技術がいど2012-201501


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新しい菓子を作る際は試作からの地道なスタート「自分の作るものを受け取って下さる相手と、密にだ。コミュニケーションを取りながらものづくりをしたい」。「もともと、オーダーメイドの受注生産だけで営業そんな青洋のこだわりは、青山さんが幼い頃から、するつもりだったので、店舗のオープン日が少なくて、ゆっくりと育まれて来たものなのだろう。足を運んで下さるお客様には申し訳なく思っています。ただ、自分ひとりきりで切り盛りしている分、丁寧高校卒業後、青山さんは美術系の専攻で大学に進に仕事をしようとするとこれが精一杯という部分もあんだものの「自己表現のために美術作品をつくるというって、難しいところですね」ことを、あまり心から楽しめなかった」という。それでは、他の分野に、自分が楽しんでものづくりに取り組めるジ「一席一菓」を胸に刻んだ修業時代ャンルはないものか……、思案の末に青山さんは、大いそがしくても人手は増やさず、自分自身の眼が学卒業後一年を経て、製菓の専門学校に入学する。全方位に行き届く状態にしていたい。大量生産よりも、のちに10年間の濃密な修行時代を過ごすことになるひとつひとつの菓子の質を保つことを重視したい…和菓子店「老松」の四代目当主である太田達氏に出会…。青洋の営業形態からは、青山さんの真摯なものったのも、製菓学校在学時のことだった。づくりへの姿勢がうかがえる。「京菓子は、基本的にオーダーメイドの世界。作り手子どもの頃からお菓子作りが好きだった。自分でとそれを受け取る相手がいて、お互いのやり取りを通食べるために作るというよりは、家族の誕生日に、友じて、今この空間にしか存在し得ないお菓子ができ上達の記念日に向けた贈りものを作ることが多かった。がる。……太田が『一席一菓』という言葉について語る誰かのことを考えながらお菓子を作ることが、この上のを聞いたときは、まさに、私の探していたものはこれなく楽しかったそうだ。だ!という気持ちになりました」青洋の「炊き場」は、ひとり立つのがやっとの小さなスペース。濃し器の数々。目の細かいものから粗いものまで、しかしここから、無数の菓子が生まれていく。また網目部分の素材など、さまざまなバリエーションがあるそう。きんとんをそぼろ状に漉し出す道具「きんとん通し」。竹製の粗い編み目は、ステンレスの道具では出せない、柔らかい質感を生むそうだ。青山さんを講師に迎えた、大学での講義の様子。各種学校での講演・実習指導の機会も多いそうだ。


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