技術がいど2012-201501


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技術がいどVol.552015年1月号-4-写真6-3を見ると、ボルトの割れ起点は、ねじ谷底であり、破面の1段下のねじ谷底にも小さな割れが確認できます。応力集中部であるねじ谷底に疲労亀裂が複数発生し、そのうち1箇所が進展したことが分かります。また、起点付近の疲労破面部は平たんであり、強制破面部(延性破壊)は凹凸が多くなっています。それぞれの部位を拡大観察すると、写真6-1に示す疲労破面部の組織には変形がほとんど見られませんが、写真6-2の強制破面部(延性破壊)には流れるように塑性変形した組織が見られます。組織的には、低炭素鋼に通常見られるフェライト・パーライト組織であり、材質情報に合った組織を示しています。変形組織写真6-1強制破面付近写真6-2疲労破面付近拡大拡大強制破面疲労破面部部割れの起点破面小さな割れ写真6-3破断部全体写真6ボルト破断部断面組織観察結果<8.おわりに>3~7項に示した結果、あるいは必要に応じてそれ以外の試験を行った結果を総合して破損原因を特定し、結果を報告書にまとめます。破損トラブルの再発防止には、原因特定が不可欠であり、調査結果と使用状況等を考慮して総合的に対策を立てる必要があります。当社の破損調査を通じて、破損原因推定の一助として頂けましたら幸いです。<参考文献>小林英男著:破壊事故-失敗知識の活用,共立出版株式会社日本材料科学会フラクトグラフィ部門委員会編:フラクトグラフィ-破面と破壊情報解析,丸善株式会社神鋼溶接サービス(株)技術調査部技術室畑中千鶴


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