技術レポート (Vol.65 2024-2)

2024国際ウエルディングショー出展のみどころ


(株)神戸製鋼所 溶接事業部門 技術センター

1. はじめに

4月24日(水)~ 27日(土)の4日間、2024国際ウエルディングショーがインテックス大阪にて開催されます。神戸製鋼は「世界で最も信頼される溶接ソリューション企業」であり続けるという理念のもと、当社の特徴を活かした課題解決への取組みを発信いたします。


2. 展示のみどころ

『最新技術の発信』と『上質なおもてなし空間の提供』をブースコンセプトに、コロナ禍で実感した直接対話の重要性や、人と人とのつながりを大切に、溶接に関してさまざまな会話ができる場所をご用意します。また、グループ会社のコベルコ溶接テクノも同ブースにて出展し、主催社テーマでもある人・技術の伝承の課題解決に貢献できる「ナップ溶接トレーニング」の溶接VRと、溶接・接合にかかわる試験・調査解析内容などを展示いたします。

当社は、溶接材料をはじめとする溶接ロボットシステム、溶接施工、溶接機と幅広く溶接に関わる製品をラインナップしており、新たな施工技術や溶接ロボットシステムの自動化率向上など、さらに付加価値を高めた溶接ソリューションを展開しています。

会場では実演展示として、3D-CADと溶接ロボットの連係による自動プログラミングと、新ワイヤ送給制御プロセスを披露します。


3. 溶接システム実演コーナー

梁のロボット溶接での3D-CAD連係自動プログラミングと、溶接ソリューションの基軸となる「」の実演を行います。

3.1. 梁CAD連係ソフトウェア『SMART TEACHING™』

鉄骨溶接システムでは、梁の溶接の自動化を対象とした梁CAD連係ソフトウェア『SMART TEACHING™』を紹介します(図1)。

近年、技能労働者の高齢化や労働力不足が課題となっており、生産性向上が求められています。そのため建築分野では、これらの課題解決のためにBIM(Building Information Modeling)が推進されており、当社鉄骨溶接システムにおいても、3D-CADデータを活用する梁CAD連係ソフトウェアを開発しました。

図1 3D-CAD連係自動プログラミング画面イメージ


3.1.1. 3D-CAD連係ソフトウェア特長

梁CAD連係ソフトウェアは、構造詳細設計向けBIMソフトウェアTekla Structures®から出力した3D-CADデータ(IFC形式)を読み込むことで、梁や部材の形状・位置の寸法を自動で設定することができます。またIFC形式には形状・位置だけでなく、溶接指示に関する情報も設定でき、上位の設計情報としてこれらが設定されている場合、脚長などの溶接指示の情報も手入力をすることなく設定できます。

従来は、2D図面や実ワークを計測し、手入力で梁の寸法入力を実施していました。3D-CADデータと梁CAD連係ソフトウェアを使用することで、入力時間の削減や入力作業の簡単化を実現し、誤入力の防止にも繋がります。

また、3D-CADによる入力以外にもワーク情報を直接編集する機能を搭載しており、3D-CADデータがない梁に対しても使用することができます(図2)。この編集画面は初めて使う方でも分かりやすい画面設計としており、入力時間も従来画面に対して約1/3短縮することが期待できます。

図2 寸法入力画面


3.1.2. 梁CAD連係搭載 鉄骨溶接システムの仕様

梁CAD連係ソフトウェアによる自動プログラミングを適用するシステムは天吊型の鉄骨溶接システムです(図3)。溶接ロボットA60、溶接機[S]RA500、天吊2軸移動装置、1軸ポジショナの構成で、搭載ワイヤは[F]MX-Z200MPです。適用継手は表1に示します。対応システムと適用部材は今後さらに拡張し、適用範囲拡大を進めています。

図3 鉄骨溶接システム(天吊型)


表1 適用継手

適用箇所
■梁ウェブ  × スチフナ/ガセットプレート
■梁フランジ × スチフナ/ガセットプレート
■梁ウェブ  × 貫通孔補強リング部材


3.1.3. 実演内容

梁CAD連係ソフトウェアによる自動プログラミングから、梁のスチフナを模擬したロボット溶接までの一連動作を紹介します。DX技術を取り込むことでさらに進化した鉄骨溶接システムをご堪能ください。


