技術レポート (Vol.63 2022-3)

2022国際ウエルディングショー出展のみどころ


(株) 神戸製鋼所 溶接事業部門 技術センター

1. はじめに

来る7月13日(水)~16日(土)の4日間、2022国際ウエルディングショーが東京ビッグサイトにて開催されます。神戸製鋼は「KOBELCO-Your Best Partner」をテーマに、顧客のベストパートナーとして課題解決につながる溶接ソリューションを提案します。

2.展示のみどころ

製造業の共通課題である高能率化、脱技能化ニーズに対し、自動化、高品質化に向けた最新の業種別ソリューションを実演、業種別にパネル・映像にて紹介いたします。また、主催者テーマである「日本から世界へ 溶接・接合 切断の DX 革命」に合わせて、製造現場の高品質な自動化を支えるDXツールをご紹介するDXコーナーを設けます。

3.溶接システム実演コーナー

図1 ハイエンド新型溶接機

当社のアーク溶接ロボットは、中厚板分野を中心に、国内外において数多く採用していただいております。これまでお客様の高速・高品質な溶接、安定稼動、省スペースなどの要望を、システム・ロボット機能・溶接プロセス・溶接材料で実現してまいりました。今回は昨年上市したハイエンド新型溶接機[S]RA500を中心とした各種溶接ロボットシステムの紹介、実演を行って参ります。


3.1. 建築鉄骨/コラムの高能率溶接施工

本ブースでは、を搭載した新システムA60×[S]RA500鉄骨溶接ロボットシステムによるコラム高能率溶接施工をご覧いただくとともに、パス間温度の自動測定機能、溶接結果を出力する施工レポート機能を紹介します。

3.1.1. 新 鉄骨溶接ロボットシステムA60×

新型溶接機[S]RA500の新たな出力波形制御によって、溶滴移行周期の変動を制御し、溶滴移行の規則性を向上させています。その結果、の電流範囲を拡大するとともにスパッタの発生量を低減しています。拡大した電流範囲を活かしたコラムの溶接条件を開発し、従来と同等の継手性能を担保しながら、溶接速度を向上させコラムの溶接時間を短縮することができます。関連機器の配置見直しにより非溶接時間も短縮し、全体でのサイクルタイム短縮を実現しました。また、表面処理技術により送給経路の詰まりが軽減されたの専用ソリッドワイヤとなる[F]MG-56R(A)を使用することでワイヤ送給性や生産性が向上します。

図2 サイクルタイム短縮
図3 ビード外観と断面マクロ
図4 電流範囲の拡大


3.1.2. パス間温度測定機能(参考出展)

パス間温度の管理は、溶接金属の冷却速度を制御することで溶接金属の機械的性質を適切に保つために重要です。このパス間温度は、1パスごとに人が測定と記録を行って管理をしています。

現在当社では、鉄骨溶接ロボットに非接触の温度センサを搭載し、温度測定をロボットが実施するパス間温度測定機能を開発中です。本機能では、温度を測定し、管理温度より高い場合は、温度が下がるまで自動で待機します。また、取得した値は、溶接電流、アーク電圧、溶接入熱とともに、自動で施工レポートに出力できます。これにより、安全性の向上、ヒューマンエラーの防止、測定マンパワーを別作業に移せることによるトータルの生産性向上を実現します。

図5 施工レポート機能&パス間温度測定機能


3.2. 建築鉄骨/小型可搬型ロボット ケーブルレス 石松™( ※コベルコROBOTiX)

プロセスを搭載したケーブルレス 石松™で建築鉄骨の仕口溶接を実演します。

小型可搬型溶接ロボット 石松™ のティーチングボックスから約5kgのケーブルをなくしたケーブルレス 石松™(無線ティーチングボックス)は、従来型(有線ティーチングボックス)よりもワーク間の移動が楽になるため、オペレータの作業効率が上がります。石松™ の良好なハンドリング性・全自動溶接機能とプロセスの低スパッタ・高能率溶接による生産性向上を実現した鉄骨自動化ソリューションの拡大をご体感ください。

また、石松™ の新型タッチパネル式コントローラの展示・体験コーナーを設けます。

新型タッチパネル式コントローラは画面サイズが従来型の1.2倍、Windows10搭載で直接画面に触れて操作を行います。操作性向上に加え、パラメータなどのID管理、トラブルシューティングや取扱説明書を閲覧できるHELP機能などを備えています。ぜひ体験コーナーへお越しいただき、見て、触れて、新しいコントローラの使いやすさをご実感ください。

