技術がいど2012-201501


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3.溶接部に対する要求性能(Ti+Nb)/(C+N)が用いられている。TiやNbはCrよりもCや前述のように、自動車排気系部品に用いられる鋼材Nと結合しやすいため、合金元素としてTiやNbを添加すには耐食性や、高温特性が厳しく要求されており、溶接ることにより耐粒界腐食性を大幅に向上することができ.現在の混合ガス溶接法での課題4料にはこれらに加え、安定生産に欠かすことのできない溶接作業性についても厳しい要求がある。材料においても同等の性能が要求されている。溶接材るためである。3.1低スパッタ・低スラグ性各溶接材料メーカーがNb,Tiを添加した溶接材料の開発を行い、今ではSUS430にNb添加を行ったものが主流溶接時に発生するスパッタやスラグといった異物は前となり、多くの溶接材料が耐食性については自動車メー述のようにエンジン部品の損傷をもたらす可能性があり、カーの要求を満足するものとなっている。しかし、低スパ厳しい規制がかけられている。その他、スパッタ除去作ッタ性や低スラグ性、耐溶落ち性等のいわゆる溶接作業業による生産性の低下、シールドノズル閉塞によるシー性についてはまだまだ改善の余地がある。GMA溶接でルド不良発生、ロボットや電気配線といった周辺機器ののスパッタの大部分は、ワイヤ先端の溶滴が溶融池に接寿命低下、外観劣化による商品価値の低下等をもたら触し、短絡することにより発生している。これらのスパッタす。さらに、ビード表面に生成するスラグ(酸化物)は絶縁物であるためTIGによる手直し時のアーク安定性の低下をもたらす。3.2耐ギャップ・狙いズレ性自動車の排気系部品は複雑な形状にプレス成型された部品を溶接ロボットにより高速溶接することにより生産される。このようなプレス品は、加工精度を極めて高くしなければギャップや狙いズレが生じてしまうため、溶接には高い耐ギャップ性や狙いズレ性が要求される。3.3耐溶落ち性、耐高温割れ性また、車重軽量化への流れから、排気系部品についても鋼板の薄板化が進んでおり、板厚1mm程度と極めて薄い鋼板が使用されている。このため、溶融金属が開先の反対側まで完全に抜けてしまい、穴が開いてしまう溶落ちが発生しやすいため、耐溶落ち性が高くなければならない。また、薄板溶接時に発生する割れの多くは溶融金属が抜けてしまった際に、溶融部の最終凝固部が会合することにより生じる、いわゆる高温割れである。このため、耐溶落ち性は耐高温割れ性にも大きな影響を与える。3.4耐食性、高温特性自動車の排気系部品については加熱、冷却が繰り返されるため溶接部についても母材と同様に高い高温特性、熱疲労特性が要求される。また、溶接部が高温に加熱された場合、粒界近傍にCr炭化物が析出し、周囲にCr欠乏層が生成する、いわゆる鋭敏化が問題となる。この鋭敏化の感受性を表す式として、自動車業界ではを抑制するためにArに数%~数10%のO2やCO2を添加したガスを用いる混合ガス溶接が行われている。混合ガスを用いることにより、ワイヤ先端の溶滴を包み込むようにアークが発生し、溶滴の粗大化を抑制することができ、溶滴移行が安定化する。これにより短絡を防止することができ、スパッタの発生量は減少する。しかし、混合ガスを用いるだけでは200A以下のような低電流域においてアークの広がりが不十分となり、粗大な溶滴が形成され、安定な溶滴移行を行うことができない。そこで低電流域においては溶接電流波形の制御により溶滴移行を安定化させるパルス溶接が用いられている。しかし、ロボットによる高速溶接時には、ビードの追従性を確保するためにアーク長を短く、言い換えれば低電圧条件に保つ必要がある。当条件ではアークの広がりが不足するため、パルス溶接を用いても溶滴の粗大化、短絡、スパッタ発生を抑制することができない。つまり、低電圧域においてもスパッタ発生量を低減するためには混合ガスよりもさらに広いアークを発生させる必要がある。溶接時のアークの広がりはシールドガス中のCO2やO2の含有量(分圧)に大きく左右される。シールドガス中に含まれるCO2やO2は、アーク中で高温に加熱されることにより解離反応を起こす。この解離反応によりエネルギーが失われ、アークは緊縮してしまう。よってアークの緊縮を防止するためにはO2やCO2をシールドガス中に含まない、純Ar-MIG溶接の適用が有用であり、純Ar-MIG溶接を行うことにより低電圧域においてもスパッタの発生を防止することができると考えられる。しかし、純Ar雰囲気でソリッドワイヤの溶接を行った場合、溶滴表面全体がアークから加熱されることによりワイヤ全断面溶融が生じ、細長い液柱が発生するストリーミング移技術レポート[vol.532013-9]-2-


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