試験・調査報告


>> P.176

1.はじめに鋼構造物の溶接部にとって割れ欠陥は、接合面積を減らし、割れ端部での応力集中により急速なぜい性破壊や疲労破壊を促進してしまいます。そのため割れは、溶接欠陥の中でももっとも注意が必要です。本稿では、溶接部の割れ欠陥のうち、低温割れおよびその評価方法について紹介します。2.低温割れとその感受性低温割れは、溶接後に発生する割れで、溶接完了後から発生までに一定の時間(数分〜数日)を要することが多いため、遅れ割れとも言われています。溶接時に導入された水素が溶接完了後も鋼中を拡散し、応力集中部などに集積することが低温割れの発生原因とされています。水素が室温付近の低温でも拡散できることにより、割れ発生までの潜伏期間が生じます。低温割れ発生の感受性には、大きくわけて3つの要素が影響しており、以降に、それぞれについて概説していきます。①溶接部の硬化組織溶接部(熱影響部および溶接金属)の強度が高いほど、低温割れ感受性は高くなります。溶接部は熱履歴に依存した不均一組織となっているため、局所的に強度が変化しており、溶接部中各点の硬さ試験値(ビッカース硬さ試験など)で評価するのが一般的です。上記は溶接部の硬さを直接評価する方法ですが、鋼材・溶接金属の硬さは、化学成分と800℃〜500℃間の冷却時間(=Δt8/5)から推定でき、母材熱影響部に関しては、低温割れ感受性指標として、「炭素当量」が使用できます。炭素当量は、Cの係数を1とする各合金元素の1次式で表されるもので、炭素当量が高いほど低温割れ感受性が高くなります。低温割れ感受性としての炭素当量は表1に示すように多数の式が提案されています。表1炭素当量式とC量による適用範囲1)②拡散性水素低温割れは、室温付近の低温で鋼中を拡散する水素の量(拡散性水素量)が多いほど起こりやすくなります。溶接時に導入された水素は、冷却過程で一部は外気に放出されますが、このとき低温まで溶接部に残留した水素が低温割れを引き起こします。溶接部に残留する拡散性水素量の測定は、グリセリン法、ガスクロマトグラフ法などの測定方法が存在し規格化(例えば、JISZ3118やAWSA4.3など)されています。③引張応力(拘束度)溶接部に働く引張応力が大きいほど低温割れ感受性は高くなります。溶接部に働く引張応力は、主に、溶接金属が凝固して低温になるまでの収縮に対する周囲の拘束に起因しています(自拘束)。このような溶接部の残留応力は、測定やシミュレーションすることも可能ですが、単純なパラメータである板厚を拘束度として用いることが一般的です。3.低温割れの2つのモード(縦割れ、横割れ)低温割れには大きく2つのモードがあり、それぞれの発生原因は2節で示した3つの要因から説明されます。①縦割れ母材の熱影響部の中で、ボンドライン近傍はもっとも冷却速度が速いため、(焼入れ-焼戻し鋼の場合)硬化しやすく、また、ルート部やビード止端部といった、形状的に応力集中部となるケースがしばしば見受けられます。このような箇所では、低温割れが発生しやすく、溶接線と平行な方向に割れが発生します(縦割れ)。熱影響部の硬化組織に起因した割れなので母材の割れ感受性に依存しやすいです。式量当素炭囲範用適格規C0.08%AWSD1.1硬さ制御法EN1011-2-2001(A)WES3001-1970CuNiCr15VMo54V1Mo4Mn6Ni40Cr5Mn6Si24CEIIWCCEWESC0.08%C0.12%EN1011-2-2001(B)WES3001-1980AWSD1.1水素制御法C0.12%5B0V1Mo15CETPCMCCMn10Si30Cu20Mn20Ni40Cu20Cr20Ni60Mo10Cr20試験・調査報告●解説コーナー鋼溶接部の低温割れとその評価について172021Summer


<< | < | > | >>