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本装置は、熱電子による中和銃を装備しており、絶縁物の測定にさらに適した仕様となっています。-2-<4.ESCAの測定原理>ESCAの情報源は、光電子です。その他、オージェ電子も検出されます。光電子発生の模式図を、図1に示します。試料表面にX線を照射すると、試料を構成する原子から、光電子が励起・放出されます。X線は透過性が高いため、試料内部にまで到達します。光電子はX線の透過領域から発生しますが、他原子の存在によって極めて減衰しやすいため、試料内部で発生した光電子は試料中で減衰し、消失します。光電子の減衰には、残留ガス分子によるチャンバー内の真空度の低下も影響を与えます。測定チャンバー内は、検出感度を維持するために、10-6Pa以上の超高真空を維持しています。上述の理由から、試料外部へ脱出する光電子、すなわち検出器で検出される光電子は、試料の極表面領域(数nm)で発生するものに限られます。したがって、試料の最表面の情報を得ることができるのです。一般的に、光電子は、後述する理由から結合エネルギー(Eb)で区別します。ESCAでは、実際に測定しているのは光電子の運動エネルギー(Ekin)であり、当社の装置では、静電半球型の分光器で測定しています。ここで、照射X線のエネルギー(hν)と、励起される光電子の結合エネルギー(Eb)および運動エネルギー(Ekin)との間には、(1)式の関係が成立します。Eb=hν-Ekin(1)Eb;光電子の結合エネルギー(Eb)hν;X線の照射エネルギー(AlKα,MgKα等)En;光電子の運動エネルギー(Ekin)ki(1)式で、X線の照射エネルギー(hν)は、励起源の種類(アノードの種類)によって異なる、固有の値です。結合エネルギー(Eb)は、元素の種類や励起される電子軌道によって固有の値を持ち、照射エネルギー(hν)の種類に影響されることはありません。なお、光電子は、元素記号と電子の殻番号と軌道番号の組み合わせで表記しています(O1s,Fe2p3等)。また、光電子と同様に検出することができるオージェ電子は、オージェ電子放出に関係する電子の殻記号で表記しています(OKLL,FeLMM等)。図1光電子発生模式図<5.ESCAの分析>ESCAでは、定性分析や半定量分析、状態分析を行うことができます。線分析や面分析は、これらの分析を線方向や面方向に行い、各測定点のデータを合成します。Ar+スパッタを組み合わせることで、深さ方向分析を行うこともできます。以下、純銀製の板材表面に発生した変色(褐変)部の、変色原因調査例を示しながら、各分析法について説明します。