>> P.185
この欠点の具体的な事例として、テーラードブランク溶接を想定したレーザ突合せ継手(590MPa鋼、板厚1.4mmおよび軟鋼、板厚0.8mm)に対して、板間のギャップを0.0mmおよび0.2mmに設定した断面マクロ観察結果を図3に示します。ギャップ0.0の結果を見ると、すべての溶接部の厚さが軟鋼側mmの板厚を上回っており、健全な溶接部が得られています。一方、ギャップを0.2mm空けた試験体では、溶接部の厚さが軟鋼側の板厚以下となっており、溶接金属量の不足によるアンダーフィルが発生していることがよくわかるかと思います。レーザ溶接では溶接部の体積が小さく、また、一般的なアーク溶接と違い外部から溶加材を加えないため、わずかなギャップでも溶接金属量が不足し、欠陥の原因となります。継手形状などによっても多少異なりますが、薄板だとレーザ溶接の欠陥をなくすためには、ギャップは0.1mm以下に抑える必要があると言われており、レーザ溶接を行う際は板の加工精度や治具に細心の注意を払う必要があります。一方、実生産工程を考慮し、母材間の隙間の裕度を拡張する手法についても検討が進められています。その一例として、ウォブリング3)を次節で紹介します。4.ウォブリングウォブリングとは、レーザの加工点を高速で動かしながら溶接する手法であり、スキャナーと呼ばれる特殊なレーザ加工ヘッドを使用して溶接を行います。当社で使用しているスキャナーを搭載した溶接ロボットの外観を図4に示します。ロボットの先端に取り付けられているスキャナーの内部には2つのミラーが内蔵されており、この2つのミラーの角度を変化させることに溶接対象物によって適切な発振器を選定する必要があります。アルミや銅などを溶接する際は、炭素鋼と比べてレーザ吸収率が低いため注意が必要です。特に銅の溶接にはより波長の短い発振器が適していると言われており、グリーンレーザやブルーレーザの研究が現在も続けられています。(980MPa鋼、板厚3.溶接例レーザ溶接の一例として、自動車ボディへの適用を想定して当社で行った鋼板1.4mm)重ね継手の溶接ビード外観および断面マクロ観察の結果を図2に示します。上述のとおり、集光されたレーザ光は高エネルギー密度の熱源となり、溶接速度3.0m/minという高速で貫通溶接を行うことができています。また、レーザ溶接の溶込みは、ビード幅に比べて溶込みが深くなるのが特長です。これにより、レーザ溶接では、最低限の入熱で板を貫通することができ、母材の劣化や熱変形を抑えることができます。しかし、この入熱が少なく、溶接部の体積が小さいということは良いことばかりではありません。板間にギャップが空いてしまった場合、アンダーフィルが発生しやすいという欠点にもなります。母材出力溶接速度ビード外観断面マクロ980MPa鋼、板厚1.4mm3kW3m/min1mm図2重ね継手のマクロ観察590MPa鋼、板厚1.4mm軟鋼、板厚0.8mm2kW3m/min0.0mm0.2mm母材出力溶接速度ギャップ断面マクロ図3突合せ継手のマクロ観察図4スキャナー搭載溶接ロボット2022Summer20