3.3. 建設機械/すき間埋め溶接の自動化ソリューション

建設機械市場で見られる裏当て材のない開先部は、溶接対象物の切断精度や組立誤差により意図しないすき間(ギャップ)が生じることがあり、その場合、溶落ち・裏抜けを防止するため、ロボット溶接工程前に人の目で確認しながら半自動溶接によるすき間埋め溶接が必要でした。

このすき間埋め溶接を自動化するためには大きく2つの課題があり、それぞれに当社技術を適用することで、高難易度溶接を実現します。

①入熱の分散による溶落ち防止

すき間がある開先において、溶融池先端に入熱が集中すると、溶融金属が凝固する前に溶落ちてしまいます。そこで、ウィービングカスタマイズ機能を適用することで、溶融池先端への入熱を分散させることが可能となり、溶落ちを防止します。

②高精度なギャップ幅の測定

図6 レーザセンサ外観

溶落ちを防止するために、測定したギャップ幅に応じて適正な溶接条件の適用が必要となります。従来のタッチセンシングではワイヤ径以下のギャップ幅は測定できません。また、適正な溶接条件の適用のためにも、より高精度なギャップ幅測定が必要となります。そこで、レーザセンサを用いることで、従来測定できなかったようなギャップ幅の測定や高精度測定が可能となります。(計測分解能:レーザセンシング0.1mm /タッチセンシング0.5mm程度)

今回会場では、変動するギャップに対し上記機能を使った実演を行います。また、本実演には、新型溶接機[S]RA500と、アーク安定性と耐チップ摩耗性を向上させたソリッドワイヤ[F]MIX-50Rを使用します。

また、併せて生産支援システムの新機能、現場状況の見える化に貢献するViewも展示します。詳細についてはDXコーナーをご覧ください。


図7 ウィービングカスタマイズ機能


3.4. 短絡フリー新ワイヤ送給制御プロセス (参考出展)

従来のワイヤ送給制御プロセスは短絡移行であるため、低スパッタ・低入熱溶接は実現できるものの、高電流かつ中・厚板/多層多パス溶接への適用が困難でした。そこで、当社では短絡移行を前提とせず、ワイヤ送給方向を前進・後退させることによって慣性を溶滴移行に利用した世界初のワイヤ送給制御プロセスを開発しており、今回、参考出展として初披露させていただきます。のスパッタ発生量は、低~高電流の広い条件範囲において、通常の炭酸ガスアーク溶接の1/10以下を実現しています。また、高溶着プロセスであるため、従来よりも高速度化が可能となる上、お椀型の深い溶込みと平坦なビード形状が得られ、中・厚板の多層多パス溶接における耐欠陥性向上にも期待できます。

会場での溶接デモをご覧いただき、溶接工程に革新をもたらすの可能性をぜひとも感じてください。

4.高能率・高品質施工法の展示

4.1. 高能率・高品質 新エレクトロスラグ溶接法

図8 の構成

造船分野を中心に広く適用いただいているSEGARC™より一新した、新エレクトロスラグ溶接法を開発しました。ESWの要素技術を基としたプロセスであり、スパッタ・ヒューム発生量が極めて少ないという特長があります。溶融池はスラグ浴に保護されるため、シールドガスを使わず耐風性に優れます。また、専用溶接材料の適用で高入熱溶接でも優れた衝撃性能を確保しています。新たに開発した溶接装置SG-3と組合せ、推奨溶接条件の読み出し、フラックス自動投入によるスラグ浴形成、左右位置ずれの開先倣いによる解消といった、技能レス化を実現することができます。プロセス・溶接材料・溶接装置を組合せ、溶接作業環境・溶接品質を向上する革新的な立向自動溶接法として、ものづくりに貢献します。

4.2. 建築鉄骨/現場溶接の自動化ソリューション(石松™と姿勢溶接に最適な溶接材料)

図9 鉄骨溶接現場での自動化イメージ

建築鉄骨現場溶接では溶接技能者不足に対応するため、高生産性、高品質な溶接施工技術が求められています。対して、当社では全自動センシングによるフルオート溶接が可能である可搬型小型軽量溶接ロボット石松™ を提案しております。一人複数台使用かつ簡単な操作にて、多層盛/長尺溶接が可能であり、幅広い分野で使用されております。また、各種溶接姿勢に最適な専用溶接材料として、下向・横向溶接用[T]MG-60・[F]MG-56R、上向溶接用[F]DW-55ST・[F]DW-1ST、立向溶接用[F]DW-55V・[F]DW-50Vをラインナップ化しております。会場では、溶接施工例として、柱-梁(ウェブ)の溶接を模擬した試験体を展示しており、高電流・高能率立向上進溶接が可能である[F]DW-55Vと 石松™による試験体となっております。本プロセスによる溶接の実力をご覧ください。

