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溶接レスキュー隊119番スプール巻きワイヤの送給トラブルについて炭酸ガスアーク溶接において、健全な溶接ビードを得るためには溶接ワイヤのスムーズな送給性が重要なのは言うまでもありません。しかしながら溶接材料の取扱い方、使い方が正常でない場合は様々なトラブルが発生します。そこで今回はスプールワイヤで身近に起こりやすい送給トラブルについて紹介致します。1.ワイヤ食い込みによるトラブル写真1フランジ持ちワイヤを持ち運ぶ際に写真1のようにスプールのフランジ部分を持つと、ワイヤの自重でフランジが変形し、フランジ幅が広がってしまいます。その結果、整列に巻かれてあるワイヤの並びに隙間が発生し、その隙間にワイヤが深く沈み込んで送給が停止する現象をワイヤ食い込みと呼びます。この現象は、特にスプールを誤って落とした場合や、フランジ部をぶつけるなどの衝撃により変形させてフランジの強度が低下する事で発生しやすくなります。過度の衝撃を与えた場合は、フランジ部に衝撃の痕跡として白化現象(写真2)が発生し、フランジ強度が著しく低下します。衝撃が激しい場合はスプール割れの原因にもなりますのでスプール巻きワイヤの取扱いには十分配慮する必要があります。白化痕写真22.ワイヤくぐらせによるトラブルワイヤくぐらせとは、ワイヤが交差して最終的に交差部分で行き詰ってしまい、送給停止に繋がる現象です。ワイヤ交差の原因は、ワイヤセッティング時にワイヤを押さえている手を誤って放してしまいワイヤをバラケさせ、そのバラケによる巻き乱れを直す際にワイヤ交差に気付かずワイヤをセッティングしてしまうために起こる現象です。製造工程のワイヤは自動巻取システムのため、この交差現象は製造段階ではありえない現象です。ワイヤセッティング時はワイヤ先端をしっかり持って離さないように気を付けましょう。もし誤って手を離した場合は、ワイヤの交差がないと確認出来る部分までワイヤを取り除いて下さい。現象が発生しやすくなります。送給装置は出来るだけ水平状態で使用するようにしましょう。特に1.2φ以下の細径ワイヤで20kg巻きスプールではワイヤ食い込みが発生しやすいので注意して下さい。尚、水平状態でもスプールがスムーズに回転する事を確認して下さい。(2)ワイヤ加圧状態についてワイヤの送給が不安定になると、作業者の方は加圧ローラーをどんどん強く締め込む傾向があるように見受けられます。加圧力は正常な状態なら、ある一定の加圧力で十分に安定して送給されます。過度な加圧は、ワイヤ表面に傷を付けたり、潰れによる変形で余計に送給性が悪くなります。特にフラックス入りワイヤは変形しやすいので注意して下さい。また、ワイヤの削り粉がコンジットチューブ内に堆積して送給の妨げにもなります。いずれにせよ加圧の締め過ぎはトラブルに直結しますので注意して下さい。以下にワイヤを正常な状態で保ちスムーズな送給が出来る加圧調整の手順を紹介します。①ワイヤをセットした状態でコンジットケーブルを真っ直ぐに伸ばす(あるいは緩やかな曲がりにする)。加圧を緩めた状態から調整を始める。インチングボタンを押しながら徐々に加圧を強くしていくとスプールが回転を始める。スプールが回転しだしたら片手で軽くスプールを押さえて見る。停止するようでは加圧が弱い。片手で軽く押さえてもスプールの回転が停止しない状態になった所で加圧を終了する。②③④⑤②③この手順で加圧した場合、目安の加圧表示より緩めの位置にセットされると思いますが、この状態で十分に安定した送給性が得られるはずです。さらにコンジットチューブの掃除や交換時期の目安となるチェック方法の手順も紹介します。①トーチを真っ直ぐにした状態でトーチスイッチを押し続け、ワイヤを出す。(素手は厳禁)出てくるワイヤを直角に折り曲げてみる。(写真4)折り曲げてもワイヤが押し出されてくればコンジット内は正常と思われます。3.その他のトラブル(1)送給装置の設置について送給装置の設置状態でもワイヤ送給トラブルの原因となる事があります。写真3のように送給装置が傾いていると、スプールのスムーズな回転の妨げとなり、ワイヤ送給不良やワイヤ食い込み写真4送給チェックこのチェック方法でワイヤが停止してしまう場合はコンジットライナー内部が汚れている目安となるので、交換あるいは掃除をするサインと思って下さい。以上、身近でよく起りやすい送給トラブルとその対策について紹介しましたが、参考になれば幸いです。いずれにせよ日常の設備点検が一番大事である事をお忘れなく。写真3送給装置傾き(株)神戸製鋼所溶接カンパニー営業部カスタマーサポートセンターじ地むら村健太郎10