本日は神奈川県藤沢市にあります神鋼溶接サービス 溶接研修センターの皆様にお話を伺います。神戸製鋼所藤沢事業所は昭和36年(1961年)に設立され、現在は溶接事業部門の技術研究開発拠点かつステンレス鋼用フラックス入りワイヤの生産工場です。また、神鋼溶接サービス、神鋼アクテック、コベルコロボットサービス、タセトなど神鋼グループ各社が軒を連ねます。溶接研修センターは昭和37年(1962年)より同地で研修事業を行っています。
--皆様の略歴と、現在のお仕事を教えてください。
横島:CS推進部の部長をしております横島です。普段の研修は研修グループにほぼお任せしています。1990年に神戸製鋼に入り技術部(現 技術センター溶接開発部)に所属しソリッドワイヤ、高張力鋼用溶接材料、ステンレス鋼用溶接材料の研究開発に携わりました。以後海外(オランダ、インド)駐在、国内営業(四国、関東、九州)を経験し、CS推進部発足に合わせ着任、研修センター長を兼任しています。
金子:入社は1973年で、技術部の試験室に所属。2000年に営業部 技術サービス室(現 CS推進部 CSグループ)に所属し、ユーザ・代理店さんでの講習会や技術指導をしていました。2016年4月から研修センター長代理として、研修センターの運営及び講義、実技指導を担当しています。
安田:2015年に神鋼溶接サービスに入社しました。その前は食品機械やトラック部品、ロボットの製造工場で溶接やポンプ部品製作の溶接・メンテナンスをしていました。溶接経験は17年になります。薄板では0.6㎜のステンレス鋼のTIG溶接や半自動溶接をしていました。その後神鋼溶接サービスの茨木工場採用に応募、ご縁があり現在はこちらでお世話になっております。主にJIS受験コースの講義と実技指導を担当しています。
信田:1974年の入社です。4年程西条工場に所属し、技術部にて9年程FCB・RFなど片面サブマージの研究・開発を担当、その後営業部名古屋営業室に所属し大手造船、橋梁メーカーを担当しました。1995年に技術サービス室長となり、2004年より研修センターに所属しております。研修センターは13年目になります。今では講義は若い方に任せ、QMS関連など業務改善を主に行っています。
後山:2000年より溶接研修センターに勤務しています。その前は1966年からエンジニアリング会社で溶接や品質管理を担当していました。海外での仕事も多くイラン、イラク、韓国、インド、インドネシアで若いころは現地の方と共にものづくりをし、その後プロジェクトの品質管理・納期管理に携わりました。2000年に勤務していた工場が閉鎖となった際に、神鋼溶接サービスの方に声を掛けていただきました。当初は溶接をする人を、とのことだったのですが、研修センターを見て、人に教えるのが好きでしたので研修センター勤務にしてもらいました。今年で在籍16年となり、研修センターでは一番の古株です。講義や実技全般を担当しており、北海道、九州、関西など出張講習も担当しています。
小笠原:2005年に入社し、3月で満12年になりました。研修センターの庶務及びJIS検定試験の申込を含めた日本溶接協会との調整が仕事の中心です。入社前はまったく違う業界で人事の仕事をしており、溶接のことは知りませんでした。試験に関する記号を覚えるのが難しくて苦労するなと思っていました。技術的なことは判らないことも多いですが、受験に関する手続きについてはすっかり慣れました。
--研修センターの設立からの歴史を、設立のいきさつを含め、教えてください。
横島: 昭和29年(1954年)神戸市脇浜町神戸製鋼所内に溶接技術の普及と技術者養成を目的に「神鋼溶接技術補導所」として創設されました。昭和35年(1960年)の研修生募集内容を見ると初等科3か月、高等科1か月コースでともに講師料は無料となっており、溶接技術普及活動への強い意気込みが感じられます。1954年、57年に代理店向けセールスマン講習会を実施しています。
藤沢工場完成後の昭和37年(1962年)に藤沢に移設、名称も神鋼藤沢溶接教習所と改名されました。平成7年(1995年)の神鋼溶接サービス設立時に神鋼溶接サービス 溶接研修センターとなりました。
