技術がいど2012-201501


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いことが示唆される。また、すみ肉溶接における溶接作業性に優れる、フェライト系ステンレス鋼用溶MM-430Nbのビード形状は前の試験結果でも接ワイヤについて紹介してきた。純Ar-MIGという従来溶明らかなように、ビード幅が広く、溶込みが浅い。つまり接不可能と言われた溶接をFCWと組合せることにより可H/Wが小さい形状になるため、形状係数の点でも従来能とし、不良品率の低減、生産効率の向上に貢献するこワイヤに比べて耐割れ性は同等以上と考えられる。とができる。また、今後必要とされるであろう、SUS444系ワイヤの開発も着実に行っていきたい。.SUS444系溶接材料について6前述のように自動車排気系部品用溶接材料はNbやTi参考文献を添加したSUS430J1L系を開発することにより、耐食性は大幅に向上した。しかし、排出ガスが高温になってい1)井上,菊池:新日鉄技報第378号P552)山下:神戸製鋼技報VOL47No2P58く傾向のなかで、鋼板がSUS430J1LからSUS444へと移3)松田,牛尾,才川,丸山,荒谷;溶接学会誌,52(1983)行するのに伴い、溶接材料についても優れた高温特性4)安藤,長谷川;溶接アーク現象(産報出版)が要求されることは間違いない。現在、当社ではより高5)中村ら:溶接学会全国大会講演概要(76),168-169温特性の優れる表4のようなSUS444系MX-MIGプロセス6)河西,鈴木ら:溶接学会第197回溶接冶金研究委員会シリーズワイヤを開発中であるので、この場を借りて紹7)Kasai,Umehara,Suzuki:IIW2009Doc.212-1149-09,介させて頂く。SUS444はSUS430にMoを添加しており、XII-1970-09,IV984-09SUS430よりも高い高温強度を有しており、耐食性も8)鈴木ら:薄鋼板用疲労強度向上純Ar・FCWプロセスSUS304と同等といわれている。開発ワイヤについてもMX-MIG,溶接技術,3(2010),産報出版,P74Mo添加の効果により、表5のような良好な高温強度を得9)河西,鈴木:溶接学会全国大会概要集,90(2012),ることができる。この開発ワイヤを用い、表6下段のP88SUS444鋼板を溶接した場合、溶接金属化学組成は表610)鈴木:自動車部品の塗装性、耐錆性改善のためのア上段のようになり、表7のように800℃、900℃での継手ーク溶接技術,溶接技術,6(2012),産報出版,P52た。このような、最終凝固域が会合しやすい状態においっていることが分かる。ても、全条件にて割れは発生しておらず、薄板溶接においてはNbの有無は高温割れに大きな影響を及ぼさな7.おわりに技術レポート[vol.532013-9]引張り試験結果が430系よりも高強度かつ母材破断とな表4開発SUS444系ワイヤの全溶着金属の化学成分(%)CSiMnCr0.0230.070.1916.23NbTiMo0.380.151.63(試験方法;JISZ3323準拠板厚20mm、入熱10.5kJ/cm、パス間温度150℃、積層6層12パス)表5開発SUS444系ワイヤの全溶着金属の高温強度800℃900℃0.2%耐力引張強度49MPa72MPa0.2%耐力26MPa引張強度40MPa表6開発SUS444系ワイヤを用いた溶接金属および母材の化学成分溶接金属母材(SUS444)化学成分(%)C0.0180.008Si0.130.28Mn0.180.22Cr16.5717.84Nb0.360.38Ti0.120.01N0.0180.001Mo1.791.75表7開発SUS444系ワイヤを用いた溶接継手の高温強度800℃900℃引張強度58MPa破断位置母材引張強度30MPa破断位置母材-6-


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