被覆アーク溶接棒は、鋼の心線に被覆剤を塗り固めたものです。裸の心線だけでは溶接が困難で、被覆剤には次のような役割があります。
また、被覆剤は、酸化物、珪酸塩、有機物、炭酸塩、弗化物等多くの粉末原料が混合されています。代表的な原料の作用を表にまとめます(◎:主な作用、○:副次作用)。
原料 | 作用 | ||||
---|---|---|---|---|---|
アーク安定 | ガス発生 | スラグ形成 | 脱酸 | 合金元素添加 | |
ルチール | ◎ | ◎ | |||
イルミナイト | ◎ | ◎ | |||
酸化マンガン | ◎ | ||||
珪石 | ◎ | ||||
珪酸カリ | ◎ | ◎ | |||
珪酸ソーダ | ○ | ◎ | |||
澱粉 | ◎ | ○ | |||
石灰石 | ○ | ◎ | ◎ | ||
蛍石 | ◎ | ||||
Fe-Mn | ◎ | ◎ | ○ | ||
Fe-Si | ◎ | ◎ | ○ |
アーク安定剤には、ルチール、イルミナイト、珪酸カリ等があり、アークが途切れないようにします。
ガス発生剤には、澱粉やセルロース等の有機物や石灰石等の炭酸塩があり、高温のアークで分解した水蒸気や炭酸ガスを放出し、大気から保護します。
スラグ形成剤として、種々の原料が寄与し、溶接作業性を確保することに加え、溶接金属のX線性能や衝撃性能と関連する塩基度の支配因子にもなります。
脱酸剤には、溶融金属中の酸素と結合して除去する作用があり、Fe-Mn,Fe-Si等があります。
合金元素添加剤として、Mn,Siのほか、Ni,Cr,Mo,V等必要な特性に応じて調整します。
これら原料の組合せによって、被覆剤の系統はイルミナイト系、ライムチタニヤ系、高酸化チタン系、低水素系等に分類され、それぞれ特徴を活かして使用いただいています。
イルミナイト系 | [F]B-10, [F]B-14, [F]B-17 |
---|---|
ライムチタニヤ系 | [F]TB-24, [F]TB-43, [F]Z-44 |
高酸化チタン系 | [F]RB-26, [F]B-33 |
低水素系 | [F]LB-26, [F]LB-47, [F]LB-52, [F]LB-52U |
[F]:FAMILIARC™ |