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株式会社ヨシダウェルディング


長崎から全国へ。YouTubeでも活躍中の溶接プロ集団ができるまで。
ー 株式会社ヨシダウェルディング

九州の西端に位置する長崎県は、古くより日本と大陸の架け橋でした。江戸時代には出島を通じ、日本で唯一ヨーロッパに開かれていた貿易の窓口として、異国文化を受け入れながら繁栄してきた歴史を持ちます。また、モノづくりに関しても、三菱長崎造船所において、大正7年に日本で初となる全溶接船「諏訪丸」を建造するなど、いわば、日本の溶接技術発祥の地とも言えます。

今回、長崎県西彼杵郡時津町に工場を持ち、現在では、YouTubeチャンネルで3.5万人(2022年9月現在)の登録者数を誇る「WeldingTV【溶接工社長】」も運営する、株式会社ヨシダウェルディングの吉田社長にお話をお伺いしました。

工場外観

吉田社長とZERODEポスター
工場風景

SNSを通じて求人に応募した長野さん
練習風景
溶接風景

本日はお忙しい中お時間を頂戴し、誠にありがとうございます。また、日頃より神戸製鋼の溶接材料をご愛顧いただき、厚く御礼申し上げます。早速ですが、貴社の概要について教えてください。

当社は2016年の創業で、配管・ボイラー溶接を主体としながらも、私の経験を活かして特定分野に限らず、溶接に関わる仕事全般を行っています。長崎県内に工場を持っており、工場内で配管を製作し、現地の取り付けまで一貫して請け負うことが可能です。最近は、半導体不足を背景に九州で建設・拡張が増えている半導体工場向けの配管製作が増えています。元々は九州近郊での案件が多かったのですが、YouTubeを通じて全国各地でお仕事をいただけるケースも増えています。

また、従業員は30名でそのうち職人は25名ですが、至近では社内改革の一環で職人の管理者への配置転換を進めています。私一人だと管理面で限界があり、管理できる人間が増えると人や仕事も増やしていけるためです。転換の際には職人としての技術を確立した人間を選定して管理者に転換しています。また、当社の特徴として、評価においては年功序列ではなく実力主義を導入しています。直近は、社員の3分の1は、SNSを通じた応募で入社しており、平均年齢は20歳後半と若く、技量やモチベーションが高い人材が増えています。

事業概要として、吉田社長の経験を活かしているとのことですが、吉田社長のご経歴について教えてください。

最初は、10代の頃、長崎県内の造船所で働いていました。船内の重油が冷え固まらないように蒸気で温めるためのシステムに関わる部署で、配管や電装品を被覆アーク溶接にて溶接をしていました。その後、バーテンダーやピザ屋のアルバイトなど、他の仕事を転々とする中で、知人から半自動溶接をしてみないかという誘いがあり、長崎県内で船体ブロックの溶接の仕事に携わりました。その職場では同時期に私を含む10名が入社しましたが、他の方はほとんど溶接が未経験だった中で、私は被覆アーク溶接を経験していたので、半自動溶接でも経験者のように扱われ、そこで半自動溶接の経験を積むことができました。その後は、船体ブロックの仕事に誘っていただいた知人についていく形で、山口県にて船舶用ハッチカバーの製作も経験しました。

溶接の仕事がひと段落した後、一時、株やFXの専業トレーダーを志しましたが、中々上手くいかず、いよいよ生活が厳しくなった時に、溶接が楽しかったことを思い出し、長崎県内での客船工事に半自動溶接の一人親方として参画しました。同時期に、被覆アーク溶接・半自動溶接に加えて、TIG溶接を学ぶ必要があると感じ、TIG溶接を練習できる環境があったことも幸いして、YouTubeなどでTIG溶接を学びました。最終的には客船工事の現場内でTIG溶接の技術が認められ、私を親方として10人弱のメンバーが集まってくれました。その後、ヨシダウェルディングの創設に至るのですが、このうちの数名は会社創設時のメンバーとなっています。

今や3.5万人(2022年9月現在)の登録者を持つYouTubeチャンネル「WeldingTV【溶接工社長】」ですが、どういった経緯で始められたのでしょうか。また、反響はいかがでしょうか。

きっかけとしては、会社を創業して職人が増えていく中で、毎回同じことを同じように教えないといけないことの大変さを感じ、また、教えることにかなりの時間を割かれていたので、マニュアルとして活用するために2019年にYouTubeを始めました。今では多くの方に動画を視聴いただき、チャンネルへの登録をいただいておりますが、特定の動画で一気に伸びたというよりも、複数の動画を投稿していく中で、着実に視聴回数が増えていったように感じています。当時は溶融池をはっきりと映した溶接動画そのものが少なかったこともありますが、溶接を勉強したいという方に視聴いただいていると思います。

反響としては、動画内で溶接の技量を細かくお見せしているので、お客様から発注いただく際のハードルはかなり下がったように感じています。当社の技術力を一定程度知っていただいている上でお話をいただくので、契約も早く進みます。その結果として、冒頭で申し上げたように九州に限らず全国各地でお仕事をいただいております。また、各種SNSを通じて当社への入社希望者も増えました。

工場風景

YouTubeにて「【アーク溶接】[F]Z-44(ゼロード)で立向き溶接をやってみました」をはじめ、当社の溶接材料をご使用いただき、ありがとうございます。[F]Z-44をはじめ、当社溶接材料に関する感想はどうでしょうか。

溶接材料のスタンダートは神戸製鋼所さんだと思っています。動画内でも神戸製鋼所さんの銘柄を扱えば、視聴者の方もイメージがしやすいことから使わせてもらっています。溶接棒に関しては[F]Z-44、[F]B-XX(注:B-10,B-14,B-17など)と[F]LB-XX(注:LB-26,LB-47など)の3種が代表格と思っており、動画や社内で教育する際にも、これら3種の違いを説明することで、おおむね溶接棒の違いについては理解できると考えています。

また、個人的には[F]Z-44は好みの溶接棒で、スラグ自体も少ないのに加え、スラグの巻き込みも少なく、溶接しやすいと感じています。

ありがとうございます。吉田社長や㈱ヨシダウェルディングとして今後の目標について教えてください。

事業規模を拡大していくことを目標としています。創業当時から漠然とした年商の目標を掲げていましたが、その目標が現実味を帯びてきています。YouTubeなどを通じて広がった人脈で、外部から役員も入ってきていただくなど、事業拡大に向けた環境が整ってきています。そのためにも、冒頭に申し上げた管理者の育成など、社内の組織改革を進めていきます。

また、SNSを通して培った人脈を活用し、年齢・業種を問わない溶接の全国大会開催を将来的に企画したいと思っていますので、神戸製鋼所さんにもぜひご協賛をお願いできればと思います。その他、動画でも何かコラボレーションできれば面白いと思っています。

本日はご多忙の中、取材にご協力いただきありがとうございました。取材の中で、工場内にいらした職人の皆さんが高いモチベーションで楽しそうに仕事されている様子を拝見し、実力主義の中でも、お互いに前向きに切磋琢磨されている雰囲気を感じ取ることができました。また、YouTubeなどを通じた活動に関しても、共に溶接業界を盛り上げていけるよう、当社で力になれることがあればご協力させていただきます。末筆になりますが、㈱ヨシダウェルディングの皆様の今後益々のご活躍をお祈り申し上げます。


レポーター:小林 亮太
(株)神戸製鋼所 溶接事業部門 マーケティングセンター
国内営業部 西日本営業室 九州営業所


※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
FAMILIARC™→ [F]

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