特集

神溶会会長メッセージ
神溶会70周年に向け
新しい時代に求められる「溶接」の提案を
神溶会の皆様とともに


広崎 成一


神溶会会長
株式会社神戸製鋼所
溶接事業部門
マーケティングセンター
国内営業部長
広崎 成一

平素より、神溶会の皆様には神鋼溶接材料、ロボットシステムの販売にご尽力を賜り誠にありがとうございます。また、日頃から神溶会活動に深いご理解とご協力を賜り、改めて厚くお礼申し上げます。昨年に続き、新型コロナ感染症の影響により、皆様に直接お会いし、景況や神溶会の活動方針などのご報告や意見交換をすることがむずかしい状況であります。誌面でのご報告となりますが、全国営業概況を、「1.業種別景況観および需要予測」、「2.2021年下期 重点活動」、「3.神溶会70周年に向けて」の3テーマでご説明させていただきます。



1.業種別景況観および需要予測

まず、最初に全国の溶接材料の需要推移についてです。2020年度の溶接材料需要は新型コロナウイルスの影響で21万トン台と2018年度、2019年度に比べて大きく落ち込み、非常に厳しい年でした。2021年度は上期からさらに下期へと緩やかに回復基調にあると言えます。

図1

(1)建築鉄骨

建築鉄骨は2019年度457万トン、2020年度412万トンと500万トンに届かない年が続きました。2021年度は新型コロナウイルスの影響から回復し、底は脱したと見ております。首都圏や地方主要都市を中心とした再開発案件、物流倉庫やデータセンターなどの案件が堅調で、多いところでは来年夏頃までの工事案件を抱えていると聞いております。懸念材料は地方の中小案件の見通しや鋼材供給面ですが、総じて需要は底堅いと見ております。

図2

(2)自動車

至近、国内の完成車生産台数は約900万台ペースを維持してきましたが、2020年度は793万台とやはり新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込みました。特に上期は生産停止や一時休業などの深刻な影響により大きく生産台数が落ち込み、下期で急激に挽回した格好となりました。2021年度は当初の自動車メーカ各社見通しでは約900万台以上の水準が計画されておりましたが、半導体不足の影響と東南アジアでの新型コロナウイルス流行による部品供給不安定の影響で、各社下方修正が相次いでおり状況を注視しているところです。

図3

(3)造船

日本国内造船所の適正建造量は年間1,200万~ 1,300万総トンと言われていますが、受注量はグラフに示すとおり、ここ数年適正建造量を大きく割り込んでいました。今年は海運関係が好調であったことから、年初から受注を重ね1月~ 8月累計で1,129万総トンとなっております。建造量は昨年より落ち込むと当初見ておりましたが、1 ~ 6月ですでに約600万総トン建造していることから、年間では2020年比微減程度で落ち着くと見ています。海運、造船ともに厳しい環境が暫く続いておりましたが、2021年に入り急回復しており、厚板需給がタイトになっている状況です。

図4

2.2021年下期 重点活動
  ―商品企画を中心に―

人手不足、生産性向上という各業種共通の課題に加え、コロナ禍で業績が悪化するなか、コストダウン、投資抑制が急務となっています。

一方、従来からの各業種特有の課題に対し、環境変化とともに、ものづくりにおける溶接に求められるニーズが変わってきています。例えば、建築鉄骨では、構造物が大型化・高層化し、デザインも斬新で複雑化するなど、溶接部に求められる強度や溶接条件もシビアになっています。このような多様化、複雑化するニーズに応える取り組みを業種別にご紹介します。

また、テレワークの推奨などで働き方が変わるなか、新しい働き方に対応した、当社アプリの新たなコンテンツをご紹介します。

図5

(1)建築鉄骨―自動化のさらなる拡大と溶接材料からのアプローチ―

建築鉄骨の『人手不足・生産性向上』という課題に対し、神戸製鋼では『REGARC™鉄骨溶接ロボットシステム』で、溶接の自動化、高能率化提案を進めてきました。特に2020年から受注開始を致しました『REGARC™プロセス搭載ケーブルレス 石松』は軽量で可搬型であることから、非常に好評をいただいており、受注している石松の多くがケーブルレスタイプとなっております。一方で、昨年の概況報告でご紹介した2021年4月から販売開始予定であった『タッチパネル式コントローラ』は半導体不足の影響で販売開始を延期とせざるを得なくなりました。来年の春以降の販売開始を目指しておりますが、時期が決まりましたら、またホームページなどでご連絡させていただきます。

図6

半自動溶接での『作業者の負荷軽減』『高能率・高品質』ニーズに対し、FCW のメニューを拡充、『FAMILIARC™ MX-Z200MP』は、多層すみ肉溶接用として、非常に高評価をいただいております。この度、『New FAMILIARC™ MX-Z200MP』として改良を加えたものを開発しております。特長は梁の溶接に多い回し溶接で電流を下げてもスパッタ量を極限にまで減らせる点です。

図7

すでにいくつかのお客様でもサンプル評価をしていただき、好評をいただいておりますので、今後はお客様に対し『New FAMILIARC™ MX-Z200MP』をご紹介いただければと思っております。

