世界につながる一冊を
ーKOBELCO書房ー

Vol.1新時代リモートワークのためのTIPS

コロナ禍元年を思い返せば、急な在宅要請はまさに多くの人にとって青天の霹靂であり、降ってわいたような困った事態に過ぎなかった。一方で、コロナ禍は、多様なワークスタイルが模索される好機になったともいえる。今の私たちに求められるのは、ポスト・コロナの新時代のために、より生産的、効率的で快適な勤務環境を作っていくことだ。

そこで今回は、リモートワークにおけるコミュニケーションや、自宅で長時間過ごす際のメンタルケアについて、TIPS=ヒントやアイデアを与えてくれる最新刊をご紹介したい。

頭の中のアイデアを、描いて伝えるテクニック

『はじめてのグラフィックレコーディング
考えを図にする、会議を絵にする。』

久保田麻美/著(翔泳社/2020/8/26)
『はじめてのグラフィックレコーディング考えを図にする、会議を絵にする。』

「グラフィックレコーディング」とは、会議などの議論をリアルタイムに可視化する手法のことだ。頭の中にしか存在しないアイデアを人に伝える有効な手段として、あるいは会議で「伝わらない」という悩みを解決する方法のひとつとして、大いに注目されている。

本書は、ビジュアルシンキングの基本から、伝わる図や絵の描き方、ことばの書き方、話の聞き方、ツール活用法など、グラフィックレコーディングに必要な知識とスキルが学べる実践的ワークブック。
ぜひ、本書を片手に、実際に手を動かしてみよう。

人間が知覚情報として受けとる情報のうち、視覚からの情報は8割程度を占めるとされる。ところが、人と人とがコミュニケーションを取ろうとするとき、真っ先に使われる道具は「話しことば」による聴覚情報だ。


それに対して、本書の筆者は描いて伝えることを「ビジュアル言語(visual language)」と表現している。すなわち「ことば」はコミュニケーション言語のひとつに過ぎず、「文字と絵と図=ビジュアル」を、もうひとつのコミュニケーション言語として位置付けるのである。しかも、ビジュアル言語は世界共通語だ。ビジュアル言語は、知識や言語の壁も越えて、あらゆる人と考えを伝えあう共通言語になれる。


頭の中を可視化する=ビジュアルシンキングがもたらす効果として、本書で挙げられているのは、まず「思考力が上がる」ということだ。描くという過程そのものが、自身の思考を整理して考えを深め、全体を俯瞰する助けになってくれる。また、会議の流れがチームの中立的な情報としてレコーディングされることで、議論を刺激するとともにチームの記憶が共有化されて「コミュニケーションが活性化される」。さらに、頭の中のぼんやりしたアイデアをクリアな形にすることで「創造力が高まる」。


「でも、絵が苦手だから」という読者もいるだろう。しかし、レコーディングに必要なのは、画力ではなく「○、△、□の3つの図形であらゆるものを表現する」というテクニック。むしろ、ぼんやりした抽象的なアイデアに、いかに形を与えるかという発想と思考が要求されるものであって、これは、どちらかといえばビジネスで言うところの企画力や提案力などのスキルに通じるものだ。


そしてもうひとつ、グラフィックレコーディングには、常に「議論の全体を俯瞰する」ような視点が必要となる。この視点は、多数の発言をして常に議論の渦中に在るような論者には持ちづらい。反面、なかなか発言の機会がない若手や、議論の場でアドリブ的に人にアイデアを伝えることが苦手だと悩んでいる人こそ、実は、グラフィックレコーディングの適任者になれる可能性を秘めているのだ。


特に、オンラインでの会議は議論が宙に浮きがちであることは、読者の皆さんもご経験の通りだろう。そんな時、グラフィックレコーディングは、議論の足りない部分を洗い出し、中立的な視点を提示して、会議の効率と創造性を高めてくれる。また、レコーディング結果をチームのメンバーにシェアして、議論を振り返ることで新たな気付きも多く生まれる。自己の学びを深め、チームにも貢献できる方法のひとつとして、ぜひ積極的に活用したい。


実践ワーク

実践ワーク

本書のワーク「1分で誰かわかるレベルの似顔絵を描く」に挑戦してみた。ポイントは「顔の輪郭」と「髪型」、そして顔のパーツは「形よりも配置」に気を配ることだそうだ。



「伝わる」テキストコミュニケーション

『できる大人の伝え方「 短く早い」が一番伝わる』

臼井由妃/著(青春出版社・青春新書プレイブックス/2020/12/12)
『できる大人の伝え方「 短く早い」が一番伝わる』

オンラインミーティングやチャット、メールのやり取りなど、テキストだけのコミュニケーションでは言葉の真意が伝わりづらく、誤解を受けたり、勘違いされたりすることもある。オンラインでも「感じがいい」「また会いたい」と思われる人は、一体どのようにコミュニケーションを取っているのだろう?

