知恵袋コーナー

EtherCAT(イーサキャット)

1. EtherCATとは

EtherCAT(Ethernet for Control Automation Technology)は、LAN(Local Area Network)の代名詞として、家庭やオフィスなどで使われているEthernetと互換性のある産業用オープンフィールドネットワーク規格の一つで、ドイツの企業 ベッコフオートメーションが開発した技術です[1]

省配線、高速、高精度同期など数多くのメリットがあるため、自動車メーカの生産工場で採用されるなど、産業用途で広く利用されています。

広く普及しているEthernetのハードウェアの構成を維持しつつ、ソフトウェアにおいて、独自の仕組みを採用して、高速・高精度な同期通信を実現しています(図1)。

図1 EtherCATプロトコルの概要


2. EtherCATの特長

EtherCATには、高速かつ高精度な同期性能を備えた産業用Ethernetを実現する上で、以下のような技術的特長があります。


●高速通信

高速通信の実現には、接続された機器がデータを送受信する方法として、オンザフライ方式という技術が採用されています(図2)。EtherCATでは以下のような手順で、データが通過中にその中身を読みとり、書き加えることで実施されます。

図2 オンザフライ処理のイメージ図

1. 司令塔であるマスタが接続される各機器(スレーブと呼ばれる)に対して、EtherCATフレームを送信します。

2. 送信されたEtherCATフレームは接続されたすべてのスレーブを順次通過して、最下流のスレーブまで届いた後、折り返されて再びマスタに戻ります。

3. スレーブを通過する際に、送信されたEtherCATフレームに対して各スレーブがデータを読み書きすることで、データの交換を実現しています。この方式では、一つのフレームをマスタとすべてのスレーブの通信で使用します。これによりマスタと各スレーブが一対一で通信するよりも送受信するフレーム数が少なく、効率的な通信が実現できます。


●高精度同期

高精度同期の実現には、DC(ディストリビュートクロック)という技術が採用されています(図3)。

DCは、マスタがすべてのスレーブに対して、共通の基準時間を通知して実現しています。スレーブは通知された基準時間に対して、内部で持っている時間との差異を考慮して、動作するタイミングを調整することで、高度な時刻同期を可能にしています。

図3 ディストリビュートクロックのイメージ図


3. おわりに

神戸製鋼所では、溶接に関わるさまざまな装置を用いて、お客様のご要望に応えるべく、多種多様な溶接ロボットシステムをご提案・ご提供しております。その中で、EtherCATはマニピュレータ、周辺装置、溶接電源との通信に活用され、高速かつ高精度に同期させるリアルタイム制御を可能にし、溶接品質の向上に貢献しています。


〈参考文献〉

[1] EtherCAT Technology Group
https://www.ethercat.org/jp.htm

(株)神戸製鋼所 溶接事業部門
溶接システム部 
金尾 顕一朗


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