知恵袋コーナー

溶接ヒューム

アーク溶接技術は、金属と金属を接合する手段として発展してきました。このアーク溶接は、アークの温度が5,000 ~ 20,000℃に達するため、溶かされた金属の一部が蒸気となります。この蒸気が空気により冷却、酸化されて大きさ0.1μm程度の金属酸化物の微粒子(一次粒子)となり、その後に凝集して1μm前後(二次粒子)になります。これが「溶接ヒューム」です。

写真1 溶接ヒュームの粒子形態


「溶接ヒューム」は、作業者の呼吸器系を中心にさまざまな健康影響を及ぼす可能性があるため、粉じん障害防止規則(粉じん則)やじん肺法により規制され、適切な保護具着用や局所排気装置の設置などにより対策を行ってきました。

また、国際がん研究機関(IARC)が2017年にグループ1(ヒトに対して発がん性がある)へ指定し、2020年には特定化学物質障害予防規則(特化則)が改正され、特定化学物質(管理第2類物質)としてあらたに位置づけられたため、安全衛生上の対策がより一層求められることになりました。

なお、特化則では、金属アーク溶接等作業(下記)で発生する溶接ヒュームが対象となります。

・ 金属をアーク溶接する作業

・ アークを用いて金属を溶断し、またはガウジングする作業

・ その他の溶接ヒュームを製造し、または取り扱う作業

※燃焼ガス、レーザービーム等を熱源とする溶接、溶断、ガウジングは含まれません

これらの作業を屋内で継続して行う場合、以下のような内容が義務付けられました。

1) 全体換気装置による換気等

2) 溶接ヒュームの測定、その結果に基づく呼吸用保護具の使用及びフィットテストの実施等

3) 掃除等の実施

4) 特定化学物質作業主任者の選任

5) 特殊健康診断の実施等

6) その他必要な措置(安全衛生教育、不浸透性の床設置、洗浄設備の設置、喫煙・飲食の禁止など)

2)項の呼吸用保護具の選定に際しては、溶接ヒューム中に含まれる「マンガン濃度」を基準値としていますが、米国産業衛生専門家会議(ACGIH)および欧州委員会(EC)科学委員会の提案理由書や、引用文献などをふまえて決められました。

今後、溶接作業をされる方々の健康障害防止対策をとして、溶接ヒューム発生量や溶接ヒューム中のマンガン量を低減させる溶接材料や溶接施工の技術開発が、より一層求められていくと思われます。


参考文献

・厚生労働省:「令和2年4月の特定化学物質障害予防規則・作業環境測定基準等の改正( 塩基性酸化マンガンおよび溶接ヒュームに係る規制の追加)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000099121_00001.html

※「金属アーク溶接等を継続して屋内作業場で行う皆さまへ」、「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令等の施行等について」などが掲載されています

・ 日本溶接協会安全衛生・環境委員会編,金属アーク溶接等作業主任者テキスト,産報出版(2024)

・ 日本溶接協会規格 WES9009-2:2022「 溶接,熱切断及び関連作業における安全衛生 第2部:ヒューム及びガス」

(株)神戸製鋼所 溶接事業部門
技術センター 開発企画部 
津村 瑠伊菜


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