溶接110番・溶接レスキュー隊119番


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『中・高炭素鋼及び特殊鋼の溶接』について3.中・高炭素鋼及び特殊鋼の性質と低温割れ(遅れ割れ)これらの鋼種は、機械部品として使用されることが多く、高強度(強靭性)や高硬度(耐摩耗性)が要求されます。一般の炭素鋼より炭素(C)を多く含有しており、焼入れを施すことによって、高強度(強靭性)や高硬度(耐摩耗性)を出します。焼入れとは、炭素鋼を900℃付近の状態から、水または油の中に投じて急冷する熱処理です。焼入れすると組織は硬いマルテンサイト組織になり、その硬さは含有する炭素量によって変化します。図1は、炭素量と焼入れ硬さの関係を示したもので、硬化の程度は炭素量が0.5~0.6%までは増加に伴い硬さが上がることを示しています。炭素含有量の高い鋼材を溶接施工する場合には、熱影響部が著しく硬化し低温割れが発生し易くなります。低温割れは、硬化した熱影響部が起点となって、溶接後48時間以内に発生するため、遅れ割れとも呼ばれています。低温割れはアーク溶接の際、溶接金属に吸収された水素が熱影響部に拡散し、応力集中部に集積します。ここを起点にして割れを発生させます。合金鋼炭素鋼0.200.400.600.801.00C(%)図1鋼の炭素量と焼入れ最高硬さの関係70605040302000焼入れて得らるべき最高硬さ(HRc)1.はじめに今回は、弊室にて最もお問合わせの多い、『中・高炭素鋼及び特殊鋼の溶接』についてお話し致します。中・高炭素鋼及び特殊鋼は、一般に溶接を考慮されている鋼材と違い、炭素量が0.3%~1.5%前後含まれており、焼入れ性・高強度(強靭性)・高硬度(耐摩耗性)などを得ることを主目的に成分設計がなされた鋼材です。したがって、溶接性についての配慮は殆ど払われておりません。そのため、溶接による急熱・急冷によって熱影響部が著しく硬化し、割れなどのトラブルが発生し易いため、一般に溶接が非常に難しいとされています。ここでは、やむを得ず溶接施工を実施する場合、特に注意しなければならない点について説明していきます。2.中・高炭素鋼と特殊鋼の種類と用途炭素鋼は炭素含有量により、低炭素鋼(0.3%以下)、中炭素鋼(0.3~0.6%)、高炭素鋼(0.6~2.0%)、鋳鉄(2.0~6.67%)に分類されています。一般に、鋼中の炭素含有量が多くなれば鋼は強く、硬くなりますが、脆くもなります。強度だけを増す目的であれば炭素を添加すれば良いのですが、他に特別な性能(耐熱性、耐食性、粘さなど)を与えるために、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などの合金元素を添加します。この鋼の総称を特殊鋼と呼んでいます。合金元素の含有量により、10%程度までの低合金特殊鋼と、ステンレス鋼などの高合金特殊鋼があります。ここでは、中・高炭素鋼および低合金特殊鋼(以下、特殊鋼とする。)を取り上げて行きますが、用途などにより数多くの種類があります。日本工業規格(JIS)では、機械構造用鋼・工具鋼・ばね鋼など、表1のような種類に分類されています。分類中炭素鋼高炭素鋼特殊鋼表1中・高炭素鋼および特殊鋼の種類鋼種①機械構造用炭素鋼②軽レール③普通レール④ばね鋼⑤炭素工具工⑥ニッケルクロム鋼⑦ニッケルクロムモリブデン鋼⑧クロム鋼⑨クロムモリブデン鋼⑩構造用高張力炭素鋼および低合金鋼鋳鋼品⑪合金工具鋼⑫高マンガン鋼種類の記号S××C××kgレール××kgレールSUP×SK×SNC×××SNCM×××SCr×××SCM×××SCC×、SCMn×、SCSiMn×SCMnCr×、SCMnM×SCCrM×、SCMnCrM×SCNCrM×SKS××、SKD××、SKT×SCMnH××JIS規格G4051E1103E1101G4801G4401G4102G4103G4104G4105主な用途各種機械構造用クレーンレールなど鉄道レールなどトーションバーなどやすり、ドリルなど各種機械構造用各種機械構造用各種機械構造用各種機械構造用G5111各種機械構造用G4404G5131切削工具、バイトなどジョークラッシャーなど溶接レスキュー隊119番10


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