4.3. 9%Ni鋼用溶接ロボット

エネルギー関連分野向けには9%Ni鋼用溶接ロボットシステムの紹介をしております。LNGタンクの素材である9%Ni鋼の溶接には通常Ni基合金溶接材料を用いますが、融合不良などの欠陥が生じやすく比較的難易度の高い溶接です。そこで、9%Ni鋼用Ni基合金フラックス入りワイヤの立向溶接を自動化するシステムを開発しました。小型可搬型溶接ロボットKI-700は小型軽量(約6kg)、可搬型(据付不要)で、タッチセンシングによる開先形状検知機能、検知した開先形状から最適な積層パターンおよび溶接条件を自動生成する機能を有します。Ni基合金モードを搭載したデジタル溶接電源[S]AB500との組合せにより、オペレータの技量に依らず安定した品質の溶接を行うことが可能です。さらに長尺の連続溶接、オペレータの多台持ちにより溶接の高能率化にも寄与します。

5.DXコーナー

近年、さまざまな分野でDX推進が取組まれており、特に製造業におけるDX推進は非常に重要なテーマとなっています。しかし、日本の製造業においては稼動データの収集・活用が遅れており、世界規模のデジタル競争に取り残される可能性が示唆されています。この社会的課題を踏まえ当社では、溶接現場のDX推進を目標に、厚板溶接システムに特化した、稼動データや設計データの活用を支援するさまざまな周辺ソフトを提供しています。今回の国際ウエルディングショーでは、これらアプリケーションについてご紹介いたします。

5.1. AI溶融池画像認識による自動溶接施工技術/溶融池センサ

近年の溶接を取り巻く環境では、高能率化/高品質化の要求・熟練技能士の不足が課題となっており、溶接の自動化・脱技能化のニーズが高まっております。これらの環境を鑑み、当社では、溶融池センサを活用して熟練技能士の匠の技を自動溶接機にて再現させ、溶接の品質安定化、技能レス、トレーサビリティの確保、省人化、生産性向上に貢献することを目指した技術を開発中です。本技術は、AIで抽出した溶融池の特徴量を用いて溶融池形状の変化に追従したロボット制御を行っており、難度の高い溶接の自動化を実現しております。その他、専用溶接材料や、自動溶接機(石松™)の積層条件生成機能を活用することで、生産性向上につながる施工法コンセプトを提案しています。

図10 AI溶融池画像認識による自動溶接施工技術

5.2. 溶接ワーク種類のAIによる自動判定

製缶工程において溶接プログラムの設定ミスにより、トーチとワークの接触や不必要な溶接が発生することがあります。そこで、本ソフトはカメラとAIを活用し、溶接プログラム設定後再生前にワークと溶接プログラムが一致しているかを確認するチェック機構を提供します。本ソフトとオペレータのダブルチェックにより生産ミスを低減できます。

既存の32種類のワークを扱う溶接ラインでの実証実験より99%の精度でワークと溶接プログラムの一致をチェックすることができ、オペレータとソフトのダブルチェックにより生産ミスをほぼ0にすることができました。

図11 溶接ワーク種類のAIによる自動判定

5.3. Offline-Teaching System

Offline-Teaching System (K-OT_S)とは、と同じソフトを使用することで動作をほぼ正確に表現することができるオフラインティーチングソフトです。実際のロボットコントローラ上では難しいポジショナを含めたミラー変換や、さまざまな視点からの検証を容易に行うことができ、危険度の高い高所/閉所での作業時間を短縮することができます。

この度、新機能として従来のオフラインティーチングソフトでは確認の難しかったケーブルの干渉/巻き付きを簡単かつ高速で確認することのできる「ケーブルシミュレーション機能」をリリースしました。ケーブルシミュレーション機能は高速にケーブルを表示することができ、ケーブルを表示させながら従来のK-OT_Sと同様にご使用いただけます。さらに、溶接線より適切なの動作・移動装置の位置や動作・ポジショナの角度をそれぞれ計算し自動で溶接プログラムを生成する、教示レスを目指したシステムの開発を行っています。

5.4. SMART TEACHING™ for CAM

国土交通省が推進するi-Shippingでは、3D-CADデータを使用した生産性を向上させる取組みが取り上げられ、溶接工不足や高齢化などの課題解決が掲げられています。また、ロボット導入の課題として、部材ごとに教示データの作成が必要となり、本作業には溶接施工、ロボット動作、および溶接対象物の位置決めなどのノウハウや技術が必要であり、多くの時間を要します。そこで当社は3D-CADデータを用いることで教示データ作成時間を短縮するSMART TEACHING™ for CAMを開発しました。

