ADの2銘柄を製品化したので、本稿にお疲労による亀裂が大きな問題となっている。溶接部は、いて紹介する。溶接止端部の①応力集中、②残留応力により構造的に耐疲労性を劣化させる箇所であり、溶接部の耐疲労性1.LTT溶接材料による耐疲労性向上メカニズム向上技術への期待は大きい。現在、溶接部の耐疲労性LTT溶接材料とは冷却過程における溶接金属の相変を向上させるために、応力集中緩和を目的としたグライ態膨張を利用し、溶接後に生じる引張残留応力を緩和すンダによる止端形状仕上げや、圧縮残留応力の付与をる技術である。図1に示すように、一般的な溶接材料を目的としたピーニング処理1)といった手法が採用されて用いた場合、700℃以上の高温域において相変態するいる。しかし、これらの方法は、施工能率低下や特殊装ため、変態完了後の溶接金属の熱収縮が母材に拘束さ置の準備が必要となり、大きな負荷となっている。れ、引張残留応力が生じてしまう。それに対し、LTT溶接溶接材料による耐疲労性向上手法としては、低変態材料は変態開始温度を500℃以下にまで低下させること温度(LTT)溶接材料と呼ばれる特殊な溶接材料を使用すで、より室温近くまで溶接金属の変態膨張が持続し、溶る方法が研究開発されている2-4)。これまでに研究開発さ接後の残留応力を弱い引張もしくは圧縮とすることがでれてきた、LTT溶接材料は①溶接材料の価格、②機械きる。鉄鋼材料の変態開始温度(Ms点)に関する研究は的性能、③耐欠陥性(遅れ割れ、高温割れ)の面で一般これまでに多くの報告があるが、その一例を式(1)5)に示的な溶接材料に大きく劣るため、本格的な実用化には至す。っていない。変態開始温度(℃)=529-382×(%C)-31×(%Mn)-18×そこで、当社ではこれらの課題を解決しつつ耐疲労性(%Ni)-9×(%Mo)-5×(%V)-33×(%C)×(%Cr)・・・(1)向上に有効なLTT溶接材料を開発すべく、従来のLTT溶接材料とは異なる、新たな成分系の提案を行った。また、得変態開始温度の低下にはC,Mn,Ni,Crといった元素られた知見をもとに、橋梁業界での使用量が多いすみ肉の添加が効果的であることがわかる。これまでに研究溶接用フラックス入りワイヤ(FCW)MX-4AD、開発されてきたLTT溶接材料は主要元素としてNiを10%図1溶接金属の低温変態による圧縮残留応力化機構-1-技術レポート[vol.552015-1]耐疲労性改善溶接ワイヤ‘MX-4AD’&‘LB-3AD’について


<< | < | > | >>