技術がいど2012-201501


>> P.199

上用まんじゅう製のオーダーメイド、上用まんじゅう製。他にも、卵や小麦粉にアレルギーのあるお子さん向けのバースデー用途などを手掛けることもあるそう。記念日のためのオーダーメイドを、やさしい色合いの羊羹で。羊羹に関しては、炊き場で長く修行された青山さんの深い知見がものをいう。専門学校を卒業したのち、青山さんは強い希望で老の職人人生における宝物。老松に出会ったからこそ、松への入社を果たす。まずは店舗での販売の仕事か今があると思っています。感謝してもしきれません」らスタートし、念願の製造部門に異動を果たしたのは、入社後5年も経ってからのことだった。和菓子を通じて人とつながる“場づくり”をさらに、製造部門での最初の1年間も、ほぼ下働きにオーダーメイドの和菓子と言えば、茶席の菓子が代終始した。ところが翌年のある時、製造部門の中の「炊表格だ。どのようなテーマの茶会かをたずね、茶席のき場」というポジションが空き、青山さんがその後を引き道具組みを拝見したうえで、席に見合った菓子を提案継ぐことになった。炊き場とは、あんこを「炊く」、羊羹をするのが菓子職人の仕事の真髄ともいえる。「炊く」、という仕事をたった一人で切り盛りする役割で、店全体の味を決定づける要職といっても過言ではな「今年の7月、あるお茶会のために『ひと雨すぎぬ』とい。いう銘の菓子を誂えました。水の紋様が付いた菓子器を水面に見立て、水面に映る梅雨明けの夏空を表現し女性が炊き場に行くのは、老松では前例のないことたものです」だった。体力、腕力も人並み以上に必要なきつい力仕事だ。しかし、それは青山さんにようやく巡ってきた大土台部分の餅は、桜餅などにも使われる道明寺餅。きなチャンスでもあった。各々、白とブルーに染め分けた生地を合わせてあんこを包むと、2色の境界線に美しいグラデーションがかか和菓子の製作においては、洋菓子ほど特別な道具をる。蒸した餅を天日干しにしてサラサラにした「氷餅」と使うことも少なく、職人の手の感覚と技術に頼るところいう素材を付けて、器や手につかないように仕上げた。が大きい。餡子の上がり具合や生地の柔らかさを判断するのも、また菓子の仕上げに細かい細工を施すのも、菓子の表現の要として「空模様を映す」のは、この土すべて職人の「手」。計量や配合には一応の基準があ台の上に乗る錦玉だ。砂糖と水と寒天で作った無色透るものの、気候や湿度を加味した日々の微調整は欠か明の原液を容器に流し入れ、固まらないうちに、ブルー、せない。まさに「塩梅(あんばい)」の世界なのだ。緑、ピンク、黄色、オレンジの5色に着色した錦玉を、絵を描くようにしてランダムに垂らしていく。すべて青山さ「だからこそ、職人としていかに質の高い経験を積めん自身による手作業のため、160個作製したうちのどれるかということが技を磨く要になります。老松で10年間、として、同じ模様は存在しない。中でも炊き場で3年間勉強させていただいた経験は、私「大変こだわりのあるご亭主で、こんな素晴らしいお


<< | < | > | >>