溶接110番・溶接レスキュー隊119番


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溶接レスキュー隊119番耐摩耗鋼板の溶接耐摩耗鋼板は建設機械、鉱山設備、土木機械の土砂摩耗部分や、砂利、砕石、生コンクリート、セメント等各種プラント設備の摩耗部分に多用されています。この種の鋼材は弊社を始め製鉄、製鋼各社で製造されています。その代表的な耐摩耗鋼板を表1に示します。1.耐摩耗鋼板の目的耐摩耗鋼板は機械及び部品の長寿命化による経済的メリットが得られるため、摩耗の激しい部材に数多く採用されています。特に最近ではダンプ・トラックの荷台、パワーショベルのバケット、ブルドーザー排土板などに多用されています。2.耐摩耗鋼板の溶接性もともと耐摩耗鋼板は炭素(C)あるいは炭素当量(Ceq)などを高めて硬さを上げて耐摩耗性を高める思想で作られており、結果として溶接性は好ましいものではありませんでした。そのためうっかり溶接をして溶接割れなどを経験した方は多かったと思われます。そのためこのような事態にならな表1各社の主な耐磨耗鋼の一例メーカー名耐磨耗鋼の鋼板名ブリネル神戸製鋼JFEスチールK-TENAR320WK-TENAR340WJFE-EH360スウェーデンスティールHARDOX400新日本製鉄住友金属WEL-TENAR360FWEL-HARD400SUMIHARDK340SUMIHARDK400321〜360341〜380361以上360〜440361以上361〜440320〜360360〜440表2適用溶接材料いように、予め溶接性を考慮した溶接改善型の耐摩耗鋼板が開発され、溶接が必要な部材には、一般的に使用されるようになりました。この溶接改善型は硬度や引張強度が高い割に、炭素当量(Ceq)、溶接割れ感受性組成(PCM)が低く抑えられているため、溶接性は一般鋼材、490MPa級高張力鋼と同等なので、溶接施工時の手間が軽減されるようになりました。3.溶接材料選定溶接性改善型の耐摩耗鋼板の溶接性は先に述べたように、一般鋼材、490MPa級高張力鋼と同等ですが、引張強度がより高いので、高張力鋼の溶接時の要点と同じく耐割れ性を考慮して、できるだけ水素量の低い低水素系溶接材料を使用します。溶接方法は被覆アーク溶接、MAG溶接が一般的に適用されています。実施工に際して溶接材料を選択する場合、表2に示すように二通りの考え方があります。まず1)に示すように溶接金属にも耐摩耗性が要求される場合は、母材の引張強度にできるだけ近い溶接材料(被覆アーク溶接棒/LB-16、MAG溶接用ワイヤ/MG-80など)を使用します。2)1に示すように耐摩耗性が要求されない場合は、軟鋼および490MPa級高張力鋼用の溶接材料(被覆アーク溶接棒/LB-2、MAG溶接用ワイヤ/MG-50、SE-0Tなど)を使用します。4.溶接施工実施工に際しては、高張力鋼の溶接の要点と同じく、予熱パス間温度の管理が必要となります。比較的拘束力が小さい場合や板厚が薄い場合は常温での施工が可能となりますが、板厚が厚い場合や、拘束力が大きい場合は予熱が必要になります。一般的に強度レベルが高いほど、板厚が厚いほど、拘束力が大きいほど高い予熱、パス間温度が必要となります。表3に予熱温度の目安を示します。神鋼品名1)耐摩耗性を要求される場合の溶接材料溶接方法新JIS規格被覆アーク溶接E7816-N4CM2Uガスシールドアーク溶接G78JA2UCN4M4T2)耐摩耗性を要求されない場合の溶接材料溶接方法被覆アーク溶接ガスシールドアーク溶接新JIS規格E4916YGW11YGW12被覆系統低水素系――LB-116MG-80被覆系統低水素系神鋼品名LB-52(大電流用)MG-50、MG-(小電流用)MG-50T、MG-表3板厚による予熱温度の目安(鋼材メーカーカタログより)品名厚*板(mm)t≦50HARDOX400(ハードックス400)50<t≦7070<t≦100すみ肉溶接予熱温度備考常温75℃*板厚t1+t2+t3=t1t3t2100℃0,DW-H450など)が使用されますが、尚、更に溶接ビードに耐磨耗性が重視される場合は溶接ビード上に肉盛溶接が行われる場合があります。その場合は耐磨耗鋼の硬度に合わせて硬化肉盛系溶材(被覆アーク溶接棒/HF-350,HF-450、炭酸ガスフラックス入りワイヤ/DW-H35その際は150℃以上の予熱が必要となります。また溶接条件については過大入熱、過大電流は避け、母材を必要以上に溶かさないよう注意してください。低水素系溶接棒を使用する際は使用前の乾燥を忘れずに行ってください。詳細は総合カタログ(赤カタ)の「590〜780MPa級高張力鋼」のページに記載しています「溶接作業の要点」を参照してください。(株)神戸製鋼所溶接カンパニーカスタマーサポートセンター博及川政8


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