IoT技術の導入が進み、「デジタルツイン」という概念が注目されるようになりました。デジタルツインとは、さまざまなシミュレーションを1つに統合し、実システムのセンサーやログ情報から、実システムの状態を完全に再現するモデルのことです[1]。デジタルツインを用いれば、シミュレーションに加え、システムの状態評価や、挙動の予測、稼動の最適化ができるとされています[2]。
デジタルツインの最初の定義はNASAが2010年に発表しました[3] 。NASAにおいて、シミュレーションの効率化、宇宙空間を飛行中のロケットの状態監視やトラブル対応、フライトの将来予測、フライト変更の際の再シミュレーションなどのために開発されました[1]。これ以降、まずは航空宇宙分野でデジタルツインの概念が使用されるようになり、その後製造業界において、すでに進行中であったバーチャルファクトリーに関する研究を発展させたものとしてデジタルツインの概念が使用されるようになりました[3]。
最近では、工場の状態監視、ダムの状態監視などへの活用[4]、ビルや都市自体のデジタルツインを作成し、シミュレーションによる交通、防災の最適化をする試み[5]など、さまざまな業界でデジタルツインが活用されています。現在、当社においても、溶接システムのデジタルツインに関する取り組みを始めたところです(図1)。
上記の事例以外にも、デジタルツインによる遠隔からの状態監視やトラブル対応ができるようになれば、導入が難しい製造業においてもリモートワークの普及が進むと考えられます。
以上のように、デジタルツインは、今後の産業界に大きなイノベーションを起こす可能性があり、さまざまな分野での応用が期待されています。
図1 構想中の溶接システムのデジタルツイン
〈参考文献〉
[1] M. Shafto, M. Conroy, R. Doyle, E. Glaessgen, C. Kemp, J. LeMoigne, L. Wang, DRAFT Modeling, Simulation, Information Technology & Processing Roadmap. Technology Area 11, 2010.
[2] MathWorks デジタルツイン
https://jp.mathworks.com/discovery/digital-twin.html
[3] E. Negri, L. Fumagalli, M. Macchi, A review of the roles of Digital Twin in CPS-based production systems, Procedia Manufacturing. 11 ( 2017 ) 939 ‒ 948
[4] FUJITSU JOURNAL 製造業の最新事例にみるデジタルツイン
https://blog.global.fujitsu.com/jp/2020-02-25/01/
[5] DIGITALX
清水建設、豊洲スマートシティに投入する「建物OS」をCEATEC 2020 ONLINEで披露
https://dcross.impress.co.jp/docs/column/column20190121/001836.html