技術がいど2012-201501


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すくい取った染料を、ひと息に紙の全面に擦り込んで彩色する。天井には、温風の吹き出すダクトが等間隔で並んでおり、染料をすばやく乾燥させるために使われる。1色が刷り上がったところ。デザインのモチーフは落花生の殻。染料の乾いた紙の上に別の型枠を重ね、2色目を加える。仕上がった柄は聚落社オリジナルの柄【ラッカセイ】。の先輩・後輩といえども、お互いに、技術の核心に迫を広げていけるはずだ。そう、この手捺染の技術を使る部分はブラックボックスの中。だが、そんな緊張感って現代のニーズに応えられるものを作りさえすれば、こそが、職人個人の技術を高める要因でもあった。今よりも大きな市場が開けるかもしれない――。「突然チャンスが巡ってきても、いつでも80点以上それまで、先輩に仕事を教わろうなどと微塵も考えの仕事ができるように日頃から油断しないで準備をたことはなかった。矢野さんがどうしても知りたかっすること。一度でも大きな失敗をすれば、次のチャンたことは、どんなに腕のいい職人でも知らないことだスは二度とないと心しておくほうがいい。気を抜けなったのだ。「職人には、お客様の前に直接立つ機会い環境でしたが、おかげで技術を自分のものにできが全くない。でも本当は、自分の染めた紙が、先輩たという面もある。厳しい仕事場で鍛えてもらったことや上司からではなくてお客様からどう評価されるのを、今では感謝しています」かを、猛烈に知りたかった」。ただ、職人たちがいかに仕事に励み技術を磨いたそして、2010年7月。矢野さんは、紙と紙製品を扱う会ところで、友禅紙自体の需要は急激に伸びるような社「聚落社」を立ち上げた。以来、営業から商品企画、性質のものではない。矢野さんにとっては、それが少製作、そして接客販売……、それら膨大な仕事の量を、しもどかしくもあった。手擦染の技術は、決して古臭矢野さんは全て、ほぼひとりきりでこなしている。いものではない。まだまだこの技術を使って可能性


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