技術がいど2012-201501


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-1-破損調査技術がいどVol.552015年1月号試験・調査報告1.はじめに><大型構造物から家電製品、日用品まで、あらゆるものは、想定された使用方法で、ある期間(寿命)、その機能が損なわれないように設計されています。設計に反して寿命内に機能の一部やすべてが損なわれることを破損、損傷等と呼んでいます。時として、人命に関わること、大事故につながる破損もあります。破損事故を繰り返さないためには、破損事故の原因究明の調査を行い、再発防止対策を立てて実施することが必要です。破損原因は、①疲労破壊に代表される応力によるもの、②電気化学的な腐食によるもの、③応力と腐食が組合されたもの、等が代表的です。前記①や③の応力による破損事故では、壊れて生じた破断面の破面解析(フラフトグラフィ)を行うことで事故原因の重要な証拠を得ることができます。ただし、破面解析だけでは、原因を究明できるものではなく、破損した材料の品質、使用条件等、いろいろな角度からの検討が必要です。では、当社で実施している破損調査について、ボルトの破損調査方法を一例として紹介しましょう。なお、このボルトは試験的に疲労破壊させたものを用いています。<2.破損調査に必要な情報>破損調査においては、破損した物質の材質、使用環境の情報が重要となります。これらの情報は、破損原因を判定する重要な手がかりとなります。例えば、材質が不明な場合は、必要に応じて材質分析を行います。技術がいど試験・調査報告2010年1月号にて紹介しているPMI検査方法を用いることで、大まかな材質(化学成分)を確認することができます。さらに、破損原因として材料の品質が疑われる場合は、詳細な化学分析調査や、硬さ、引張、衝撃等の試験を実施します。力のかかり方、使用温度、使用状況、腐食環境等の情報も、調査の上で不可欠です。正確な情報が多いほど、より短期間で真の原因へたどり着くことができます。<3.外観観察>破損調査の一連の流れを紹介して行きましょう。まず、外観観察では、破損の位置や状況を確認します。形状的に、段差やくびれは、応力集中部となるため、破損の起点となりやすい位置です。また、溶接構造物での破損の場合、溶接部は形状や材料の特性が変化する位置なので、破損の起点となりやすいです。その他、変形・欠陥等の形態観察、腐食や異物の付着状況等を確認します。ボルトの破損例を写真1に示します。破損部ボルトの材質は炭素鋼鋼材で、亜鉛めっきを施しています。写真1ボルト破損品ボルトは、形状的に応力が集中するねじ谷底付近で破損しています(図1参照)。切り込み破面破面強制的に引き裂く図1試験体の外観観察と破面現出破損の位置・変形・欠陥・腐食状況・異物等破損・割れ・


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