知恵袋コーナー

被覆剤の作用

被覆アーク溶接棒は、鋼の心線に被覆剤を塗り固めたものです。裸の心線だけでは溶接が困難で、被覆剤には次のような役割があります。

  1. ①アークの集中性と安定性を良くします。
  2. ②保護ガスを発生し、大気中から酸素や窒素の侵入を防ぐカーテンとなります。
  3. ③スラグを形成して溶接金属を覆い、ビード外観を綺麗にします。
  4. ④スラグの融点や粘性等を調節し、下向だけでなく立向や上向姿勢の溶接を容易にします。
  5. ⑤溶接金属の脱酸を行い、機械的性質を良くします。
  6. ⑥溶接金属に適当な合金元素を添加し、必要とする特別な性質を与えます。

また、被覆剤は、酸化物、珪酸塩、有機物、炭酸塩、弗化物等多くの粉末原料が混合されています。代表的な原料の作用を表にまとめます(◎:主な作用、○:副次作用)。

原料作用
アーク安定 ガス発生 スラグ形成 脱酸 合金元素添加
ルチール      
イルミナイト      
酸化マンガン        
珪石        
珪酸カリ      
珪酸ソーダ      
澱粉      
石灰石    
蛍石        
Fe-Mn    
Fe-Si    

アーク安定剤には、ルチール、イルミナイト、珪酸カリ等があり、アークが途切れないようにします。

ガス発生剤には、澱粉やセルロース等の有機物や石灰石等の炭酸塩があり、高温のアークで分解した水蒸気や炭酸ガスを放出し、大気から保護します。

スラグ形成剤として、種々の原料が寄与し、溶接作業性を確保することに加え、溶接金属のX線性能や衝撃性能と関連する塩基度の支配因子にもなります。

脱酸剤には、溶融金属中の酸素と結合して除去する作用があり、Fe-Mn,Fe-Si等があります。

合金元素添加剤として、Mn,Siのほか、Ni,Cr,Mo,V等必要な特性に応じて調整します。

これら原料の組合せによって、被覆剤の系統はイルミナイト系、ライムチタニヤ系、高酸化チタン系、低水素系等に分類され、それぞれ特徴を活かして使用いただいています。

イルミナイト系[F]B-10, [F]B-14, [F]B-17
ライムチタニヤ系[F]TB-24, [F]TB-43, [F]Z-44
高酸化チタン系[F]RB-26, [F]B-33
低水素系[F]LB-26, [F]LB-47, [F]LB-52, [F]LB-52U
[F]:FAMILIARC™
軟鋼・490MPa級鋼用被覆アーク溶接棒 当社代表銘柄
(株)神戸製鋼所 溶接事業部門 技術センター溶接開発部 濱田 悦男

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