試験・調査報告


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②横割れ多パス溶接の場合、層数が増すにつれ溶接線方向の残留引張応力が高くなり、また、各パスで導入される拡散性水素は溶接部外への放出が十分でないと蓄積されていきます。このような多パス溶接で、溶接金属の強度が高いと、残留応力が最大になる最終パス付近で、溶接線に垂直な方向に割れが発生します(横割れ)。横割れの発生起点が溶接金属であるか熱影響部であるかの判断はむずかしいですが、溶接金属の硬化組織に起因した割れと推定されることが多く、溶接金属の割れ感受性に依存しやすいです。4.低温割れに関連する施工条件2節に低温割れの3大要因を概説しましたが、これらに関連する施工条件のうち代表的なものを記載します。①構造設計(部材寸法、板厚)部材寸法や板厚によって溶接部の拘束状態が決まります。拘束状態を定量的に評価することはむずかしいですが、後述する低温割れ試験では、板厚の大小が拘束度の大小に対応します。②材料(母材、溶接材料)母材と溶接材料の化学成分は、2節①に示した通り硬さに大きな影響を及ぼします。例えばTMCP鋼は、合金元素が少ないことに起因して熱影響部の硬化が起こりづらく、同じ強度クラスの焼入れ-焼戻し鋼に比べて低温割れ感受性が非常に低くなります。溶接材料に関しては、溶接時に導入される拡散性水素量にも違いが出ます。手棒溶接やサブマージアーク溶接では被覆剤やフラックスの吸湿が主な水素源となり、ソリッドワイヤによるガスメタルアーク溶接ではワイヤ潤滑剤などの油分が主な水素源となります。③溶接条件(入熱、予熱・パス間温度)溶接入熱は溶接金属および熱影響部のΔt8/5に直接的に影響するため、硬さに大きな影響を及ぼします。また、母材の予熱・パス間温度上昇はΔt8/5を長くして溶接部の硬化を防ぎ、拡散性水素の外気への放出を促進するため、低温割れ抑制に非常に有効となります。5.代表的な低温割れ評価試験低温割れの評価試験は、4節に示した施工条件に対して、各試験で決められた特定形状の試験体に溶接を行うことで、割れが発生するかを評価するものになります。次に紹介するいずれの試験も、溶接時の自拘束が厳しくなるような試験体形状にすることで、同一施工条件での実施工と比較して低温割れが起きやすい状態にしている点がポイントです。実際の試験では、4節で紹介した施工条件の内、いずれかの条件をパラメータにして低温割れ発生の有無を調査することになりますが、低温割れの抑制に効果的な予熱・パス間温度をパラメータにとって、必要最低予熱温度を評価する試験が一般的になります。ここでは、3節で紹介した2つの割れモードを評価するのに適した、代表的な試験を紹介します。①y形溶接割れ試験y形溶接割れ試験は、縦割れを評価するのに適した低温割れ試験です。図1に示すように、X開先とV開先の鋼板を突合せて拘束溶接部を板厚まで溶接することで、ルートギャップ1〜2mmのy形開先の試験体をつくり、開先内に1層1パスで評価ビードを溶接します。ルート鈍角側の熱影響部に応力集中するように設計されており、試験板の板厚が大きいほど拘束度が高くなります(板厚自体を拘束度のパラメータとして使用します)。溶接後48時間以上経過してから、溶接線に沿った5断面をマクロ観察し、低温割れの有無を評価します。低温割れはルートの応力集中部から熱影響部に沿って発生する場合が多いですが(図2)、溶接金属の硬度が高い場合、溶接金属側にき裂の進展が起きる場合もあります。y形溶接割れ試験は、上記に示した試験の全行程がJISZ3158で規定されています。図3は、y形溶接割れ試験にて、低温割れの発生に及ぼす拡散性水素量と予熱温度の影響を評価した例です3)。拡散性水素量が多いほど、低温割れ回避に必要な予熱温度が高くなっていくことがわかります。図1y形溶接割れ試験の試験板形状(単位:mm)2)2021Summer18


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