技術がいど2012-201501


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ほっと一息古都の手仕事を訪ねる~メイド・イン・キョウトの現在第4回絞り染めを、庶民の手の届く場所へ――たばた絞り古くから、人々の衣装を彩り続けてきた「絞り染め」。分業と専門化によって磨かれる、職人たちの技特に日本の絞り染めは高度な技術を有しており、国田端さんが父の跡を継いで絞りの修業を始めたの際的にも「Shibori」の表記が通用するほどだ。は、25歳の頃だった。前職は、音響照明のエンジニ中でも、正絹の生地を糸で括り、子鹿の斑点に似ア。手仕事とは全く縁のない業界から、職人の世界た紋様を描く絹の「京鹿の子絞り」は、伝統工芸品にに飛び込んだ。も指定されている高級品である。非常に手間がかか「この便利な現代の世の中で、親父は機械やコンる分、豪奢に仕上がる紋様で、江戸時代には「総鹿ピューターの力を一切借りず、自分の手だけで、誰の子」が贅沢品として規制されることもあったほどだにも真似のできないものを作っている。その親父のという。仕事の凄みを、自分でも味わってみたくなって」と、田端さんは言う。かつては興隆を誇った日本の絞りだが、現代の絞り染め業界では、若手職人の不在が叫ばれて久しい。田端さんが受け継いだ技法のひとつに「ぼうし絞そんな中、京鹿の子絞り界随一の最年少職人・田端り」と呼ばれるものがある。その手順は、たとえばこう和樹さん(33歳)は、今もひとり、奮戦を続けている。だ。総絞りの帯揚げ。紋様の細かい粒のひとつひとつが、素材のちりめん生地には、「日本の絹」の表示が。職人の手によって括られたもの。国内で織られた最高品質の正絹だ。染める際は、括った糸の下だけが防染される。生地をほんの少しだけ爪先でつまみ、その根元を括る。糸をほどくと、その部分だけが白く残って紋様を成す。この作業のため、職人の手は爪を長く伸ばしている。


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