用語解説


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用語解説非金属介在物非金属介在物という言葉は金属材料にたずさわらない方にとって、耳慣れないかもしれませんが、それほどむずかしい言葉ではないかもしれません。皆さんはキャンプなどでご飯を食べる時に、もみ殻や砂などの混入物に遭遇したことがありませんか?ご飯にとって、もみ殻や砂が「非ご飯介在物」と言えます。このように説明しますと、非金属介在物がどういうものか何となく理解していただけるのではないでしょうか?「非金属介在物」とは金属組織学分野での専門用語です。ここでは、鋼を対象として説明しましょう。鋼中には、酸化物(Al2O3,MnO,SiO2など)や硫化物(MnS,TiS,CaSなど)が夾雑物として存在します。これらは製鋼の過程で混入または晶出あるいは析出したもので、非金属介在物(NonmetallicInclusion)と呼ばれます。写真1はその一例で、ステンレス鋼中のクロマイト(Cr2O3・FeO)系の非金属介在物です。一般に、非金Cr-ステンレス鋼(0.15%C,12%Cr,1.0%Mo)Cr2O3・FeO系の非金属介在物(黒い部分)写真1非金属介在物の一例20属介在物は鋼材の性質(特に切欠き靭性)に有害なため、できるだけ低減する努力が払われてきました。しかし、故意に添加されるものもあり、例えばMnSの粒子が分散していると、鋼材を切削した場合に生じるチップがきれぎれとなり、被切削性を高める効果があります。鋼中の非金属介在物の生成原因は大きく次の三つに分類できます。①鉄鉱石に存在するS,P,Oなどの非金属元素が製鋼の過程で十分に除去されず、Feなどの金属元素と化合物をつくり、鋼中に残留したもの。②製鋼の過程で、S,P,Oなどの有害非金属元素を除去したり、鉄鋼の機械的性質(強度、靭性、切削性など)を改善するために、添加するMn,Al,Ti,V,Crなどの元素が、S,P,Oなどと結合して、鋼中から除去されない場合、非金属介在物として残されます。③溶鋼あるいは鍛造中の鋼材に耐火物やスケールなどが巻き込まれ、非金属介在物として残る場合もあります。以上は一般の鋼に基づいて非金属介在物の説明でした。ところで、溶接も非金属介在物に関連があります。実は、溶接中の溶融池も鋼の精錬炉と同じと考えられます。溶接材料に存在しているS,Pなどの有害元素を溶接中に除去が不十分な場合、FeやMnなどと化合して、鉄よりも低融点の硫化鉄やリン化鉄になり、高温割れの原因になります。また、製鋼に比べて溶融金属では酸素量が非常に高く、反応も高温です。酸素が除去されないと、酸化物を生成させるだけでなく、Cと反応してCOあるいはCO2を生成し、溶接金属に多くの気孔を生じたりするのです。従って、溶接中には、S,P,Oなどの有害元素を極力低く抑える必要があります。対策としては、MnとSiを溶接材料に添加するのが最も一般的です。これはMnとSiはFeに比べて、S,P,Oとの結合力が強いので、MnS,SiO2,MnOなどの高融点化合物が生成されます。これらの非金属化合物はスラグとして溶接金属の表面を覆いますが、溶接材料の成分や溶接条件などによっては、その一部が溶接金属の中に巻き込まれ、非金属介在物として残ることもあります。これによる機械的性質、特に靭性の低下に注意が必要です。非金属介在物は鋼や溶接金属中にさまざまな形として存在します。強度の増大や組織微細化に有効な非金属介在物もありますが、一般には金属の機械的性質を劣化させます。従って、S,P,Oなどによる非金属介在物ができるだけ少なくなるよう、溶接材料の化学成分は管理されています。(㈱神戸製鋼所溶接カンパニー技術開発部)陳亮


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