>> P.62
-1-破壊じん性試験は、破壊力学の概念に基づいた試験で、破壊じん性値を求めるために行われる試験です。まず、破壊力学と破壊じん性値について説明し、つづいて破壊じん性試験の一つである落重試験について述破壊じん性試験(落重試験)試験・調査報告1.はじめに><べます。<2.破壊力学、破壊じん性値>船舶、海洋構造部、タンク、橋梁などの大型溶接物が、ほとんど前触れなしに脆性破壊を起こして大惨事になった事例をご存じでしょうか。脆性破壊は、潜在き裂、例えば製造過程あるいは使用中に発生、成長したき裂が、降伏点より低い応力でも一気に成長する現象です。構造物は材料力学の応力解析に基づいて設計されます。しかし、材料力学の力学的パラメーターは、き裂先端付近のひずみや応力状態に対しては適用できません。その点を補うのが、き裂の存在を前提にして材料の脆性破壊に対する抵抗を表す尺度、すなわち破壊じん性を理論的にとり扱う破壊力学です。破壊力学は、大型溶接構造物の脆性破壊事故を契機に発展しました。破壊力学の最も基本的なパラメーターとして応力拡大係数Kがあります。それに対する材料の破壊じん性はKcで表され、K≦Kcであれば脆性破壊は発生しません。材料力学に例えると、Kが応力、Kcは降伏点や引張強さになります。破壊じん性を具体的に表す数値が破壊じん性値であり、これを求めるために破壊じん性試験が必要になります。<3.破壊じん性試験>破壊じん性試験は、脆性破壊のき裂発生特性を評価する試験と、き裂の伝播停止特性を評価する試験に大別できます。一般的に、溶接部にはき裂発生特性が、母材にはき裂伝播停止特性が求められます。今回ご紹介する落重試験は、き裂伝播停止特性を評価する試験です。表1に破壊じん性試験の一例を示します。表1破壊じん性試験の一例き裂発生特性を評価する試験き裂伝播停止特性を評価する試験大型試験溶接ビード付広幅引張試験二重引張試験小型試験CTOD試験落重試験<4.落重試験>落重試験は、1953年に米国海軍研究所(NRL)で開発された試験方法で、NDT(NilDuctilityTransition;無延性遷移)温度を求める試験です。NDT温度は、脆性破壊が起こるか起こらないかの限界温度です。従って、NDT温度を求めることによって、材料のじん性がなくなる遷移温度が分かり、低温側の使用可能温度を求めることができます。実際には容器、特に原子炉圧力容器の脆性破壊を防止する規格(ASMESectionⅢAppendixG)の中で使用されており、試験方法は、ASTME208に規定されています。