本ソフトでは、3D-CADデータを読み込み、部材の形状を認識することで、教示データを自動で作成します。作業者に依存せず、約400本の教示データを約3分で生成でき、教示データの作成時間を大幅に削減できます。

図12 SMART TEACHING™ for CAM

5.5. PRODUCTION SUPPORT

図13 View

近年、DXへの取組みが活発化し、データ活用による生産性改善の意識が高まっています。これに応えるため、当社溶接ロボットシステムの生産性向上を支援するソフトとして、 PRODUCTION SUPPORTを提供しています。このソフトは、 と接続し、溶接情報やエラー履歴、プログラム再生履歴を記録します。また、これらの記録をレポート形式で出力でき、課題抽出や改善に活用することができます。このたび、本ソフトに、カメラを接続した Viewをオプション機能として追加しました。システムの状態や、エラー発生時の瞬間、溶接状態などを動画で確認でき、チョコ停や溶接不良などのトラブルを容易に追跡することが可能となりました。本機能により、お客様におけるデータ活用の幅を広げ、これまで以上に生産性向上を支援します。


5.6. デジタルツイン(参考出展)

図14 デジタルツイン/実演ブースのシステム動作をリアルタイムで再現

DXとともに「デジタルツイン(「ぼうだより 技術がいど」2021年7月号 vol.510 用語解説)」という概念が注目されています。デジタルツインとは、さまざまなシミュレーションを1つに統合し、実システムのセンサやログ情報から、実システムの状態を完全に再現するモデルのことです。このモデルを使用することで、実データとシミュレーションを統合し、より高度な実システムの分析が可能になります。当社では、技術検証を目的として、CENIT社のFASTSUITEを導入し、当社溶接システムのデジタルツインを作成しています。現在は、実システムの動作の再現や、プログラム動作の確認などをデジタルツイン上で実施することが可能です。デジタルツイン上で実データをもとにした解析を行い、実システムを常に最適な状態稼動させることを目標に本開発を行っています。

5.7. VRを活用した溶接トレーニング (コベルコ溶接テクノ)

図15 VRを活用した溶接トレーニング

ナップ溶接トレーニングは、バーチャル上に熟練溶接士の運棒法を再現、その動きを真似ることで溶接の早期習得を促進します。1台で被覆アーク、半自動、TIG溶接の3溶接法、溶接姿勢も下向・横向・立向に対応し、鉄板・溶接材料が不要で何回でも練習ができます。

持ち運び自由で簡単操作、いつでもどこでも、バーチャル上で楽しみながら溶接トレーニングが可能です。

2022年6月より採点機能を標準装備、熟練溶接士の方は腕試しを、溶接は知っているけど未体験という方は溶接の面白さをバーチャルで体験してみてください。

コベルコ溶接テクノの試験・調査メニューや溶接研修のお問合せもお待ちしています。

*イマクリエイトおよびコベルコE&M、コベルコ溶接テクノの共同出展です。

5.8. AIで進化するKOBELCOの溶接材料

MI技術*に取り組むことで進化を遂げるKOBELCOの溶接材料について紹介いたします。

当社ならではの溶接知見・ノウハウと膨大な実験データをAIと組合せ、溶接プロセスに特化した独自のMI技術開発と実製品への適用を推進しています。

材料設計パラメータの最適化や、これまで実現が困難だった相反する各種特性の両立など、実製品への適用開発状況について、事例とともに紹介いたします。

*MI(Materials Informatics)技術 =情報科学(AIや統計)で材料研究・開発を高度化する手法

6.業種別パネル展示コーナー

業種別パネル展示コーナーでは、建築鉄骨・自動車・造船・建設機械・エネルギーの業種ごとに、共通の課題である自動化・高能率化・高品質化に対応した溶接材料、溶接ロボットシステム、溶接プロセスの紹介をします。ロングセラーから新商品まで、幅広いラインナップにて紹介しております。

ぜひ、お立ち寄りいただき、興味を持った点や疑問点などを当社説明員にぶつけてみてください。

7.最後に

神戸製鋼は顧客のベストパートナーとして、課題解決につながる製品・サービスを提案いたします。ぜひ神戸製鋼ブースを訪問いただき、当社製品・サービスへの忌憚のないご意見と、溶接に関する課題・お悩み事をご相談ください。

皆様のご来場をお待ちしております。

※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
SENSARC™→ [S]   FAMILIARC™→ [F]   TRUSTARC™→ [T]



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