技術がいど2012-201501


>> P.219

技術がいどVol.552015年1月号<6.SEM破面観察>-3-走査電子顕微鏡(scanningelectronmicroscope:SEM)の汎用化によって、破面のミクロ観察が容易に行えるようになりました。SEMを用いることで、低倍率(約10倍)から高倍率(数万倍)の破面形態を観察できることから、マクロ破面観察では得られない破面のミクロ形態を知ることができます。SEM破面観察でミクロ形態の観察を行うことで、①疲労破壊、②応力腐食割れ、③脆性破壊、④延性破壊、⑤水素脆化割れ、⑥溶接低温割れ、⑦溶接高温割れ、等の破壊形態の分類および、割れの伝播方向を推測することが可能です。破壊形態については、技術がいど試験・調査報告2005年2月~12月号で一部紹介しています。また、割れの起点に欠陥や異物が認められた場合は、SEMに付属されているEDS分析装置を用いることで、その箇所の定性・半定量分析をすることもできます。ボルト破面のSEM観察例を写真4に示します。ボルト破面の平たんな箇所を拡大観察すると、ストライエーション・パターンが認められます。ストライエーション・パターンは、疲労破面に観察されるミクロ的な筋模様です。割れの伝播と垂直方向に筋模様が形成されることから、割れの伝播方向を判断できます(写真4の矢印方向)。割れの伝播方向起点側写真3と同じボルト破面写真4ボルト破面SEM観察結果(ストライエーション・パターン)<7.断面組織観察>断面観察も破損原因を特定するのに有効な観察手段です。破損部から断面試験片を採取し、その観察結果から破損の起点の位置や割れの伝播方向を確認することができます。また、溶接構造物の場合は、溶接が適切に行われていたかどうかや組織の健全性等も観察することができます。必要に応じて、断面試験片を用いて、破断部付近や、溶接部等のビッカース硬さ試験を行い、材質の異常の有無について調査します。ボルトの断面観察例について説明します。まず、ボルトの起点側を境にして半割し、樹脂包埋します(図4)。その後、鏡面研磨、エッチング処理を施した試験片(写真5)を光学顕微鏡で観察します。観察結果を写真6に示します。断面観察方向強制破面(延性破壊)疲労破面起点側図4切断・観察位置(写真3と同じ)写真5ボルト破断部断面観察用試験片


<< | < | > | >>