技術がいど2012-201501


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-1-変態点測定技術がいどVol.542014年5月号試験・調査報告1.はじめに><鉄は、加熱や冷却することによって結晶構造が変化して、膨張したり収縮したりします。同じ物質がある温度を境に結晶構造を変えることを相変態といい、この相変態を利用して鉄に様々な性質を与えることを熱処理といいます。また、相変態する温度のことを変態点といいます。図1に純鉄を室温から加熱したときの温度と伸びの関係を示します。純鉄は、αフェライト相(体心立方格子:BodyCenteredCubic,B.C.C.)、オーステナイト相(面心立方格子:FaceCenteredCubic,F.C.C.)、δフェライト相(B.C.C.)の3つの相をもっています。911℃以下ではαフェライト、911~1392℃はオーステナイト(γ)、1392~1536℃はδフェライト、1536℃以上では、液体の純鉄になります。状態図では、単にα,γ,δの記号で表すことが多いようです。α⇔γ、γ⇔δの変化が相変態であり、この時の温度が変態点です。F.C.C.構造は、B.C.C.構造よりも密度が大きく、膨張の程度を測定することによって、変態点を知ることができます。鉄鋼材料は、Fe-C合金を基本としています。Fe-C合金になりますと、α+γの2相領域を生じたり、C含有量で相変態温度が変化したりします。図2は、Fe-C二元系状態図、および0.45%Cの時の標準組織を模式的に示しています。ここで出てくるパーライトは、αとセメンタイト(Fe3C)が細かく層状に並んだ共析組織です。この図によって、α+γの2相領域ができること、変態点がC量によって変化することが分かります。α⇔(α+γ)の変態をA1変態点、(α+γ)⇔γの変態をA3変態点と呼んでいます。さらに加熱時と冷却時を区別する場合には、加熱時はAc1,Ac3変態点と、冷却時はAr1,Ar3変態点と呼びます。また、図2の状態図からγはCを多く固溶し、αはほとんど固溶しないことが読みとれます。鉄鋼が、図2に示したような標準組織しか得られないものとすると、鉄鋼の用途は非常に限定されます。鉄鋼をγの状態から急冷すると、どうなるでしょうか。γ→αの変態は、一瞬のうちに終わるのではなく、時間を要します。従って、急冷するとαにはならず(といってγの状態で頑張れず)、マルテンサイトやベイナイトと呼ばれる図2の状態図では示されていない別の硬い組織を作ります。詳細は割愛しますが、γとαのC固溶度の差異が、硬くなることに寄与しています。図1純鉄の変態点と結晶構造図20.45%C炭素鋼の除冷中の顕微鏡組織の変化(技術がいど1982年1月号から引用)


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