技術がいど2012-201501


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-1-溶接割れ試験技術がいどVol.532013年1月号試験・調査報告1.はじめに><溶接という技術が登場した当時から溶接割れに悩まされ、溶接割れとの戦いが溶接技術を進歩させる大きな原動力ともなりました。鋼材、溶接材料、施工技術等の進歩によって、溶接割れの問題は少なくなりましたが、今日でも、やっかいな問題として残っています。溶接割れを防止するためには、材料や溶接施工条件等の適否を調べる必要があり、溶接割れ試験の出番となります。溶接割れ試験は、数十種類以上の方法が考案されていますが、本報では、そのうちよく利用されている溶接割れ試験方法について紹介致します。<2.溶接割れの種類とよく利用される割れ試験方法>図1に代表的な溶接割れの種類を示します。溶接割れは、溶接後しばらくして発生する低温割れ(水素による遅れ割れ)と300℃程度以上で発生する高温割れとに大別されます。高温割れの代表が凝固割れで、本報では凝固割れ=高温割れとして扱っています。溶接割れは、図1中に一例を示していますが、継手形状等によって様々な位置に発生します。従って、これらの溶接割れを試験で再現しようとすると、その試験方法も多種多様になってきます。それでは、どのような溶接割れ試験方法が活躍しているのでしょうか。(社)日本溶接協会(溶接棒部会調査第4分科会)では、平成元年度に、ファブリケーター、研究機関、大学、材料メーカー等180機関を対象にして溶接割れ試験の利用状況のアンケート調査を行い、69機関から回答を得ています1)。回答された試験方法の内、利用率が10%以上であった割れ試験方法を表1に示します。y形溶接割れ試験をはじめとして、規格化された割れ試験、それも低温割れを調べる試験がよく利用されていることが分かります。試験装置で外力を加える割れ試験、バレストレイン試験(6%)、TRC試験(3%)、インプラント試験(1%)等は、研究目的の使用と思われ、利用が限定的です。表1に示した溶接割れ試験の中から、低温割れを調べる上位3試験方法について、以下に説明します。低温割れ溶接割れ溶接金属のルート割れ①多層溶接金属の割れ止端部(トウ)割れ②ヒールクラック③ビード下割れ④ラメラテア、その他凝固割れ⑤②③①④高温割れ液化割れ⑤再熱割れ、その他図1代表的な溶接割れの種類表1よく利用されている溶接割れ試験方法試験方法y形溶接割れ試験方法窓形拘束溶接割れ試験すみ肉溶接継手試験T形溶接割れ試験方法U形溶接割れ試験方法C形ジグ拘束突合せ溶接割れ試験方法重ね継手溶接割れ試験方法H形拘束溶接割れ試験方法JIS規格Z3158-(NK規格Z3153Z3157Z3155Z3154Z3159)拘束自拘束自拘束自拘束自拘束自拘束治具自拘束自拘束対象低温割れ低温割れ低温割れ高温割れ低温割れ高温割れ低温割れ低温割れ積層単層多層単層単層単層単層単層多層利用率(%)8323191916141010


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