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3.始端部(ビード継ぎ)の処理についてティグ溶接における始端部の代表的な欠陥に、融合不良が挙げられます。特にビード継ぎ部(アークを一旦切って、再スタートする継目部)では融合不良が発生しやすいため、その対策について解説します。【動画2】「始端部の融合不良対策」に、初層の裏波溶接施工時に一旦アークを切った後に再スタートをする際の施工方法で、ビード継ぎ部分を馴染ませ溶込み不足や融合不良などを防止する方法を示します。ビード継ぎをする際は、前のビード終端部からアークスタートをするのではなく、終端部より10〜20mm程度手前からアークを発生させ、前のビード終端部と馴染みやすいようにアークで予熱を加えながら運棒します。この際、溶加棒は入れずにノンフィラー溶接を行い、ビード継ぎの個所から溶加棒を加えると前のビード終端部との馴染みが良好となり、溶込み不足や融合不良などの発生を抑止することができます。動画2始端部の融合不良対策4.終端部の処理についてティグ溶接における終端部(クレータ部)の代表的な欠陥には、収縮孔(クレータ割れ)が挙げられます。【動画3】「クレータ処理の有無について」に、ビード終端部のクレータ処理の有無による収縮孔の発生状況の違いを示します。クレータ処理なしでは、アークを切ると溶融池が一瞬で急激に冷えてしまい、凝固による体積の減少と溶融池付近の引張応力により収縮孔(クレータ割れ)が発生します。いっぽう、クレータ処理ありでは、終端部にて本電流の150Aから数秒間かけてクレータ電流の50Aへ徐々に下がるので、急激な冷却と収縮を防止して収縮孔の発生を抑止することができます。動画3クレータ処理の有無についてなお、クレータ条件には「クレータ電流」の他に、クレータ電流に切り替わるまでの時間「ダウンスロープ」や、終端部の酸化・窒化を防ぐためにアーク停止後にシールドガスを吹き付ける時間「アフターフロー」などの設定機能もあります。クレータ条件は母材の種類、板厚、継手形状、溶接条件によって異なりますので都度調整してください。5.べからず集の検証これまでは、ティグ溶接の基本についてやや堅苦しく説明してきましたがここでは趣向を変え、普段やってはいけないとわかっているが実際にそれらの溶接をするとどうなるのか?について検証してみました。5-1.ソリッドワイヤでティグ溶接本来、炭素鋼ティグ溶接を施工する際は、神戸製鋼所製TG-S50での施工を推奨しております。例えば、炭酸ガスアーク溶接用のMG-50は溶接中に炭酸ガス中の酸素がシリコン(Si)・マンガン(Mn)と結びつき、スラグとして溶接金属から排出されるので溶接金属に歩留まる合金元素が欠乏しないよう、これらの元素は若干多く含まれております。このMG-50をAr100%のティグ溶接に用いると、シリコン(Si)やマンガン(Mn)が溶接金属中に多く歩留まるため、溶接金属の引張強さが必要以上に高くなり、じん性が劣化してJISの規格から外れることが想定されます。【動画4】では一般流通品のソリッドワイヤのなかでも比較的合金元素含有量の多い、MG-60(φ1.4)を溶加棒としてビードオンプレートで溶接してみました。問題なく溶接はできましたが、作業者の感覚では結果電極の先端がやや丸まりやすく、ビード止端部の馴染みが劣るように感じました。動画4MG-60(φ1.4)を溶加棒としてビードオンプレートで溶接5-2.フラックス入りワイヤでティグ溶接【動画5】では神戸製鋼所製フラックス入りワイヤのスタンダードDW-Z110(φ1.2)を溶加棒として、ビードオンプレートで溶接してみました。溶接開始直後は溶加棒もよく溶けてビードの馴染結果みも良好ですが、アーク近傍がフラックスの影響で赤く燃焼しているのが確認できます。その後、溶加棒の先端で丸くなった溶滴が溶融池に移行せず、溶接できていな2024Winter22