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ティグ溶接における施工上の注意事項【前編】少ないです。また、母材の表面状態だけでなく、溶接材料(溶加棒)の表面に汚れなどの不純物が付着した場合も同様の現象が発生する可能性があるため、極端に汚れた皮手・軍手の使用を控えるほか、必要に応じて溶加棒表面の脱脂を実施してください。3-4.アーク長とトーチ操作についてティグ溶接は定電流特性(垂下特性ともいう)のため、基本的にはマグ・ミグ溶接のように電圧を設定する機能はありません。溶接中のタングステンと母材との距離(アーク長)に連動しており、アーク長が短いと電圧が低く、逆に長いと電圧は高くなります。【動画4】にて適正なアーク長について説明しており、アーク長が長すぎると溶込みが浅くなり凸形状のビードになりやすく、またシールドガスで十分に保護されないため、ビード表面の酸化やピットおよびブローホールなどの気孔欠陥が発生しやすくなります。逆にアーク長が短すぎると、タングステンが溶融金属に接触してタングステン巻込みなどの欠陥が発生します。動画2母材表面の状態によるアーク安定性の比較3-3.亜鉛めっき鋼板へのティグ溶接の適用について前述したように、ティグ溶接は母材の表面の不純物に敏感なため、亜鉛めっき鋼板の場合もアークが不安定になるほか、溶融した亜鉛や母材の溶融金属がタングステン電極の先端に付着して作業性が低下することや、ピットやブローホールをはじめとするさまざまな溶接欠陥が発生します。【動画3】に溶融亜鉛めっき鋼板にティグ溶接をした際のアーク現象を示しており、アーク不安定だけでなく溶接中の溶融亜鉛の影響で、タングステン電極の先端が消耗していることが確認できます。これまで解説したとおり、電極先端部の状況が悪化するとさまざまな溶接欠陥が発生するリスクが高まるので注意が必要です。動画4適正なアーク長について4.おわりにティグ溶接は、スパッタやスラグが発生せず美麗な外観形状が得られる優秀な溶接方法ですが、前処理や施工方法を誤ると大きな欠陥に繋がる旨を解説しました。今回の解説した注意事項を見直して、より良い施工に活かしていただければ幸いです。なお、次回の冬号では実践編として、施工面の動画による解説や、「べからず集」動画などを予定しておりますので、乞うご期待ください。動画3溶融亜鉛めっき鋼板にティグ溶接をした際のアーク現象コベルコ溶接テクノ株式会社CS推進部CSグループ皆川勝己2023Autumn20