New FAMILIARC™ MX-Z200MP

『New FAMILIARC™ MG-50』はワイヤ表面処理を従来から変えることで、送給性を向上させたものです。送給性が向上することで、トーチ振動が抑えられ、アークが安定、スパッタを減らせることが特長となっております。

図8

(2)自動車一共通課題への提案

各自動車メーカでは、スパッタ量低減も共通の課題で、解決策の一つ『溶接ワイヤ送給制御アーク溶接法』を搭載する溶接ロボットが増加傾向にあります。その一方で溶接チップの摩耗が課題となっており、その解決策として、ワイヤに特殊表面処理を施しチップの耐摩耗性を向上させ、アーク安定性を良くした『FAMILIARC™ MG-1T (F)』を販売しております。チップの交換頻度やアーク停止時間が減少するため、お客様でのコストダウンに貢献することが可能でお客様からも高い評価をいただいております。自動車業種を中心に、市場に浸透してきており、今後も積極的にPRしていきたいと考えております。

図9

(3)造船一自動化提案さらに拡大

これまでも工程ごとに自動化提案を進めておりますが、ニーズの高い、外業における船側外板の溶接自動化提案を致します。

新立向上進自動溶接法として、『新エレクトロスラグ溶接法 SESLA™』を開発しました。立向上進溶接法としてはこれまでエレクトロガスアーク溶接法である『SEGARC™』がありましたが、『SESLA™』は『SEGARC™』に比べて、80mmまでの極厚板までの適用が可能、ギャップ範囲が6~20mmと尤度が広くなっております。さらにアーク光がでないこと、ヒューム・スパッタ発生量も極めて少なく、シールドガス不要で耐風性も良好などいっそうの生産性向上、高品質化、作業環境の改善に貢献できる新提案です。造船のみならず、洋上風力やタンクなどの構造物にも提案できる施工法となっております。

図10

(4)KOBELCO WELDING アプリ
  一リモートなど新しい働き方に合わせた活用法

コロナ禍で働き方改革も求められる中、新しい営業ツールとして、2019年に開設した『KOBELCO WELDING アプリ』を活用した取り組みを紹介します。

本アプリは、一般ユーザも含め約 7,000 名近くの方にダウンロードいただき、スマートフォンで見る動画、カタログとしてもご好評をいただいています。

図11

新たなコンテンツとしては、『石松オーナー's ページ』として、石松をご購入いただいた方に対して、部品の交換方法やトラブル対応方法など石松関連のコンテンツが確認できるページを準備中です。

図12

YouTubeコーナーでは『銘柄のおはなし』シリーズとして被覆アーク溶接棒、ソリッドワイヤ、フラックス入りワイヤの3つに分け、それぞれの歴史や銘柄の由来を紹介する動画を公開しております。溶接や当社の材料を使い始めて間もない方や長らく当社材をご愛用いただいている方にも懐かしく、楽しんでいただける内容としておりますので、ぜひご覧いただければと思います。

図13

3.神溶会70周年に向けて

最後に、神溶会 70 周年に向けた活動についてです。

神溶会は1952年9月に旗揚げ致しました。2022年9月に70周年を迎えることになりますが、これまでも周年の節目では拡販キャンペーンを行って参りました。キャンペーンを通じて数多くのお客様に足を運び、格差商品の提案、その時代に求められる正しい溶接を広める活動、そして何より人づくりに大きく貢献してきたと言えます。70周年もコロナウイルスの感染状況を見ながらではありますが、2022年上期からのキャンペーンを企画・準備を進めております。そして、70周年記念式典については、2022年5月16日に神戸での開催を予定しております。

世の中が大きく変化している今、変化の激しいニーズにどう対応していくか、高齢化による労働者不足や技能継承問題、働き方改革の進展などを背景とした省人化、自動化、生産性向上など我々に求められるものは益々高くなっております。我々は我々の持つ溶接材料、プロセス、電源、ロボットを総動員し、新たなニーズに対応するべく、さらに新商品の開発を進めて参ります。神溶会の皆様とともに当社の溶接ソリューション提案を市場に浸透させていく活動、そしてそれに携わる人材の育成にこれからも注力して参ります。


今後とも、神溶会の発展に向け、ご指導・ご鞭撻を賜りたく、よろしくお願い申し上げます。

図14
図15

「2022年 神溶会賀詞交歓会」開催中止のお知らせ

拝啓 貴社益々御清栄のこととお慶び申し上げます。

平素は神鋼溶接材料、ならびに溶接ロボットシステムの販売に格別なご高配を賜り、心より感謝申し上げます。


さて、「2022年神溶会賀詞交歓会」でございますが、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、会員各社皆様方の健康と安全の確保を最優先に考え、開催は中止させていただくことと致しましたので、ここにお知らせ申し上げます。


現在国内におけるコロナ感染は沈静化の傾向にはありますが、神溶会賀詞交歓会の本旨である、より多くの会員が集い、共に新春を祝い相互の交流を安全に図るには22年年始は時期尚早との判断に至りました。

すでにご予定いただいております会員各社様には大変ご迷惑をお掛けすることを深くお詫び申し上げます。何卒事情ご賢察の程、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。


今後とも、神溶会の発展に向けご指導ご鞭撻を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。

敬具 

2021年11月吉日

神溶会会長
(株)神戸製鋼所 溶接事業部門
マーケティングセンター 
国内営業部長 広崎 成一




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