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新人営業マンのための溶接基礎講座

第2回 『かち上げ・盛り上げ』

『かち上げ・盛り上げ』について

第1回では「ながし」ともよばれる立向下進溶接の解説をしました。第2回では「ながし」よりポピュラーな「かち上げ」について解説するとともに、それに関連する当社の溶接材料の特長をご説明いたします。

「かち上げ」とは「上向溶接のこと、天井付けとも呼ばれる。」と、昭和38(1963)年発刊の『神戸製鋼所溶接用語集』にも記載されていましたが、溶接現場では一般的に、立向上進溶接(たてむきじょうしんようせつ)を指します。立向上進溶接では、普通に下から上へ溶接していくと溶融金属が下方向に垂れ下がりますが、それを回避するためにトーチを左右に振り、ウィービング(溶接棒を溶接方向に対し波形に動かしながら溶接する)とウィッピング(溶融金属の垂れ下がり防止のため、アークを切れない程度に跳ね上げる運棒のこと。被覆アーク溶接でのみ可能なテクニック)を使い分け、上に向かって比較的低めの電流値で溶接していきます。ウィッピングを多用する溶接ということで上向溶接のことを「かち上げ」と呼び、その後「上げ」のイメージから立向上進溶接に転用されたものと思われます。立向上進溶接は、ビード幅が狭く、溶込みが深く、余盛が高く凸になりやすい傾向があります。

「かち上げ・盛り上げ」が可能な溶接材料

① 被覆アーク溶接棒

基本的には、イルミナイト系、ライムチタニヤ系、低水素系など
ほとんどの被覆系統の溶接棒にて、立向上進溶接が可能です。

B-14

JIS Z 3211 E4319 U/AWS A5.1 E6019 相当


軟鋼~550MPa級鋼用被覆アーク溶接棒

用途 : 造船、車両、建築などの構造物の溶接
棒端色/薄茶色


イルミナイトという鉱物が主原料として使われているイルミナイト系溶接棒
スラグがよくかぶり、ビードの伸びが良好で、外観もきれいです。作業性と溶接性の両方に優れています。

棒径
(mm)
棒長
(mm)
電流範囲(A)
下向 立向上向
2.6 350 55~90 45~75
3.2 400 85~140 60~120
4.0 450 130~190 100~160
4.5 450 155~220 120~180
5.0 450 180~260 135~210
6.0 450 240~310 -
7.0 550 300~370 -

ZERODE-44

JIS Z 3211 E4303/AWS A5.1 E6013 相当


軟鋼~550MPa級鋼用被覆アーク溶接棒

用途 : 造船、建築、橋梁などの溶接
棒端色/銀灰色 二次着色/青白色


石灰石(英語でライム・ストーン)とルチール(主成分は酸化チタニウム)を主原料としたフラックスを塗装してある、ライムチタニヤ系溶接棒。再アーク性が良く、スラグはく離も良好。ZERODEは煙の少ない、低ヒュームな溶接棒です。

棒径
(mm)
棒長
(mm)
電流範囲(A)
下向 立向上向
2.0 300 30~60 25~55
2.6 350 60~100 50~90
3.2 350 100~140 90~130
4.0 450 140~190 120~170
5.0 450 190~250 140~210
6.0 450 250~330 -

LB-52

JIS Z 3211 E4916 U/AWS A5.1 E7016 相当


軟鋼~550MPa級鋼用被覆アーク溶接棒

用途 : 造船、橋梁、建築、圧力容器などの溶接
棒端色/青白色 二次着色/白色


溶接金属の中に含まれる水素量が低くなるように設計された低水素系溶接棒。被覆剤の主原料は石灰石です。X 線性能、機械的性質に優れ、アークの集中性、スラグはく離性など、作業性も良好です。

棒径
(mm)
棒長
(mm)
電流範囲(A)
下向 立向上向
2.6 350 55~85 50~80
3.2 350/450 90~130 80~120
4.0 400/450 130~180 110~170
5.0 450 180~240 150~200
6.0 450 250~310 -

(立向上進) LB-52

B-14のB、LB-52のLの由来、ZERODEの意味は【銘柄のおはなし】被覆アーク溶接棒をご覧ください。

② フラックス入りワイヤ

建築鉄骨や造船などの大型構造物は、反転して溶接作業を行うことが難しく、
立向、上向姿勢での溶接が不可欠となります。
また、被覆アーク溶接棒やソリッドワイヤと比較すると、
フラックス入りワイヤはより高能率で作業ができ、特に立向上進溶接での能率に優れています。

DW-100V

JIS Z 3313 T 49J 0 T1-1 C A-U/ AWS A5.20 E71T-1C


軟鋼~550MPa級鋼用フラックス入りワイヤ

用途 : 造船、橋梁など各種構造物の突合せおよびすみ肉溶接


特に立向上進溶接において高電流での施工が可能なフラックス入りワイヤです。優れたビード外観と形状が得られ半自動溶接やロボットとの組合せなどで、立向溶接の高能率化が図れます。

ワイヤ径 mm 1.2 1.4
電流
範囲
A
下向および水平すみ肉 120~330 160~350
立向上進、上向 120~300 150~300
横向 120~280 220~320
立向下進 200~300 220~300

(立向上進) DW-100V

DW-100VのVVertical=立向の頭文字です。
立向溶接用の意味でVを銘柄名につけていますが、品種によっては上進が得意か下進が得意か異なりますので、注意してください。



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