平成28年(2016年)にカスタマーサポートグループが神鋼溶接サービスに合流し、CS推進部として共に活動しています。
--具体的な研修コースについて教えてください。
金子:大きく分けて、 ①JIS溶接技能者評価試験受験コース、 ②随意コース、 ③定期コースの3つになります。 ①JIS溶接技能者評価試験受験コース(5日間)は、評価試験合格に向けての座学と実技研修、最終日に日本溶接協会の溶接検定委員に来ていただき受験します。 ②随意コースは新入社員研修、設計者管理スタッフの溶接研修、溶接技能向上など顧客に合わせ内容と期間を自由に設定しています。 ③定期コースは、溶接入門コースや神溶会代理店新人向けのセールスフレッシュマンコースなど、一定のカリキュラムにより募集を行っています。全体では年間約800名の研修生が受講しています。
--オーダーメイドの研修も可能とのことですが、どのような研修がありますか。
後山:業種としては、建築、石油・ガスなどエネルギー産業やエンジニアリング、電力関連産業の技術スタッフ、溶接士さん向けに実施しています。座学と被覆棒、ガスシールドアーク溶接、T I G 溶接などの実技を組み合わせた研修です。また、神溶会の指定商社さん中堅営業マン向け研修も実施しています。
またJICAからの委託研修を20年以上続けてきました。2~4日のコースで東南アジア、インド、中東、アフリカからそれぞれの国を代表する研修生が溶接を学びます。通訳の方が付くこともあるのですが、溶接を詳しくご存じではない方には通訳もむずかしいようです。
--神鋼溶接研修センターのアドバンテージを教えてください。
金子:溶接ブース数37、炭酸ガス溶接機26台/交流溶接機31台/ T I G 溶接機10台を有する実習場で溶接ブースを占有して充分な練習時間が取れること、神戸製鋼OBを含めた経験豊富な指導員の熱心な指導が挙げられます。平成28年(2016年)にC S 推進部として旧カスタマーサポートグループと同じ組織となり、その経験とスキルを活かしています。至近5年で約1,800人がJ I S 溶接技能者評価試験受験コースを受講し、合格率は90%を超えています。
ただし最近は申込者が多く、すぐに予約で埋まってしまうのが悩みです。
溶接実技も、被覆棒、ガスシールドアーク溶接、T I G 溶接、M I G 溶接のほか、最近受講者が急増しているセルフシールドアーク溶接が可能です。T I G 溶接コースではステンレス鋼、アルミ、チタンの溶接コースもあります。
〈2017年度 研修コース案内〉
http://www.sws-shinko.co.jp/business/kenshu/pdf/17kenshu.pdf
【保有設備】
・溶接ブース:37
・炭酸ガス溶接機:26台・交流溶接機:31台/
セルフシールドアーク溶接機:3台
TIG溶接機:10台/ MIG溶接機:1台
安田:私は前職でJ I S 受験コースを外部で受講しましたが、数日間に渡り納得できるまで試験板を何枚も溶接できるコースは少ないのではないかと思います。またパイプやチタンやステンレスのT I G 溶接など様々なコースを受験できるのは貴重ですね。
金子:オーダーメイド研修では座学・実技だけではなく、ご要望に応じて溶接ロボットの実演や機械試験の見学、拡散性水素量の測定など、研究開発機関が集まる藤沢工場ならではの幅広い研修が可能です。
--少子高齢化が進む中、溶接士不足が問題となっています。
信田:次世代溶接士の育成、溶接の認知度向上のため工業高等学校の先生方向け溶接技術講習会及び高校生溶接コンクールへの支援を行っています。昭和39年(1964年)工業高校の教諭を対象に1週間の夏季アーク溶接技術講習会がスタートし、昭和43年(1968年)から昭和46年(1971年)は、定員オーバーのためか2回に分けて実施するなど、現在まで継続実施されています。5日間の研修の2/3を実技が占め、昔は古い冷房のない実習場で熱心に取り組まれ、溶接研修センターの多くの研修の中で最も熱心な講習生です。講義の一環として家形模型製作を行っており、その図面を基にアルミニウム合金で製作したものを寄贈していただいたこともあります。また、全国工業高等学校校長協会の創立70周年と80周年には感謝状をいただいています。