本書は、メール、SNS、ビジネス文書、手紙など、文面だけのコミュニケーションで使えるちょっとしたコツやテクニックを、実例を交えて紹介してくれる実践書だ。

ちょっと会って立ち話ができたら、それで済むことなのに……。
この一年間で、そう感じるシチュエーションが何度あっただろう?本書で例示されている状況のひとつに「謝罪」の場面がある。筆者は、文面での謝罪に「原因分析と対応策を添えること」、そして「形式的な丁寧語や敬語は、敢えて使わない」という方法を紹介している。


私たちが一番に思い浮かべる謝罪の定型文といえば、たとえばこうだ。「この度はご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。今後は、再発防止に誠心誠意努めてまいります。重ねて陳謝申し上げます」。


相手と対面して謝る機会が得られるならば、なにより表情や声の調子、お辞儀などの挙動などからも反省の意は伝わるだろう。ところが、この文面だけでは「形ばかりの謝罪」だと受け取られかねないのではないか。


「この度は、ひとえに私の確認不足から起きたミスでご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。今後はチーム内でもご指示内容を共有し、見落としのないように一層気を付けてまいります。本当に申し訳ありませんでした」。


これならどうだろうか? 責任の所在を明らかにし、具体的な再発防止策も記載されている。重々しい敬語と格式感のある定型文が必ずしも正解にはならず、身の丈に合った自分の言葉で素直に謝意を書き記すことで、相手により深く誠意を伝えられることもある。


社会人生活が長くなればなるほど、ビジネス定型文の類は身に沁みついてなかなか抜けないものだ。だが、今まで使ってきたそれらは、本当に「私」の心を伝える言葉だっただろうか? 今こそ「定型文」の効果を疑って、より伝わる言葉と表現を探してみよう。


コロナの不安から、自分と家族と仕事を守る

『【図解】新型コロナウイルス メンタルヘルス対策』

亀田高志/著(エクスナレッジ/2020/7/10)
『【図解】新型コロナウイルス メンタルヘルス対策』

慣れない生活様式やテレワークにイライラしたら? 職場でのスタッフのメンタルケアはどうすべき? 心身の不調から立ち直る方法は? 家庭での不和を乗り越える思考とは?

労働衛生コンサルタントとして活躍する人気の医師が、コロナ禍におけるさまざまな悩みにQ&A方式で答えてくれる。仕事と職場の話題だけに留まらず、家庭、子育て、健康やお金の問題など多岐にわたる困難な状況をサポートしてくれる一冊でもある。“コロナうつ”で心が折れないための備えとして、ぜひ手元に置いておきたい。

2020年は、誰にとっても大なり小なり疲労の蓄積や心身の不調を抱えながら、コロナ禍の波を何とか乗り越えた一年だっただろう。ところで、思い返してみてほしい。その「問題」のいくつかは、実はコロナ禍以前から、あなたの身の回りにトラブルの種として潜んでいたものではないだろうか。そうだとすれば、今、問題への対処の仕方を知っておくことは、もっと先の未来のための重要な備えになるのではないか。


その意味において、特に注目してほしいのは本書の第4章だ。ダメージから立ち直るための力「レジリエンス」についてのQ&Aである。レジリエンスとは、一般的には「状況にうまく適応する力」のこと。筆者はこの能力を「心理的なダメージからしなやかに立ち直ること」と表現している。


結局のところ、人間は、起きてしまう出来事をコントロールできない。だからこそ、「落ち込まない」ことを目指すのではなく「落ち込みから立ち直る」ための対処を知っておくべきなのである。


個人のレベルでは、たとえば身近な人との交流の機会を持つこと、没頭できる物事を見つけること、過度に感情的にならないこと。組織としては、メンバーに具体的なロードマップを示すこと、根気強く研修でレジリエンスの高い人材を育てること、日頃から災害や不況などの危機に備えること。本書では、こうしたレジリエンスを高める方策の数々が、具体的な記述によってわかりやすく紹介されている。


何が起きるかを選ぶことはできないが、起きてしまった出来事をどのように捉え、どのように行動するかは、私たちが自身で選択できることだ。「こんな時、自分ならどうする?」。その答えを、ぜひ平時から自分の内側に蓄えておこう。

(文:石田祥子)




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