一般的に国内の建築鉄骨の鋼材使用量のうち、約4割が柱部材と考えられ、この柱の溶接工程の生産性を向上するロボット溶接は広く普及してきました。一方で、残りの約6割を占める梁の溶接工程は、スチフナの回し溶接の自動化難易度が高いなどの課題があり、柱と比較して自動化が進んでいません。
今回は自動化による溶接品質の安定化と、将来の技能者不足に対応するため、梁溶接に特化した、当社の溶接ロボットシステムを紹介します。
鉄骨天吊梁溶接ロボットシステムは、ロボットを天吊り姿勢で搭載する移動装置と、梁H形鋼を簡単にクランプ操作でき、溶接箇所を最適な溶接姿勢に位置決めする専用ポジショナとを組み合わせた構成としています。
梁溶接に最適なフラックス入りワイヤMX-Z200MPとの組合せによって、溶接後のスパッタ付着を抑えつつ良好な外観に仕上げることができます。
梁専用のポジショナによって自動でワークの反転を行うため、溶接途中のクレーン操作が不要で安全に作業可能である他、手待ち時間のロス解消や、クランプ傷を最小限に抑えるメリットもあります。また搭載容量を拡大し、従来3トンが上限だったところ、5トンまで搭載可能となりました。ポジショナの搭載可能サイズを超えた大型の梁は床置きにすることで適用可能にすることができます。
2ポジショナ仕様も対応可能で、片方のステージで溶接している間、もう一方のステージでワークの着脱作業ができ、ロボットの待機時間の無駄を削減することができます。
天吊り姿勢に配置したロボットと梁専用のポジショナとの組合せにより、梁ワークの主要な溶接線に適用可能で、スチフナではフランジ端回し溶接、およびスカラップ回し溶接にも対応しています。
また、ポジショナを退避させたスペースに架台を設置することで、梁の溶接だけでなく仕口や内ダイアフラムの溶接にも兼用することができます。ソフトウェアを追加することで、スチフナについては板厚19, 22, 25mmの60度両側開先付のスチフナの適用が可能となりました。
鉄骨柱大組立溶接ロボットシステムでも梁溶接ソフトを追加することで、梁ウェブ面のスチフナ、補強プレート(角形・丸形)の溶接が可能となり、柱ワークの溶接が空いた期間にも溶接システムが活用でき、稼働率向上に貢献することができます。
ポジショナ搭載後の自動原点計測機能など、ワーク搭載からPCでの寸法入力、運転中の操作まで、主な使用方法はコラム柱など柱のワークと共通の使い勝手で施工ができ、フラックス入りワイヤMX-Z200MPによるスチフナについては前述の開先付き溶接にも対応しました。
本稿では、梁溶接に対応可能な溶接ロボットシステムおよびソフトウェアについてご紹介しました。私たちは、「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」であり続けるべく、今後も溶接ロボット・装置・溶接材料・溶接電源・施工法など溶接に関わるすべての「もの・こと」について溶接ソリューション開発に取り組んでまいります。