金子:神戸製鋼と共に支援している高校生溶接コンクールでは、平成24年(2012年)に第3回関東甲信越高校生溶接コンクールを溶接研修センターにて実施、関東甲信越から選抜された各県2名、東京都4名合計22名が日ごろの練習の成果を競いました。その後、第4、6、7回コンクールで溶接研修センターが会場となっています。競技終了後、審査の待ち時間を使って神戸製鋼の溶接ロボット実演やロボット工場の見学会を行い、溶接への興味と理解を深めて貰いました。
--神鋼やそのグループ会社向けの研修があればその内容を教えてください。
横島:神戸製鋼マーケティングセンター及びコベルコ溶接ソリューション(大手需要家向け販売会社)向け技能研修を毎年実施しています。これはユーザさんで起こりうる溶接トラブルの原因と解決法を学び、実地体験する研修です。たとえば、スプールのフランジを掴んだらどのようなトラブルになるか、また誤った溶接材料で溶接するとどうなるかを、実際に溶接し機械試験で結果を試すなどしています。溶接トラブルは根本原因をつぶさない限り繰り返される可能性が高く、営業マンには初動対応の重要さを認識してもらっています。また、神戸製鋼所溶接事業部門海外拠点の技術サービス・スタッフや、神溶会の勉強会などにも活用いただいています。
--皆様が日々の研修で心がけていることや、ご苦労、良かったことを教えてください。
後山:やはり、J I S 溶接技能者評価試験受験コースを受講された方が全員合格していただけるのが一番嬉しいですね。私の知る限り、過去2回ありました。
--合格率90%以上ということで、有りそうなのですが、無いのですね?
信田:50人居たら1人位は落ちますよね、ふつう。見ていて「この人危ないな」というのは分りますので。
--危なそうな方には重点的に指導をされるのですか?
後山:実技の様子を見ていて心配なさそうだったら、座学の方に力を入れてもらう、実技が怪しいようであれば、集中的にみて指導するなど柔軟に対応しています。
金子:私はまだ日が浅いので経験していませんが、リピーターの方とお会いするのも楽しみです。
後山:3年に1度、JIS検定更新の際に土産話を携えて来てくれるリピーターの方がおられるのが、何よりも楽しみでありがたいです。
--受講者の地域性みたいなものはありますか?
小笠原:東日本が中心ですね。大阪から西はあまり多くはありません。
後山:中国・四国・九州は造船の比率が高いこともあるのでしょう。J I S よりも船級協会の認定試験を受けられるのかもしれません。
--受講される方は何を見て来られるのでしょう?
後山:やはり口コミですね。会社同士の繋がりや、友達など。あとはホームページを見て申し込まれる方もいます。
--地域といえば、地元の方との交流もあるとお聞きしました。
信田:研修センターの玄関前にある「かぶと松・八っ嶋」は藤沢市の史跡になっています。「かぶと松」は後三年の役の際に功績のあった源義家の家来・鎌倉権五郎景政が戦勝のお礼に岩の上にかぶとを埋めて松を植えたことがその由来となっています。「八っ嶋」は鎌倉幕府滅亡の際の洲崎の激戦の墓碑で、藤沢事業所では、毎年10月に近所の町内会と合同で慰霊祭を行っています。また地域交流として毎年8月に「神鋼祭」という夏祭りを実施しています。グランドに屋台が立ち並び地域のお子さん、お年寄りが大勢参加されます。昨年はJ I S 検定の懇親会と同じ日になったため研修生とともに参加しました。
--最後に、これから研修センターに申込みしたいと思っておられる方に一言お願いします。
金子:今後、仕事で免許がますます必須な状況になりますので、短期間集中で練習ができる当研修を是非受講ください。お待ちしています。
小笠原:早目の申込みをお待ちしています。
--ありがとうございました。