営業部ニュース

溶接ご法度集-29 各種母材におけるご法度(2)
鋳鉄編 その1


今回より鋳鉄の溶接のご法度を取り上げます。

鋳鉄とは、鉄に2.14 ~ 6.67%の炭素(C)を含有した合金です。炭素を2%以上含有させることで、湯流れ性が良く鋳型の細部にまでなじむという性質が得られます。しかし、炭素を多く含有させたことで、溶接施工時に割れや気孔欠陥などの溶接欠陥が発生しやすく、一般の圧延鋼材と比較して溶接のむずかしい母材です。

鋳鉄は鋳物に用いられており、鋳物の溶接=鋳鉄の溶接というイメージが強いと思います。当社CSグループにも「鋳物を溶接するが [P] CI-A1で大丈夫ですか?」というお問い合わせを数多くいただきますが、鋳物には数多くの種類があり、その種類によっては溶材選定や施工方法などが大きく異なります。溶接の前に、鋳物の種類の確認をよろしくお願いいたします。

*ぼうだより技術がいど Vol.511 溶接レスキュー隊119番で鋳物の種類とそれぞれの特徴、鋳鉄と鋳鋼の見分け方などを解説しています。
https://www.boudayori-gijutsugaido.com/magazine/vol511/rescue.html

※本文中の溶接110番・119番および用語解説バックナンバーは、以下URLよりお入りください。
ぼうだより 技術がいどライブラリー https://www.boudayori-gijutsugaido.com/library/


ご法度(130)
狭い開先のまま溶接するのはご法度!

鋳鉄の溶接は非常にむずかしい溶接です。基本的に溶込みも浅く、母材との「なじみ」もあまりよくありません。

そのため、開先角度を大きめにとる、補修溶接の際には溝の底部に丸みをつけるなどの配慮が必要です。また、開先加工時は必ずグラインダーなどの機械的な加工を施し、アークエアガウジングは避けてください。



ご法度(131)
ピーニングを怠るのはご法度!

鋳鉄の溶接は、とても割れやすいといわれています。

その原因の1つは溶接金属の収縮応力です。そこで収縮応力を軽減するために、「ピーニング」という作業を行います。ピーニングは、ビードごとに溶接終了後すぐに先の丸いハンマーなどで、ビードの波がなくなるまで軽くたたく作業です。ピーニングを行うことが、割れの防止につながります。


ピーニングの要領


ピーニング法施工の5カ条
◎1回のビード長は約50mm以内
◎ストリンガービードで溶接をする
◎溶接後、ただちに行う
◎ビード波形が無くなるまで行う
◎飛石法、対称法などと併用する


ご法度(132)
一度に長いビードを引くのはご法度!

鋳鉄の溶接は、割れを防止するために細心の注意が必要です。普通の溶接のように、一本の被覆アーク棒で100㎜や200㎜もの長いビードを引くことは割れの原因となります。

そのため、ビードの長さ約50㎜でアークを切ってピーニングを行い、またアークを出すということを繰り返して溶接を行います。このような、面倒な作業が必要なのが鋳鉄の溶接です。


運棒方法


ご法度(133)
予熱を怠るのはご法度!

これまで何度も触れたように、鋳鉄の溶接は割れやすいため、どうすれば割れを防止できるかが課題となります。

予熱も、割れを防止するための大事な作業です。予熱を行うことによって、溶接部の硬さをゆっくり下げる効果があります。

なお、予熱温度は使用する被覆アーク棒の種類により異なります。


各種鋳鉄に対する被覆アーク棒の選び方と予熱温度

鋳鉄の種類 品名 予熱温度
母材とのなじみ 母材との色調 継ぎ手効率 X線性能 溶接金属の機械加工性 熱影響部の機械加工性
ねずみ鋳鉄 [P]CI-A1 100~300
[P]CI-A2 150~350
[P]CI-A3 350~400
可鍛鋳鉄 [P]CI-A1 100~300
[P]CI-A2 150~350
[P]CI-A3 350~400
球状黒鉛鋳鉄 [P]CI-A1 100~300
[P]CI-A2 150~350
[P]CI-A3 350~400

*注) ◎ 優れている  ○ やや優れている  △ 劣っている
*心線:[P]CI-A1=純Ni線、[P]CI-A2=55%Ni線、[P]CI-A3=純鉄線

※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
→ [P]
コベルコ溶接テクノ(株) CS 推進部・営業部
https://www.kobelco-kwts.co.jp/
原田 和幸

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