3.2. 溶接ロボットシステム

炭酸ガスアーク溶接にて極低スパッタを実現する新ワイヤ送給制御プロセスが、溶接ロボットシステムとして本年秋より発売されます。JIWS2024では、この溶接システムによるアーク溶接の実演を行います。高能率かつスパッタの非常に少ないアーク溶接を実感いただきます。

とは、ワイヤの正送・逆送動作によって溶滴移行に慣性を活用した制御を行う溶接プロセスです(図4)。小電流から大電流まで、幅広い条件において規則的なドロップ移行を実現します。の特長は、高能率、低スパッタ、低ヒューム、深溶込みであり、皆さまのものづくりにお役に立てる溶接プロセスと言えます。一例として、溶接電流とワイヤ溶融速度との関係(図5)と、下向すみ肉溶接の溶接比較(図6)を示します。一般的な炭酸ガス溶接に比べてワイヤ溶融速度が大きくなるため、溶接能率をアップさせることが可能です。

図4 の原理


図5の電流とワイヤ溶融速度


図6 下向すみ肉溶接における能率向上効果の一例


溶接ロボットシステムは、モードを実装したハイエンド溶接機[S]RA500、溶接ロボット A60、プル送給装置付きトーチやワイヤバッファなど、新開発のワイヤ送給コンポーネントとから構成されます(図7)。ワイヤ正逆送給と電流電圧出力の高精度な制御によりを実現します。

図7 装置構成


また、溶接ワイヤは用ソリッドワイヤ[A]AX-1C(1.2mmΦ)を使用します。ロボット溶接に不可欠なワイヤ送給性とに最適な品質設計がなされています。

4. 新ワイヤ送給制御プロセス用ソリッドワイヤ AX-1C

続いて溶接ロボットシステムの実演で使用する溶接材料[A]AX-1Cのご紹介です。

中大電流領域の長時間連続溶接性、溶接作業性、高溶着性、継手機械的性質が優れる中厚板向けソリッドワイヤ[A]AX-1Cを開発しました。従来の正逆ワイヤ送給制御溶接施工はコンタクトチップに負担が高く、長時間連続溶接性確保の課題がありましたが、新開発した[A]AX-1Cはワイヤ表面に特殊な処理を施し、の特殊電流波形と組合せることによって、長時間連続溶接性を飛躍的に向上させました。また、プロセスを用いて高溶着・高速溶接でも良好なビード外観が得られるように、ワイヤ成分も最適化しました。

下向すみ肉溶接結果一例を図8に示します。新開発ワイヤを用いることによって、従来ワイヤと比較してフラットなビード外観が得られ、310A、40cm/minでも脚長9mm程度の溶接が可能です。継手溶接一例として、板厚20mm、ルートギャップ5mm、50° V形開先突合せの溶接結果を示します。溶接条件を表2、断面マクロを図9に示します。従来プロセスは5層5パスが必要ですが、プロセスが高溶着施工できるため、4層4パスで仕上げられ、さらに、アークタイムも20%程度短縮できます。

図8 下向すみ肉溶接結果の一例
表2 継手溶接の溶接条件(板厚20mm、ルートギャップ5mm、50°V形開先突合せ)
図9 継手溶接の断面マクロの一例



5. KOBELCO溶接(体験型)メタバースKWVX「Kobelco Welding Virtual Experience」

メタバースとは、多人数が参加可能で、参加者がその中で自由に行動できる、通信ネットワーク上に作成された仮想空間のこと。

溶接は私たちの生活に欠かせない技術ですが、日常生活の中でふれる機会は多くありません。

KWVXでは溶接現場の社会科見学や簡易溶接体験、さらには溶接の基礎を学べるプログラム、そして、ミニゲームも楽しめます。溶接の魅力、新たな発見、バーチャルで体感してみてください!!

「Kobelco Welding Virtual Experience」でできること


・ 溶接現場の社会科見学体験ができる。
・ 簡易溶接体験ができる。
・ 溶接を学ぶことができる。
・ ミニゲーム(宝探し)体験ができる。

Tekla®およびTekla Structures®は、Trimble Solutions Corporationの登録商標です。

※文中の商標を下記のように短縮表記しております。
SENSARC™→ [S] FAMILIARC™→ [F] AXELARC™→ [A]



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