技術がいど2012-201501


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鈴木励一(株)神戸製鋼所溶接事業部門技術センター溶接開発部1.はじめに2.自動車鋼板の防錆処理自動車において一般消費者が最も目にする箇所はボ鉄は強度、じん性、加工性、コスト等のバランスに優ディ外観であり、その外板として用いられる鋼板には錆れた素材であるが、アルミや銅等非鉄あるいはプラスチ防止と意匠性を兼ねて消費者要望に合わせた塗装が施ック樹脂、セラミック、繊維といった非金属に比べて耐食されている。一方、目に付かない車体裏側、いわゆるシ性が劣るという大きな短所がある。この短所改善のためャシーや足回り部品と呼ばれる鋼部品には美しい意匠に、鉄にクロムやニッケルを含有させたいわゆるステン性は必要ないものの、その多くはやはり何らかの防錆レス鋼板のように耐食性を著しく改善させた合金鋼も普処理が施されている。及しているが、自動車分野ではコストバランスの点から、その理由は足回り部品には車体重量を支える重要な排気系部品を除けばほとんど採用されず、一般炭素鋼役割があるためである。錆の進行によって鋼板板厚がをベースに表面に防錆処理を施して用いられている。減肉すると最終的には車重を支えられなくなって破断し、自動車で基本的に用いられている防錆処理手段は[1]大きな事故を引き起こす可能性がある(図1)。従って、塗装である。一口に塗装といっても様々な手段があるが、防錆処理は非常に大きな技術課題であり続けている。自動車では前処理として化成処理を行って清浄化とリン特に近年は、融雪材としての塩の路上散布、自動車酸塩皮膜を生成させ、その上に電気的作用によって密の補償年数長期化、定期的な車検制度のない新興市場で強固な塗装を施す電着塗装が多く用いられている。本への販路拡大、燃費向上策のための車重軽減策として処理はアーク溶接が完了した最終部品形状にて施され高張力鋼かつ薄板採用等の要因によって、従来以上にる。足回り部品では意匠性としての色は必要ないため、防錆能力が重視されるようになっている。しかし、鋼板漆黒色である。母材に対していくら優れた防錆処理を行っても、最終的そしてもう一つの防錆処理手段は[2]亜鉛めっき鋼板にアーク溶接によって組み立てられた部材では、防錆処の採用である。鋼に亜鉛めっきを施すと不動態皮膜の理とはほぼ無関係に錆は溶接継手近傍から容易に発生形成によって錆の発生が抑えられる2)~7)。また、切断後するという問題が起きる。このようなボトルネックであるの鋼板端面のように亜鉛めっきが欠如している箇所に溶接継手部の錆防止の問題は防錆処理の黎明期から対しても、わずかな距離であれば犠牲防食と呼ばれる大きな問題として認識されてはいたが、これまで大きく作用が働き、錆発生が抑えられるという特徴がある。亜改善できる現実的な手段が存在しなかったため、クロー鉛めっき処理は製鉄所内の鋼板製造の段階で行われる。ズアップされてこなかった。今回、この問題を大きく改善一般的に、亜鉛めっき鋼板はコストアップが大きいため、できる現実的溶接技術の開発が進んできたので紹介し[1]塗装だけでは防錆性が不足している場合に付与してたい1)。適用されることが多い。破断年数経過錆発生年数経過図1錆進行に伴う破壊-1-技術レポート[vol.522012-7]塗装性・耐錆性改善溶接ワイヤMM-1S


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