知恵袋コーナー

ビード蛇行

「ビード蛇行」とは溶接線方向に沿ってビードの中心が左右にふらつく現象で、溶接ビード形状不良の一種である。「ビード蛇行」の中には、健全な継手性能が得られるという観点で、許容できる水準のものもあれば、アンダカット・融合不良・スラグ巻込み等の溶接欠陥を誘発し、溶接継手品質として許容できないものもある。

「ビード蛇行」のほとんどはガスシールドアーク溶接で発生する現象であり、特に、パック入りワイヤで多く発生する。また、溶接士がトーチを握る半自動溶接では、アーク発生箇所を見ながら運棒を調整できるため「ビード蛇行」を未然に防止することが可能である。しかし、ロボットや自動機による溶接施工では、運棒によるワイヤ先端狙い位置の微調整ができず、溶接後に初めて「ビード蛇行」による欠陥を認識するため、手直し等に多大なコストが掛かってしまうという問題に至る場合がある。

「ビード蛇行」の主因は、ワイヤ先端の狙い位置バラつき(以下、先端狙い位置バラつきと呼称する)である。ワイヤ先端の狙い位置に不規則な座標ずれが生じると同時に、開先内のアーク指向性も変化し、顕著な「ビード蛇行」に至ることが多い。

同じ送給経路でもスプール巻ワイヤに比べ、パック入りワイヤで先端狙い位置バラつきは発生しやすい。それは、次のことに起因している。スプール巻ワイヤは一定方向に一定曲率で巻かれており、捩れ方向のワイヤ癖は付与されていない。しかし、パック入りワイヤは、積載効率を上げるため、ワイヤの積層方向と繰出方向が垂直の状態であり、線輪1輪に所定の捩れを付与された状態でパック内に収納されている。先端狙い位置バラつきの観点で、曲り方向だけでなく捩れ方向にも力が加えられていることが、スプール巻と比べたパック入りワイヤの最大の特徴的因子である。

また、使用方法においても先端狙い位置バラつきを誘発させる因子がある。それは、ワイヤ送給経路の三次元的な曲りや捩れである。ワイヤ送給経路の曲率半径が極端に小さい箇所を通過するワイヤは、送給抵抗が増大する問題も然ることながら、ワイヤ長手方向に連続的な塑性変形が付与され先端狙い位置バラつきが誘発される。一定方向に一定曲率のワイヤ癖を有するスプール巻ワイヤでは、ワイヤ長手方向に連続的な塑性変形を受けても、先端狙い位置バラつきが増長されることはない。しかし、捩れ方向にもワイヤ癖を有するパック入りワイヤでは、ワイヤ長手方向に連続的な塑性変形を受ける方向が定まらないため、先端狙い位置バラつきが増長される。

先端狙い位置バラつきを抑制し「ビード蛇行」を改善するためには、以下の2点が使用方法面で有効である。一つは、適正なワイヤ矯正器の使用である。もう一つは、ワイヤ送給経路の過度な屈曲を軽減することである。なお、ワイヤ矯正器は、曲り方向のワイヤ癖を取り除くための治具であり、捩れ方向のワイヤ癖を取り除くための治具ではないことに注意が必要である。また、ワイヤ矯正器を設置した後の送給経路で、新たに別の過度な屈曲があった場合、ワイヤ矯正効果が低下するので配慮が必要である。

ビード蛇行改善の一例
(株)神戸製鋼所 溶接事業部門 技術センター溶接開発部 木梨 光

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