溶接110番・溶接レスキュー隊119番


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溶接レスキュー隊119番マグ溶接におけるアーク不安定についてマグ溶接において、健全な溶接ビードを得るためには、アーク不安定要素がない事が望ましいのは言うまでもありません。しかし何らかの原因でトラブルが発生した場合は、悲しいかな溶接ワイヤが一番最初に疑われる事が多いように見受けられます。そこで今回はアーク不安定関連のトラブルについて紹介しますので参考にして下さい。マグ溶接における大きなアーク不安定要素として、ワイヤ送給不良やワイヤ通電不良などが原因として挙げられます。ワイヤ送給不良では、ワイヤ送給経路での不具合が原因で発生します。尚、使用機器によってはモード切替えが使用ワイヤとの組合せに合っていない事によるアーク不安定もありますので、使用時は、モードの確認をしましょう。ワイヤ通電不良での主な原因として、極度なチップ磨耗による穴径過大化、ワイヤ径とチップ径が合致していないものを使用、またパックワイヤとストレートトーチの組合せによるワイヤ矯正不良などがあります。1.ワイヤ送給不良についてマグ溶接のワイヤ送給系では、送給装置のスプール軸にセットされたワイヤが、矯正ローラーを介して送給ローラーで適度に加圧されて送給されます。溶接トーチ内に挿入されているスプリング状のコンジットライナーを経由し、最後にコンタクトチップを通過してワイヤが外に出てきます。スムースに送給されたワイヤはコンタクトチップの内面に接触し、給電されアークが発生する仕組みになっています。従ってこの送給経路のいずれかに支障があってスムースな送給が妨げられた場合にワイヤ送給抵抗が大きくなり、その結果アーク不安定が生じます。2.ワイヤ通電不良について通常、アーク不安定が生じた時には、コンタクトチップの交換が行われると思いますが、以下にコンタクトチップに起因する原因を4つ紹介します。①②長時間使用したコンタクトチップは磨耗が著しく、穴径の過大化により給電位置が不安定となりアークが不安定になる。アークスタート時のバーンバック現象(アークスタート時、一瞬にしてワイヤが溶けてコンタクトチップ先端に融着する現象)で、コンタクトチップ先端に付着した鉄分が安定給電の妨げとなりアーク不安定になる。③連続溶接では、コンタクトチップの温度が上昇しコンタクトチップ内面が溶けてワイヤが融着しやすくなりアーク不安定になる。④コンタクトチップの締め付けが甘く、ゆるゆるのため、コンタクトチップが発熱し給電の妨げとなりアーク不安定になる。以上のような原因でトラブルが発生した場合は、新品のコンタクトチップに交換する事でだいたいは解消します。しかし、交換してもアーク不安定が治まらない場合は、原因追求を行う必要があります。以下に原因追求の確認方法と対策を手順を追って説明致します。3-1.コンタクトチップの確認コンタクトチップがワイヤ径に合致しているか否か。著しい損傷がないかなどを都度確認して下さい。コンタクトチップは、適度に交換することをお奨めします。尚、交換に際してはチップに緩みが生じないよう、ペンチで軽く締め付けて下さい。3-2.矯正ローラー・送給ローラーの確認矯正ローラー・送給ローラーを写真1に示します。矯正ローラーはワイヤの直進性を確保させるためのものです。写真1のように過度に矯正するとワイヤに抵抗が掛かり送給性が悪くなります。ワイヤがローラーから外れない程度の矯正力に調整して下さい。次に送給ローラーは、傷や磨耗がなく、しっかり固定されている事。ワイヤ径に合致したサイズのローラーを使用する事。過度の加圧力でワイヤに傷が付かない事などを確認しましょう。3-3.送給装置での確認コンジットライナーを写真2のように送給装置から外します。次にワイヤインチングでワイヤを送給させて下さい。写真3のようにワイヤ先端を手で軽く押さえ付けてもワイヤがスムースに出てくれば問題はありません(素手厳禁)。スムースに出ない場合、加圧ローラーの締め付け不足、送給ローラーの溝の著しい磨耗、汚れ、傷、サイズ違い、矯正ローラーの締め付け過ぎを確認しましょう。ワイヤがスムースに出るようになったらワイヤ表面の傷の有無も確認して下さい。ワイヤ表面に傷があるとワイヤ屑が発生しコンジットライナー内に堆積して新たな送給不良の原因にもなります。これまでの確認作業で問題が無ければ次の確認に進みます。3-4.コンジットチューブの確認加圧ハンドル送給ローラー矯正ローラー(過度の加圧状態)写真1コンジットチューブ写真2写真3トーチボディー写真4トーチ本体取り外してあったコンジットチューブを送給装置に取り付けた後、写真4のようにトーチボディーをトーチ本体から取り外します。この状態で写真5のようにワイヤを送給させながら再度手で軽く押さえます。その際スムースに送給しない場合は、コンジットライナー内の汚れや磨耗などによる傷みが考えられるので、コンジットライナーの清掃もしくは新品に交換する必要があります。以上のように送給系統を順に追って確認して行くと、どこが送給不良の原因となっているかが判明します。以上、手順を追って確認事項と対策を紹介しましたが、このような確認作業が溶接の品質に大きく影響しますので大変重要な事です。日頃からトーチ周りのメンテナンスを心掛けるようにしましょう。写真5(株)神戸製鋼所溶接カンパニー営業部カスタマーサポートセンター金子保10


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