技術がいど2012-201501


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ほっと一息古都の手仕事を訪ねる~メイド・イン・キョウトの現在第6回人とつながり、京菓子の可能性を広げたい――和菓子店青洋「京菓子」は、数ある和菓子の種類の中でも、古来色彩を味わい、舌で味や口に含んだときの感触を、より朝廷の儀式に使われてきた伝統ある菓子のこと、鼻では素材の香りを、そして耳で菓銘(菓子の名前)または茶席の菓子のことを指す特別な名称だ。茶道を聞いて味わう、というものだ。特に、京菓子にとって家元の多くが代々京都を活動拠点としていたこともの菓銘は非常に重要なもので、“耳で食べる”というあって、京都独特の趣きを持つ「京菓子」の文化は、表現もあるくらいだとか。見た目や味だけではなく、茶の湯の文化の発展とともに磨かれてきた。食べる人が、一層イメージを膨らませながら菓子を口にするような、美しい銘。それは、いかにも日本人京都で最も古い花街と呼ばれる上七軒で、明治41らしい、繊細な感性が生かされるところでもある。年に創業された老舗和菓子店「有識菓子御調進所老松(おいまつ)」。この老松から、2012年春、一人の「和菓子をつくるということは、お客様に、和菓子が菓子職人が飛び出した。表現する季節をお知らせするということでもあります。「和菓子店青洋」。ここは、老松で10年以上の修ただ、現代では京菓子の歳時記自体になじみの薄業を積んだ青山洋子さんが、たった一人で切り盛りい方もおられるので、和菓子の伝統的な意匠はもちする小さな和菓子店である。ろんですが、それに加えて、現代の生活スタイルに合うよう、私自身の切り口も交えながら提案していけ「月に3日間」の和菓子店ればと思っています」。青洋の営業日は、ひと月にわずか3日間。期間中は、季節感豊かな上生菓子が約6種類並ぶほか、干菓子たとえば青洋では、2014年6月に開幕したサッカーや羊羹などバラエティに富んだ菓子が店頭に揃っておFIFAワールドカップブラジル大会にちなみ、サムラ客様を出迎える。「月に3日」のチャンスを目指して、わイブルーのユニフォームをモチーフにした「青衣(あざわざ遠方から訪れるお客様も少なくないという。おごろも)」を発売した。4年に1度の好機は、まさに京菓子は「五感で味わう」とも言われる。目で姿と「現代人ならではの季節感」。外郎(ういろう)製の鮮「和菓子店青洋」の外観。こぢんまりとした街の和菓子店、という風情である。のれんの横には、和菓子へのこだわりの一端を感じさせる店主直筆の文言が。


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